菅野節子

ルポライター。旅雑誌、生活情報誌、企業情報誌、ガイドブック等。神社仏閣、祭礼、花木巡り…

菅野節子

ルポライター。旅雑誌、生活情報誌、企業情報誌、ガイドブック等。神社仏閣、祭礼、花木巡り、織姫探訪など… カメラ担いでの、ゆるゆる巡礼リポートを生業とする。

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  • き・ごと・はな・ごと

    日本女性新聞に1997年4月~2001年3月まで月次連載した『き・ごと・はな・ごと』を随時掲載。全48回。 いにしえからの伝統ごとには、不思議なならいや言い伝えがあり、そこには花や樹木ら自然とのかかわりの深さを見いだすことができる。それは先祖たちが森羅万象ににいかに畏怖の念を抱き、尊んできたかのあかしともいえよう。そうした習慣を好奇心の目で楽しみながら探っていきたい・・・

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【き・ごと・はな・ごと(目録)】

日本女性新聞に1997年4月~2001年3月まで月次連載した『き・ごと・はな・ごと』を随時掲載中。全48回。 ー掲載済みー 第01回 : 師岡熊野神社―筒粥 第02回 : 北の城下町に伝わる椿餅 第03回 : 萱の大蛇が町を練る―「蛇も蚊も」祭り 第04回 : 海の安全と大漁を祈る―森戸神社の潮神楽 第05回 : 古代へのロマンを誘う古刹の蓮華 第06回 : 夏の風物詩、ホオズキ市のルーツ探訪 第07回 : 室町の世から伝わる茅の奇祭・お馬流し 第08回 : はかない鷺草の

    • 【き・ごと・はな・ごと(第35回)】春を寿く―スイセン迷走曲

      雪解けの田沢湖畔をサイクリングしたことがある。生まれて初めて雪国の冬を経験し、待ちに待った春を迎えた年のことだった。盛岡の街から2時間半バスに揺られて運ばれていった湖畔の集落は、ほころび始めの桜の花がやけに白く頼りなげで、寂しげで、柔らかに差し降る太陽が雲まに隠れるたび、ひどく体が凍えた。北の春は遅い。その日、ふと通りすぎた民家の軒下に咲いていた水仙のあざやかさが目に沁みた。湖面も、流木も周囲の山々も、ヨットハーバーも、色彩があった筈なのに、記憶の情景に浮かぶ色は、待ち望む季

      • 【き・ごと・はな・ごと(第34回)】東京下町に神宿る松

        懸念していた2000年問題も、何とか落ち着きひと安心であるが、元日にパソコンに入った祝メールには19001年1月1日、おめでとう、と記念すべきコンピューター誤作動の日付けがくっきりと記されていた。1万7000年先へタイムトンネルを潜り抜けたような妙な心地がした。そのころの地球は、そして人類はどうなっているのだろうか。 西暦2000年に生きる私たちはこの世にはいまい。今ある花木は?。19001年にあの松はどうなっているだろう。松は門松、松飾りなど正月は元より寿ぐものに欠かせな

        • 【き・ごと・はな・ごと(第33回)】ヒバの香りに魅せられて

          下北半島がヒバの産地だと気付かせてくれたのは、その地で出会った織姫だった。見て欲しいものがある。そう言うなりしばらく姿を消すと、山内さんはどこからか黒いビニール袋をひっさげて現れた。そして「この香り、わたし大好きで、なんとかここの特産にならないかとおもって」と言いつつゴソガサと微かに音のする中身を取り出した。それは見覚えのある物だったが、でも、それが特産とどう繋がっているのか・・・・? 「これカンナ屑?」 わたしの曖昧な質問が解消される前に、「はい、これなんです」山内さんが示

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        【き・ごと・はな・ごと(目録)】

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        • き・ごと・はな・ごと
          36本

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          【き・ごと・はな・ごと(第32回)】錦木の里を訪ねて

          半袖Tシャツ一枚で新幹線に飛び乗ったことが、まるでウソのよう。車内で長袖、盛岡からのバス内で薄手のセーターを重ね着し、ここ大湯温泉のバス停に降りたった途端さらにウインドブレーカーの必要に迫られた。それでもブルブルするこの冷気。10月半ばになるというのに、いつまでも暑さを引きずる季節忘れのボヤケた気分に『錦木の里』は確実に冬の訪れが、そう遠いことではない事実を知らせてくれた。 夕暮れ迫っていたのも構わず、宿に荷物を預けた足で迷わずストーンサークルへ向かう。秋田県鹿角市という土

