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僕らは忍者を見ていた!

学生の頃の話。
友人Yちゃんが僕に変なことを言う。
「びわ君(僕のことです)、忍者っていなかった?」
ちょっと笑いながら言うYちゃん。
???何を言っているんだろ?忍者???
「忍者、見てない?びわ君、見てそうだと思って。」
???まだ話が見えない。
「あたしね、忍者見えるよ。」
・・??もうちょっと聞いてみよう。
「あのね、新幹線とか乗るでしょ。で、外見てると上のところ走ってるの。」
・・・・・・!!わかった!!
唐突に理解した。そして腹がよじれるほど大爆笑して、おさまらずにその場にうずくまって笑い続けてしまった。

子供の時、車の後部座席に載って、ぼーっと外を眺めている時に見えていたあれだ。
僕の場合、それは忍者ではなくてすごく速く走って家の屋根から家の屋根へと飛び移ったり、電線の上を走ったりしていた。時に大きく、時に小さくジャンプしながら走る車の横をずっとついてくる超人のような人だった。人によってはスーパーマリオみたいな、人によってはスパイダーマンみたいなものかもしれない。ストリートを走るパルクールなんかはかなりイメージが近い。いずれにせよ多くの人がこどもの時に見ていたはずのあれだ。
Yちゃんにはそれが忍者だったらしい(笑)。
そのころ僕はもうそういうのは見えていなかったけど、Yちゃんはまだ見ていると言う(笑)。
こんな事人と話すのは初めてだったし、人と話す話題だとも思っていなかった。なのに、Yちゃんは僕の中にいる忍者を見抜いてきた!もうおかしくてしょうがない!!
そうだ、確かに忍者は見えていた。なのに、いつから見えなくなったのか。

電車に乗って景色を見る時、たまに”そいつ”を意図的に登場させることがある。あれ以来、Yちゃんのおかげでまた忍者が見えるようになった。というかあれから僕の見ていた”そいつ”も忍者の姿になった。
僕はとても大切なものを失わずにすんだ気持ちになる。


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