気合い入ってるコメンテーター。
コロナ真っ最中のあのころ、テレビでは全国放送でもローカル放送でもその道の専門家がよく出演していた。いわゆるコメンテーターである。
コロナはウイルスであるから、テレビではウイルスの専門家であるとか臨床心理の専門家とか予防医学の専門家とかが引っ張りだこ。司会者に質問された専門家はとてもマジメな顔であることないこと言っていた。記憶に新しいことと思う。
コロナ禍の全国テレビ放送において、私たちが最もよく目にした人物といえば尾身茂氏であろう。あのころのおれたちが毎日お世話になった、その道の権威、まさにオーソリティーだ。
あのころいつもテレビに出ている尾身茂氏を見て、私と妻は言ったものである。
「あ、またオミゲルが出てるよ」
親しみを込めて尾身茂氏を「オミゲル」と呼んでいた人が全国にどれだけいるだろう。該当する方はぜひコメントをしてほしい。
ちなみにこの記事、オミゲルについて詳細に書くものでない。タイトルは「気合い入ってるコメンテーター」であるから、オミゲル以外のコメンテーターについて思っていたことを書きたい。
コロナのあのころ、ローカル番組によく出ているコメンテーターが何人かいた。男女の別はなくその道に精通した人たちである。
北海道のみで放送されるニュースで「ナントカさん、感染者は今後どうなっていきますかね?」というローカルアナウンサーの質問に、あるコメンテーターが神妙な面持ちでコメントをする。
また別の日もそのまた別の日も同じコメンテーターが出演していて、視聴者からするとオミゲル同様にお茶の間の馴染みの顔になるわけだ。
おもしろかったのは、あるローカルコメンテーターがなんの間違いか、全国放送のニュース番組にリモートでコメント出演することになったときである。
おそらく北海道地域の感染者推移についての意見を求められての出演だったのであろう。そのコメンテーターの性別はここではどうでもいい。
ローカルコメンテーターの全国デビューである。
妻に言う。
「おい、見てくれ。あいつが全国デビューしてるぞ!」
あのころのコメンテーター業界における絶対王者がオミゲルだとすれば、この北海道ローカルコメンテーターは将棋でいうところの「歩」である。それだけローカル放送と全国ネットの谷は深い。
でもなんだろう、あの感覚。
応援したくなる。
ちょうど甲子園に似ている。
北海道の地区予選を奇跡的に勝ち抜き、はれて初出場を果たした公立高校を応援する気分だ。大阪桐蔭、仙台育英、横浜高校、智弁和歌山みたいなメガ級の強豪ひしめくウズの中に、我らが北海道の代表校が飛び込んでいくような。これは応援せざるをえない。
私と妻はテレビに釘付けになる。
そして気づくのだ。
見た目のわずかな変化に。
なんだかいつもと服装も髪型も顔もちがう気がする。
「なんかいつもとちがうな」「ちがうね。でもそりゃ気合い入るでしょ」「そうだよね、全国放送だもんね」「ここで気合い入れないでどこで入れるのよ」
私と妻のそんなクソ会話をつゆ知らず、ローカルコメンテーターは数秒のコメンテータータイムを見事にやり切った。すばらしかった。
が、思うのは……
気合い入ってるのがバレないようにしたいよね。
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