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子どもが出てくる映画の話をしよう。その5『ROOM』

子どもが出てくる映画。その5作目は、比較的最近の映画から。

『ルーム ROOM』(2015年/米・イギリス・カナダ・アイルランド)

おぅ、もう5年前なのか・・。と、つい遠い目に。いやいや、ずっと語りつぎたい名作じゃないだろうか。

物語はこうだ。

ある部屋に若きママと幼い息子ジャックが住んでいる。誕生日に母がなんとかつくったケーキらしきものには、テレビで見るようなロウソクはついていない。そして夜、見知らぬ男がやってくると、ジャックはタンスの中に押し込まれる。ほかに場所がないし、息子には見せたくないものだったから……。

テレビと洗面所があるだけの納屋のようなところ。彼女はこの部屋でずっと男に監禁されてきた。息子はこの狭い部屋で産み、育てた。だから息子にとっては、この部屋が世界のすべて。テレビにうつるのはお話だと信じている。

でもあるとき、ママは決心をする。この子を救うために……。

この映画はふたつのパートでできている。邪悪な男の目をかいくぐり、その部屋を脱出するまで。脱出するまでは心臓がばくばくするほど緊張するほどスリリング。うまくいくのか? いってくれよと思わず祈る。

この映画には原作があり、原作は実際にあったフリッツル事件に触発されて書かれたそう。実の父に24年ものあいだ監禁され7人もの子を産みおとしたという、あまりに異常な事件。でも物語がほんとうにはじまるのは、そのあとだった……。

ここまで書いておいてなんだが、映画の内容については他にゆずって、ここではジャック役のジェイコブ君のことを書きたい。ずっとに閉じ込められてるから女の子のように髪が長い。もうこの子がめっちゃいいのだ!

たとえば、あの部屋からでてきたのにつらいことばかりで苦悩する母親が、息子にまじめに語りかけるところ。ベッドの上にちょこんとすわってね。神妙な顔で聞いていたかに見えた息子は、「おっぱい」と母に手をのばす。わかっていないのだ。母親はがっかりして「だめよ」というのだけど。わかる。子どもには、よくわからない話よりママ=「おっぱい」なんだよ。

過酷な状況がある。大人はそういう世界に押しつぶされそうになる。でも、それとは無縁なところで子どもの世界はあって、立ち止まりまごまごしている大人をおきざりにして、日々成長していく。その姿に大人もまたよろよろと歩き出す。なつかしい(?)あの部屋をおとずれたあの子のまなざし。部屋のショットに胸うたれる。

ジェイコブ君があまりにうまいので、これで5歳かと思えば、じつはこのとき8歳くらいだったそう。でも小柄だからというだけでなく、ちゃんと5歳に見えるのよ。しかも狭い部屋が世界のすべてだと信じきっている5歳の子どもに。彼はこの映画でいろいろ賞をもらい、その後の映画『ワンダー 君は太陽』などにも抜擢されている。

今回も「みんなのギャラリー」から写真をお借りしました。Thanks.
















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