「つづける」ということ

ーーーあなたは,いつからその仕事をしているのですか?
そう問われれば,自分の職歴を反芻するだろう.私の場合はITのエンジニアになってから早3年と言ったところだ.それ以前は塾講師をしたり,居酒屋の店長をしたり,造園師として修業して,いつのまにか工場の作業員に.
エンジニアになってから様々勉強するようになったが,やはり世間は広くて凄腕のエンジニアなんていくらでも溢れかえっていた.

そして,
ーーーあなたは,いつから呼吸をしていますか?
続いて示された突拍子もない問いかけに,しばらく呆気に取られていた.

その問いかけの意図とは

そんなもの決まっているじゃあないか.生まれてこの方,呼吸を忘れることなんて滅多にないよ,と.
中学二年生の理科の授業で習った内容だ.人は空気中から呼吸として酸素を取り込み,肺から血液に酸素を移して体全体に供給する.そして赤血球が戻ってきた頃には二酸化炭素を代わりに持ち帰ってきて,口から吐き出す.人間に限らず,多くの生物は酸素がないと生きていけないのだから.
そんなもの当然だろう,と質問者も知ってて聞いているのだ.そうでなければ「いつから呼吸をしていますか」なんて聞かない.呼吸し続けていることを前提に質問してきているのだ.

さて,最初の質問を覚えているだろうか.それも同様に「継続していること」を前提に質問されているのである.

続けていて当たり前

自動車の免許を持っているだろうか.持っていなかったとしても,免許にはランクがあることを知っているだろうか.
低い方からグリーン,ブルー,ゴールドである.詳しい取得条件は割愛するが,ここでいうゴールドは「過去5年間に無事故・無違反」という条件を達成すれば取得できるものだ.この最高ランクの素晴らしいステータスを獲得するための,なんと全くリスクを犯さない確実な方法が存在するのだ.

車を運転せずに5年間耐える

素晴らしい.これであなたもゴールドランクの一員だ.しかしながら当然,運転技術は減衰する一方だろう.
しかしながら,経歴の長さというものは周囲からの期待の大きさと比例してしまうという現実もある.高校卒業したばかりの年齢の板前と,この道30年のベテランすし職人,どっちの握ったすしのほうが美味そうだと思うだろうか.
そう,それを始めてしまった以上,続けていなければ格好悪いのである.

三日坊主とは

修行僧の生活は厳しく,もう耐えられないと言って還俗してしまう者も多かったそうだ.それは修行に限った話ではなく,苦痛を伴うものはなんでも継続するには相当なタフネスが必要になるだろう.それは勉強であったり,ダイエットであったり,生活習慣の改善であったりと.
これはあくまで私の持論ではあるが,三日は少し短いので,一か月の猶予を与えたい.一か月続けて変化がなければ,今後一生それに触れる必要はない.要は向いていないのだ.0という数字に何を掛け算しても積は0のままだ.また,始める前から「一か月も耐えられるか分からない」などと言っている人も前向きに検討する必要はない.

さて,ならばどうやって続けるのか.
これはひとつ読者の皆様方には試してもらいたいという方法をお教えしよう.

めぐる

【用意するもの】
・あなたを褒めたり叱ってくれたりする人

そんなの用意できないよという人には,とっておきの人材を紹介しよう.
この人だ.→(https://twitter.com/kibi_aki)
まぁ,私が応援したいというだけなのだけれども.

そして次に具体的な方法だが,この二つの単語に尽きる.

・インサイドアウト
・アウトサイドイン

インサイド:自分の内側,要するに挑戦の結果生み出したもの
アウトサイド:自分の外側,つまり自分以外の第三者があなたに与える影響

まずは自分でアクションを起こして,その結果を生み出す.それはどんなに小さなことでもいい.それをやったという事実をアウト,つまり自分の外側に発信するのだ.そしてアウトサイドにいる人間(仮に私としよう)がそれを受けて,イン(あなた)に向かって褒めたりけなしたりするのである.
当然褒められたままであってはいけない.罵倒されたままでもダメだ.アウトサイドから自分に戻ってきたレスポンスをしっかりキャッチして,もう一度インサイドアウトを起こすのだ.
内側から外側へ,外側から内側へ.そういった循環を巡らせることが継続なのである.それを続けていれば,いつの間にか習慣と化しているだろう.いつの間にか自分のスキルとしても定着しているかもしれない.

気を付けるべきこと

しかしながら人間の脳には,いくつもの煩悩という物が存在する.インサイドアウト/アウトサイドインに関して特に気を付けるべき阻害要因をお伝えしておく.

・フェードアウト
・シャットダウン
・シフトチェンジ

いつの間にやらアウトする力が弱まっていく衰退現象をフェードアウトと呼ぶ.弱弱しいインサイドアウトでは,それなりのアウトサイドインしか望めないということを知らなければいけない.
そしてまた,ある一時の感情でその循環の輪を壊し,逃げ出してしまうこともある.私はこれをシャットダウンという.
最後に,初めはよかったものの,やってるうちに別のことに興味が湧いてきたというもの.経験したことのある人は多いのではないだろうか.今までずっと勉強してきたのに,新しいゲームが発売されたからと言ってそれに時間を割いてしまうというのもそれに該当すると思っていい.

スパイラルアップ

理想とする光景は螺旋階段だ.しかし,一見そのように感じられても実は全く成長していないというケースも存在する.無限回廊のようなものだ.それは自分一人では気付けないものだ.それもそうだ,自分ではそれが正しいと思って実行しているのだから.
それに気づくためには,3周か4周したら,一度自分の来た道を振り返ってみるといい.循環のログを参照することで,自分が今向いている方向であったり,いつまでにはどこにたどり着いているかという地図を明確にできる.
そうして時々方向調整をして進んでいくのだ.

誰しも最初から山頂に産まれるわけではない.気付いた時には目の前に大きな山があって,友人は皆もうそれを登り始めているのだ.
踏み出すべきは,今なのだ.

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