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ビーグル犬 ロン 2部

今週は雨が多い・・・。会社の冷房が復活したおかげか、先週のような蒸し暑さはあまり感じずに、多少過ごしやすい1週間ではあったが、やはり雨だとテンションが下がる⤵

それに加えて先週から引き続き書かせて頂く【ビーグル犬 ロン】の話は、私の人生の中でも、かなり重く深い思い出であり、どうしてもセンチメンタルになってしまうのですが、犬太郎と生き物を結びつけるのに絶対に外すことの出来ない核のような存在なので、当時の情景を思い出しながらその重い扉を開いていこうと思います。


ビーグル犬の仔犬はロンと名付けられ、犬太郎一家の愛情をいっぱいに受けて育つことになります。その愛情の発信の仕方が後に起こる悲劇の要因にもなるのですが・・・。

物心ついた時から生き物が好きで、特に犬との生活を最大の理想と夢見て生きて来た犬太郎としては当然舞い上がり、半ば一方的な愛情を一気にロンへぶつけていくのです。散歩だ~、しつけだ~、一緒に遊ぼ~、、、。

ロンとの生活を経験して大人になった今の犬太郎であれば、最初に家に来たばかりの仔犬への対応は理解していますが、まだ小学生の犬太郎にはその辺の理解度は皆無でした。さらに両親を含め、初めての犬との生活とのことで実際に飼う上での知識がやはり足りなかったのです。

仔犬は非常に敏感で神経質なもの。初めての環境での生活となると性格にもよるが、それだけで病気になる仔もいるらしい。まずは、1週間から10日間くらいかけてその環境に慣れさせることに専念しましょう!と、その後に本格的にいろいろな犬種の飼い方や本を読むことになるのだが、基本中の基本としてどの本にも書いてあるのだが・・・。

当時はそんなことは考えもせず、彼が家に来たその日からたくさんたくさん遊んだ!念願だった散歩も朝・夕と毎日楽しみに行った。苦手な早起きも、学校から帰って来て友達と遊べなくなるのも全然苦にならなかった。今まで一緒に過ごした(人間以外の)家族にはない部分としては、やはり教えたことを覚えてくれるというのが大きかった。ロンが覚えたのはお手だけであったが、ちゃんとその通り返してくれるのは何とも言えない喜びだった。

そして、ロン自身も楽しそうにそれに応えてくれた。しっぽを振りながら、興味津々にいつも犬太郎の後をついて来た。そんな時にロンがよく行う動作として、下記のようなエピソードがあります。

子供の犬太郎はよく走りましたが、こちらが走るとロンもそれ以上に速く走り、犬太郎を追い越した後に駆け足でバタバタ戻って来てピョンっと犬太郎の膝に前足を置いて覗き込むようにこちらの顔を見つめるのです。

そんな感じで、ロン自身も楽しんでいる。だからこそ、新しい環境へのストレスとかそういうものは、全く考えもしなかったのです。

ロンと犬太郎が一緒に過ごしたのは1カ月とちょっと。その間、学校と寝る時以外は、ほとんどロンと一緒にいました。これが大人の人間であれば、非常に良いお話に聞こえますが、やはり小学生の子供・・・。一緒に過ごすといっても遊び一つとっても大人とは違い、加減を知りません。もう全力です。

ましてや、犬と人間の成長速度は違うとはいえ、彼は犬太郎の家に来てまだ1,2週間。きっと楽しそうにしていたのは純粋に、本当に楽しんでいたのだと思う。そして、怖がりではなく、性格的に興味津々に未知のものに近づいていっては威嚇したり加えて遊んだりする仔だったので、もしかしたら彼自身もそのストレスには気づいてなかったのかもしれません。

ただ、その間にも小さい小さい彼の身体には、徐々に大きな疲労が溜まっていたのでした・・・。

そして彼が、家に来て2週間経つか経たないかといった頃に、親戚が大勢、家に遊びに来ました。犬太郎一家は当時親戚付き合いは他の家と比べても盛んな方で、念願の犬を飼ったことは事前に伝わっておりました。この日彼はいきなり非常にたくさんの大人と接することになりました。そして、犬太郎と同じ年代の、遊ぶことに限界を知らないたくさんの子供とも・・・。

もちろん、すべての人間たちに悪気は一切なく、みんなが心から可愛がってくれましたし、それぞれがそれぞれの優しさで彼に接してくれました。

この日1日の主役は間違いなくロンでした。

ただし、今仔犬の目線で振り返ってみると、緊張感や威圧感、そしてみんなが帰った後の疲労感は尋常ではなかったはず。

この日の夜から、彼の状態はこちらから見ても分かるほど、はっきりと落ちていったのです・・・。

「今日は、たくさん人が来て疲れたね~。」

1日明けて明日になれば、また元気になるだろう。この日はそんなに気にすることはなく、そのまま寝たのを覚えています。

しかし、次の日になっても疲労感は抜けず元気のない状態でした。気になって気になって、いつもの数倍の長さに感じた学校が終わり急いで家に帰ってロンに会いに行きましたが、いつもの元気なロンはそこにはなく、その後も彼の体調はどんどん悪化していきました。

家の近くにある動物病院には2回行きました。1回目はロンの状態がおかしくなってからそんなに時間が経たない時期に・・・。注射を打ってもらってその時に言われたのが、まさに『環境が変わっていきなりたくさんの人に出会ったり、触られたりすることでのストレス。特に仔犬の場合はある程度、免疫が付くまでは、そっとしておかなくてはだめ!』ということ。

そうして、1度目の病院から帰ってきたロンは少しだけ回復しましたが、もう以前のように、全力で走ることも、興味津々で部屋の中のものに近づくことも、前足を犬太郎の膝にのせて背伸びをすることもなくなりました。