          【き・ごと・はな・ごと(第32回)】錦木の里を訪ねて

          【き・ごと・はな・ごと(第31回)】へチマ嬉々漫録

          わが家に初めて糸瓜ができた。梅雨どきに花屋の店先で買った150円の苗鉢が、あれよあれよと蔓を延ばし、みるまに軒先の物干し竿を巻き込んだ。7、8月中の暑い盛りには毎朝咲く黄色い花と挨拶しながら、セッセセッセと水やりをした。すくすく伸びる糸瓜蔓は、狭いベランダでは収まり切れなくなり、ちょっと目を離すとすぐに上階や隣へ侵入しようとする。その度に主人の釣竿や突っ張り棒やらをあわてて継ぎ足して蔓の道しるべを作った。成長の勢いときたらものスゴクて、継ぎ足す作業中にも待ち切れぬとばかり、茎

          【き・ごと・はな・ごと(第31回)】へチマ嬉々漫録

          【き・ごと・はな・ごと(第30回)】七夕に寄せて(3)―タナバタさまは何処に?

          七夕まつりと名打つ祭りはところによって、そのカタチもさまざまだし日取りも異なる。現行暦の七月七日が一般的だが、次いで多いのが月遅れの八月七日だろうか。いわゆる旧暦によると今年の七夕は八月十七日に当たるそうだ。だが、別の陰暦の読みあわせで八月下旬に執り行っているところもある。早いところと遅いところでは夏と秋ほどに季節感が異なり、これでは夜空の趣も大いなる差が出ようというものだ。梅雨の明けきらない新暦の七夕さまでは天の川を望むことは稀で、これでは織女と牽牛の逢瀬は望めない。かわい

          【き・ごと・はな・ごと(第30回)】七夕に寄せて(3)―タナバタさまは何処に?

          【き・ごと・はな・ごと(第29回)】七夕に寄せて(2)―桑都の名ごり

          桑の葉が近ごろ人気らしい。なんでも抗癌作用があると学術的に認められたとかで、このところ俄然注目されているそうだ。茨城県に住む知人の夫が癌になった。手術は大成功に終わり、その後の経過もすこぶるいい。おみまいがてらマスコミ媒体で得たそんな話を伝えたら、とても喜んでくれ、さっそく桑茶を購入し、家族三世代で今はファンよ、毎日飲んでるわ!と嬉しい連絡が先日あった。一番効き目があるのは新鮮な生薬だそうだが、でも桑の葉なんてなかなかないでしょう、そうおもったら、彼女曰く「ありますよ!こっち

          【き・ごと・はな・ごと(第29回)】七夕に寄せて(2)―桑都の名ごり

          【き・ごと・はな・ごと(第28回)】七夕に寄せて(1)― 戸隠の杉詣で

          七夕に寄せて ☆・・・今日の七夕は、田畑の神の御霊を迎えての豊饒祈願・祖霊供養・禊祓いなど、古代からあったこの国の盆時期の祀り事に、伝来の仏教と中国の星祭りが融合し変容したものだという。かって日本にも神衣を織る棚機女の存在があり、また今でも北東北の一部ではタナバタさまといえば田の神さまのことだとする地域もある。自然崇拝と霊魂の存在を信奉する古代人の原始信仰こそが、そもそもの七夕の元祖であったとしたら、現在のはな・きごと全てにも、どこかでこの祭りのルーツと重なるものがあるので

          【き・ごと・はな・ごと(第28回)】七夕に寄せて(1)― 戸隠の杉詣で

          【き・ごと・はな・ごと(第27回)】日蔭の佳人―ドクダミ草

          ―ジュウヤクとっとるか?と聞かれ、夫はピンと来なかった。なんで重役なんだ? ああ、そうか。ドクダミのことだと気がつくまで間があった。夫はそのときドクダミをせっせと採取中であった。あげましょうか?、たくさん採ってますからというと、いやイイ、イイ、いらんいらんと、歯切れのいい関西弁であっさりフられてしまった。この方は薬剤師である。十薬とサラッと口にするあたりは、さすがだなあ、と去って行く後ろ姿に敬意を表した・・・とか。ドクダミは毒痛み、毒溜めのこととも。出物腫れ物の治療、毒下しな

          【き・ごと・はな・ごと(第27回)】日蔭の佳人―ドクダミ草

          【き・ごと・はな・ごと(第26回)】A・LA・つばき(2)

