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東京国際映画祭2023で観た10本とその感想

今年は有給をとってがっつり東京国際映画祭を満喫できた。毎日お祭りみたいで楽しい期間だったな。

アニメ作品を中心に10本鑑賞できたので、感想をまとめてみる。

『ゴンドラ』

ロープウェイが主な舞台。女性乗務員2人が、お客さんを乗せたり乗せなかったり、演奏したりチェスをしたり…とにかく自由に過ごしていて、その様子が可愛く映る。が、同時にこれは彼女たちを抑圧する男性や権力への「抵抗」を表していると思う。勇気をもらえた作品だった。

『真昼の女』

ナチス政権下で生きた1人のユダヤ人女性の人生を描く。生き延びるために手放さなきゃならなかったものがあまりにも多すぎた。スクリーンを通して彼女の精神的、肉体的な痛みが強烈に伝わってきて息苦しかった。彼女の「話」も痛みも、絶対に忘れたくない一作。

上映後のQ&Aで、監督は本作は「female body」を描いていると話していた。パートナーとのリレーションシップ(の違い)、妊娠、出産、授乳、女性の体をめぐる様々な描写がある。だからこそより「痛み」を感じたのだろう。

『音楽』

やっと鑑賞できた。英題だと「Our Sound」なのが良いね。クセになる画のタッチと会話のテンポ感。ラストの地元のロックフェスでの演奏が最高に気持ちいい。まさに彼らにしか表現できない音を聴けた。今はリコーダーに可能性を感じている。竹中直人がハマりすぎていた。

岩井澤監督がとてもゆるくて和やかな雰囲気が流れていたトークセッション。『音楽』は海外の映画祭でも大絶賛だったそう。次回の企画も進行中だそうで、そちらも楽しみ。

『アートカレッジ 1994』

1990年代初頭の中国で美大に通う学生たちを描いた本作。芸術でお金を稼ぐ難しさ、結婚=女性の幸せなのか?を投げかけられた。学生寮で自室にいても廊下から漏れてくる声やヘッドホンの音漏れなど、メインでない音の使い方が印象的だった。

会場にいた中国のお客さんたちも盛り上がっていた。作中のちょっとした掛け合いで笑っていて、その様子も微笑ましかった。

『相撲ディーディー』

世間を気にする母から結婚しろと圧をかけられても、自分の意志を貫いて相撲で頂点を目指したヘタルが凄くかっこいい。「他人からの心配は自分の心配になる」という言葉が心に残っている。コンプレックスを抱えている人の心に寄り添う、パワフルな作品だった。

日本の描き方がとても好きだったから、世界初上映の場が東京国際映画祭なのが嬉しい。監督たちも嬉しそうに報告してくれたのが良かった。 都会に住んでいると忘れがちだが、日本には美しい自然や文化がたくさんあるのだ、と思い出させてくれた作品。

『駒田蒸留所へようこそ』

今回も大好きだったP.A.WORKSのお仕事シリーズ。ウイスキーをほとんど飲んだことのない自分が、鑑賞後にウイスキーを愛おしく感じるほど、作品の至る所に情熱が込められている。働くとは何か?答えのない問いを、高橋と一緒に考えていた。

舞台あいさつの吉原監督のコメントが印象的。最近の若者は「根拠のない動機」で仕事を選ぶ人が多く、やめやすいと話していた。そんな若者に向けた作品として、熟成まで最低でも3年はかかるウイスキーをテーマに選んだそう。新卒で入社した会社を1年でやめた私だが、鑑賞後、とりあえずもう数年は今の仕事を続けてみようと思えた。

『エア』

独ソ戦を戦う女性パイロットを描く。空中戦の描写は、音と役者の表情で泣きそうになった。男性から侮蔑されたり性的な目で見られたりと精神的に傷つけられるうえ、活躍は新聞で報じられないが最後まで戦い続けた彼女たちは逞しい。男性も女性も戦わなくていい日が来てほしい。

『ロボット・ドリームズ』

初っ端から涙が止まらなくて、今も思い出すだけで泣きそう。犬とロボットの絆を描いた、やさしくて切ない物語だった。「こうなってほしい」未来にはならなかったけど、それが現実なのかもしれない。キャラクターも街も表情も全てがキュートで大好き!

上映後のあいさつの時、パブロ・ベルヘル監督が客席のプロデューサー陣やパートナー、日本の家族を紹介してたのも良かったな。シンポジウムの時にも思ったけど、あたたかい方でそれが作品にも出ていた。 今はSeptemberを聴きまくっている。

『マリア』

悲劇はなぜ起きたのか?辿ると、現代の社会問題であるデジタルタトゥーや、昔から続く女性の地位や民族の問題が見えてくる。ハッキリとは描かず、観客に委ねる余白があるのがいい。

舞台あいさつの時、巨匠たちの作品の名前がたくさん出た。先輩の作品へのリスペクトがありつつ、新たな画づくりに挑戦している若いチームに拍手👏🏻

『深海レストラン』

客船から海へ落下した参宿が辿り着いた先には…?色遣いがとんでもなく美しい。動きが早い。テクスチャの描き方が衝撃的(海精霊のヌメヌメ感がリアル)。…なんて画に注目して観ていたら、後半パートで涙腺崩壊。南河が参宿に伝えた言葉が生きる希望になる。傑作。

アニメ・シンポジウム「アニメーション表現の可能性」

「アニメは積極的に良い嘘をつく」
「映画はトラベルマシーン」
「アニメは完璧さと不完全さがあるからいい」 「アニメはパントマイムみたいなもの」
「我々はマジジャンのようなもの」
「喜んでもらえる限り、提供し続けたい」
…4名の監督たちが定義する「アニメ」が凄くよかった。ここでの話は別途まとめたい。

まだ日本で公開されてない/されるかも分からない作品も観れた貴重な機会だった。

タイトルと場面カット1枚とちょっとのあらすじと予告だけでチョイスした作品たちだったけど、どれももう一度観たいくらいの傑作ばかり!

なので、今はどうか日本で公開されますようにと願う。

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