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くれなずめ。「ヘラヘラしろよ、答えなんか見つけようとすんじゃねーよ」

松居大悟監督の映画が好きでいつもチェックしている。私は映画が最初だったけど舞台の人だけあって、いつも画面から生々しい空気とエネルギーが溢れていて、役者が生き生きしていて引き込まれる。

男だったらもっと共感したかもしれないけど十分に面白かった。同期のアラサー男6人の何でもない、あるいは何かと何かの間の狭間のどうでもいい、でも思い出すとそれが輝きを放っているような時間、まさに日が暮れそうでまだ暮れていないあの美しい時間を描いている。

松井監督の映画はカットを割らないことも多い。アイスと雨音なんかは最後までワンカットだった。今回も始まりは「お・・・ワンカットで行くか」と思ったけど、上手に割っていた。けどなるべくシームレスに繋ごうとしているのは、やはり舞台のあの途切れない地続きの芝居の魅力を出したいのだろうか。

なんかこう、感想めいた事を書こうとすると、前田敦子のキーキー言うキャラ見事にハマってたな・・・とか、誰かんちに泊まって寝る間際のあの会話分かるなとか、何か「ここがこう良かったです」って言うよりは6人の時間を隣で眺めているような感じだった。それが積み重なって行った時、最後に向かってコップの水が表面張力で抑えきれなくなってダーっと流れ出す。流れ出して感動か・・・と思いきや、そこは監督のセンスで最後まで失速せず、臭くもならず、エネルギッシュに巻き込まれて終わっていく。

※ネタバレもあるので注意

最後まで赤フン出さないのかと思ったら最後の最後で出したのも大団円としては盛り上がったし、心臓のくだりも唐突なのに何か面白くて(監督はクサくなりそうだったからとの事だったけど本当そこはセンス良い)ウルフルズの歌でちゃんと「それが答えだ」のアンサーソングをエンディングで流して、ダラダラとしているけど愛おしい時間がちゃんと集約されて終わった。

松井監督は「言語化できないものを表現したい」とインタビューで答えてきたけどまさにその感触。そして「冴えない人たちの切実な機微を見つめるような日本映画があまりない」とまさに私もウンウンとめっちゃ頷いた。皆が輝かしい青春を送り、好きな人と結ばれトキメキ・キラキラの思い出がある訳じゃない。スターがいれば端っこの奴がいる。両想いがいれば片思いに終わる人がいる。けどその人たちに何か眩しいものや描くものがないのかと言うとそんなことは決してない。むしろそっちの方が魅力的ではと思う。私は映画憧れて撮っちゃいましたの若い男性監督の青春中二病みたいなザな映画が苦手すぎる。痒くて蕁麻疹出そうになる。それよりは陽の当たらない方やマイノリティの方に魅力を感じる。そんな人は是非(とは言えかっこいい役者さんたちが演じていますが)松井監督のくれなずめをご覧あれ。

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