          うちの田舎では椿を庭先になんか植えない。咲いたままぽたっと落ちるのが、頭を刀で切り落とされたみたいで縁起が悪いからでない?みんなイヤがるよ―古里談義になったときに、ふと椿の思い出ばなしになった。茨城の筑波山を望むその人の実家の周辺では椿は忌み嫌われたそうだ。子供の頃、冬の竹やぶに咲く赤い椿があまりにも綺麗なので、家に持ち帰り花瓶に挿そうとしたら、そんな不吉な花は飾るものではないと、家人にいわれたそうだ。そのくらいだから、こっち(首都圏)に移るまで、椿というのは山ん中とか墓場で

          【き・ごと・はな・ごと(第26回)】A・LA・つばき(2)

          【き・ごと・はな・ごと(第25回)】A・LA・つばき(1)

          木と三と人と日で椿。三は草薙の剣から生まれた女神の数。古代よりの女性の聖数。日は太陽。つまり椿は、天照大神の恵みの気を孕んだ樹木。天のパワーを受け止める神の木では?・・・・これは勝手な思い込みですが・・・・。 さて、今回は巷で拾った春の木、椿のあれこれを二回に亙ってご紹介。 ※      ※ 椿町、椿神社、椿公園とツバキと名のつくところを見つけるとノコノコでかけていく。名称だけで全くイミのないものも多々あるのだが、それでもいい。私にとって、それは聖地巡礼なのだから。で、

          【き・ごと・はな・ごと(第25回)】A・LA・つばき(1)

          【き・ごと・はな・ごと(第24回)】ぶらり梅花逍遥

          ―美しや紅の色なる梅の花 あこが顔にもつけたくぞある― この和歌・・・・・だれあろう菅原道真公がわずか五歳のみぎりで詠んだ和歌であるという。 菅原道真(845~903年)といえば、 ―こち吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春をわするそ― が断トツにポピュラーである。また、この句に詠んだ梅の木が、無実の罪で太宰府に流された道真を追って、一夜にして飛んできたという飛梅伝説も有名だ。此の件については、ほんとうにそんなことあるんだろうか、といささか疑問ではあるが太宰府天満

          【き・ごと・はな・ごと(第24回)】ぶらり梅花逍遥

          【き・ごと・はな・ごと(第23回)】春近し・・・ 軒にヒイラギ 、夕餉に鰯

          駅のホームの土手に水仙が可憐に咲いている。梅も見ごろだ。桜の梢にもわずかながら膨らみをつけた芽が張り出している。日差しも心なしか舞い踊るようにキラめいて、いよいよ春が近いことを教えてくれている。むかしの暦では2月が歳の始めだったのだから、当時の人々の新年に寄せる気持ちには、新春ということばそのままに、よほど心浮き立つものがあったことだろう。そうはいっても、つい先日でかけた秋田ではまだ雪が深く、花咲く春の訪れにはまだだいぶ間がある。なので、もう春ですね!とばかり言い張るのも傲慢

          【き・ごと・はな・ごと(第23回)】春近し・・・ 軒にヒイラギ 、夕餉に鰯

          【き・ごと・はな・ごと(第22回)】卯年に寄せて―蒲の穂におもう

          うさぎ年である。新年の幕開けテーマはもちろん蒲。♪大きな袋を肩にかけ―大黒様が来かかると―♪と小学唱歌に歌われたように、因幡の白うさぎが大国主命に教えられ、鮫に赤裸にされた肌を包んだのが蒲である。子供のころ、♪ガアマの穂綿にくるまればあ~、たちまちもとの白うさぎい~♪と歌いながら、なんでガマなのか分からず不思議でならなかった。生まれてこの方、日常の生活圏のなかに蒲は全く見当たらず、蒲がどんなものであるかを知り、この目でシゲシゲ観察したのはごくごく最近のことである。 『古事記

          【き・ごと・はな・ごと(第22回)】卯年に寄せて―蒲の穂におもう

          【き・ごと・はな・ごと(第21回)】母たちの想いを伝える―乳母イチョウ

          銀杏は古木になると木の幹や枝にコブのような突起を付ける。気根と呼ぶのだそうだが、それが成長して垂れ下がってくると、まるで乳を連想させるようなカタチに変形する。その下に佇むと、乳の出が良くなるとか子育ての御利益があるとかと崇める信仰は全国にあるようだ。 ―初対面の乳銀杏は三浦半島の三崎に鎮座する海南神社だった。ここには源頼朝お手植えと言われる大銀杏が夫婦ペアーで並んでいて「その気根のある木の幹に乳の出の足りない女性が祈りを込めて触ると乳が出るようになる」という言い伝えが残って

          【き・ごと・はな・ごと(第21回)】母たちの想いを伝える―乳母イチョウ