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がん検診を身近に!副業起業への挑戦

株式会社100(ワンダブルオー) 代表取締役 山上 博子さん

《原体験》必要なのにハードルが高い「がん検診」

私は大学卒業後、大手製薬会社にMRとして入社しました。MRとは医師や薬剤師などの医療関係者に医薬品の情報を提供する営業のような仕事。私は文系だったのですが、文系でも医療や製薬の分野に関われる仕事だったので興味を持ちました。

ただ、最初からその分野に絞っていたわけではなく「教員になりたい」という夢もあったりした中で、一番ご縁を感じたのがその製薬会社でした。

特にその頃は起業をめざしていたわけではありませんが、今の事業につながる原体験のひとつが30歳のときに訪れます。それは、初めて乳がん検診を受けたことでした。

一般的に乳がん検診は「マンモグラフィ検査」といって胸を検査器ではさんでX線を照射するのですが、これがすごく痛かったんです。しかも100%発見できるわけではなく、「もう受けたくないな」というのが正直な感想でした。

その4年後、ニュースキャスターとして活躍していた小林麻央さんが乳がんで亡くなりました。同じ年齢だったこともあり、とてもショックだったのを覚えています。

思い返せば、私は高校生のときに祖母をがんで亡くし、そのときも「苦しんで亡くなる人を減らしたい」という気持ちを抱いたのでした。

それでも・・・私は、あの痛いマンモグラフィ検査への抵抗を払拭することはできませんでした。そして、それは世間も同じでした。麻央さんが亡くなった年には一時的に増えた乳がん検診の受診率も、その後はあまり伸びなかったのです。

「乳がん検診は大切。でも、定期的に受けに行くのはハードルが高い」

そんなモヤモヤした思いを抱きながらも、時は流れます。転機が訪れたのは麻央さんが亡くなった2年後。勤めていた会社で新しい事業を開発する取り組みが行われ、私もその担当部署に異動。医療や製薬の分野での先進的な技術やサービスについての情報に触れる機会が増えました。

痛くない新タイプの超音波の機械を見つけたことをきっかけにリサーチを進めていくと、尿や涙などを使った検査技術が登場したことも知り、大きな期待を感じていました。

そして、一定期間スタートアップ企業に出向するベンチャー留学を経験させてもらったり、ビジネス開発を学ぶ社会人向けの学校に通う中で魅力的な起業家と出会ったりして、強烈な刺激を受けました。

「私にもできる。いや、私がやるべきだ!」

そんな思いを強くした私は起業を決意。がんで苦しむ人を減らすための次世代がん検診サービスの開発に挑むことにしたのです。

ただ私の場合、もともと働いていた製薬会社にも勤めながら「副業」という形で起業しました。自分の会社を成長させつつ、勤務先にも相乗効果を生み出せるよう奮闘中です!


《現在の事業》次世代の乳がん検診で受診率を向上

「イタい」から「ココチイイ」へ 世界の乳がん検査を変える。
そんなスローガンを掲げ、従来の痛みを伴う乳がん検査に抵抗を感じていた人に「 心地いい乳がん検査」の機会を提供し、「発見の遅れゼロ」をめざしています。

いま取り組んでいるのは、呼気で乳がんのリスクを判定する技術を用い、カフェやショッピングモールに行く感覚で気軽に検査ができるサービスの開発です。

これらの技術の普及・啓発や、受診率の向上に向けてフェムテック系イベントの開催や講演なども行っています。


《10代の皆さんへメッセージ》

「自分の人生は、自分で決められる!」
そんな気持ちを持って、何にでもチャレンジしてほしいと思います。

やらなくて後悔するより、やって失敗した方がいい。チャレンジした上での失敗は笑いに変えられますからね。

私は起業前、勤務先の製薬会社で別の新規事業をやろうとしたものの、新型コロナによって断念した経験があります。挑戦の機会すら奪われてしまい、今でも悔しくてたまりません。

だから何かやりたいことがあって、挑戦する機会があるなら、ぜひトライしてください!

副業起業のススメ
「起業」と聞くと、退路を断って自分が設立した会社と運命を共にするようなイメージがあるかもしれません。

でも最近は、勤めている会社を辞めずに副業の形で起業するケースも増えています。もちろん勤務先の会社からの許可が必要ですが、このような選択肢があることを知っていれば、起業のハードルもグンと下がるのではないでしょうか。

私も10代の頃は、「社長」と聞くと「雲の上の人」というイメージで、まさか自分が起業するなんて思ってもいませんでした。今は「起業は誰でもできる」そして「自分のキャリアは自分で築ける」と自信を持って言えます!

(取材日:2024年4月4日)


(参考)経済産業省:新しい起業のカタチ「出向×起業」


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