1日中、顎を床にベタ~っとつけて、犬太郎が見に行くと顔をあげて、申し訳なさそうな目でじ~~~っとこちらを見るだけというような状況です。

それでも、病院に行く直前より少し良くなっているので、様子見と思って回復を信じていました。

『遊ぶのも今は我慢!』

『元気になったらいっぱい遊ぼうね!』

そうロンに語りかけながら、日々を過ごしていきましたが、ロンが元気になることはなく、その日がやって来ました。

いつものように学校から帰ってきた犬太郎は、やはりいつものようにロンのいる場所に直行した。いつもと違う。床に伏せるようにして顎をつけているのではなく、横になって体の側面全体を床につけ、目だけ空けて苦しそうにゼェゼェハァハァと呼吸をしている。

『嫌だ・・・嫌だ!!』

ロンの苦しみは分かりつつも、『ロンが死んでしまう・・・。』という現実を絶対に認めたくなかった犬太郎は、『ロン、立って!立って!!』と繰り返していた。

その後のロンの行為は今でも思い出すだけで、涙が出てしまうので、普段はなるべく掘り下げないようにしているのですが、語らせて頂きます。

その声が届いたからかどうかは、今となっては分かりませんが、ロンがゆ~っくりと立ちあがたので犬太郎はドアに手をかけました。自分でもこの行為の真相はもう思い出せません。大好きな外を見せたかったのかもしれないし、ロンの方が少し外に向かって歩を進めていたからだったのかもしれません。

ロンはちょっとずつ早く、しかりやはりフラフラしながら庭に出ていきました。後を追うように、、、というかまるでそれを見守るように犬太郎を含める家族は彼の後をついて行った。もう日が沈みかけていて前で何が起こっているのかよく見えないのだけど、少し歩くとロンはフラフラながら小走りになり、そしてすぐに立ち止まった。

そして、、、

ブシュ~~ッ

聞き覚えのない擬音が、暗くなった庭に響いた。

何だろう、、、。見守るように後ろにからついて来た犬太郎がロンの立ち止まっている場所に駆け寄ろうとしたその時、ロンが踵を返してこちらに駆け寄ってきた。そう・・・駆け寄ってきたんです。フラフラとしか歩けなかった彼が、元気なころと同じように早足で!

そして、彼は前足を犬太郎の膝にチョコンと置いて、背伸び状態に。覗き込むようにこちらをじっと見つめるその仕草は、何度も何度も見てきたロンの王道の行為。

犬太郎はほんの一瞬だけ安心した。ただし、ほんの一瞬だけ。

明らかに不自然だし、見上げているロンの顔がやつれていることもあるが、何故かその目が何かきまり悪そうに見える。まるで、いたずらをした時に何かを隠すような・・・。そして、まるでさよならを伝えるかのような・・。

何よりも先程の擬音の正体が気になる。

ロンの足をゆっくり降ろすと数メートル先にある、先程までロンが立ち止まっていた場所まで行った。暗いのですぐには分からなかったが、その正体に気付いた瞬間、犬太郎一家はすぐに病院に車を走らせた。

大量の血だった・・・。

そこから先はよく覚えていない。先程までの、状態のロンがどのようにして再び弱っていったのか、、、。ただ、車の中で泣きじゃくっている犬太郎に抱かれたロンの印象は、目だけ空けてゼェゼェハァハァと呼吸をしているものの、もう体はほぼ動いていなかった姿しか記憶にない。

そして、病院についた瞬間に医者は『あぁ~・・・。』と絞り出すように言った後、何かをしてくれる素振りはなかった。

『早く!!ロンが死んじゃう!ほら、まだ目を開けてるじゃん!!まだ生きてるんだから早く診てよ!!』

これは、実際には言ってってないが、間違いなく当時の犬太郎の心の叫びだ。

少し間をおいて(今思うと言葉を選んでいたのかもしれない)から、ロンを手術台の上の置き、『残念ながらもう亡くなっているね。』と言いながら、ロンの空いている眼を撫でるようにして閉じた。その瞬間、犬太郎も家族もしっかり理解した。そして受け入れた。受け入れざるを得なかった。

閉じられたロンの目は、二度と開くことはなかったのだが、何故かその顔はここ数週間の苦しそうな顔から、楽しく遊んだ頃のロンの顔に戻っていた。

今までも、たくさんの動物たちと家族になり、たくさんの別れがあったのですが、大の大人である両親を含め、家族全員がまるで動物のように大声で泣きまくったのはロン以外に記憶がないくらい。※犬太郎はしょっちゅう泣いておりますが、、、。


ロンが最後に見せたあの行為。後付けで自分解釈なので、根拠はないのですが、犬太郎を心配させないように、自分の血を隠したかった。そして、最後の力を振り絞って、『僕は元気だよ!心配しないで!』と、伝えたかったのでは、、、と、そう思うのです。


ロンが亡くなった後、犬太郎が大人になってしっかりとした犬知識を学び、次に家族に犬を迎い入れるのに15年以上の歳月が流れます。それほど、犬太郎一家にとってロンとの短い短い思い出は、ショックから立ち直るのに時間がかかりました。

しかし、年月が過ぎ、再び犬との生活を始めることになるのもまた、ロンがいたからこそです。

悲しい別れだでなく、言葉では表現しきれないくらいの愛情や思い出、優しさ、気遣い、、そんな最高の幸せもロンから教えてもらったのだから―。

        《8日目終了 9日目は大好きな犬種ボルゾイについて》



大好きな犬はもちろん、動物全般、、、いや鳥・魚・昆虫・植物に至るまで生き物に関することをいろんな角度から私、犬太郎の想いをただただ好きに語っていく日記です。