辻野葵果

辻野葵果と書いてつじのきかです。名前を変えました。毎日投稿中です。短歌の他には、音楽と…

辻野葵果

辻野葵果と書いてつじのきかです。名前を変えました。毎日投稿中です。短歌の他には、音楽とゲーム、占いが好きです。

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連作 春生まれではない(四十首)

まなうらの息のできなさ 恋と愛 悲鳴のようにネイルがずれる ままごとのよう心臓に感情を覚えさせたくなかった夜明け 中指のブラックリングが揺らいでる海の深さで窒息をする 隣室の住人みたいに遠ざかる星 なにひとつ手に入れられない 深々と抱きしめられる 黎明のような毛先でわらってくれるな 君という感情 春の階段を上がった先に靡かない骨 直立のうつくしいひと 頑なな鎧のようで最初の萌芽 落涙の跡をぬぐっていくような低い声から生まれる酸素 リネンでも拭き取れなかった横顔の君をあらわす数

    • 連作 春の葉書

      副流煙みたいな春の範囲から抜け出すように電車に飛び乗る うつくしく言うならミロのヴィーナスのように心の部位が欠けたまま もう春の葉書を使いきるように四月のページを絵で埋めていく

      • 連作 捧げる夜の

        束の間の再発 夜はねむれずに湯が冷めるまでまだかかりそう 永遠に安くならないものたちへ捧げる夜の内側のしずか 気づいたら真夜中 安価なベッドではガラスのコップは受け止めきれない

        • 連作 ただのきみ

          春の海 『ただの』がついているきみと聴いたアウトロみたいな波の音 傷のない手首 きれいなスニーカー フルーツナイフは銀の月光 正体を突き止められたときみたいもうひとりでは赦せない自分

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        連作 春生まれではない(四十首)

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        • 三首以上の連作短歌
          2本
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          47本

        記事

          連作 感傷をくれよ

          ふとこぼす落涙よりもとうめいに見える誰にでもひらかれた花 借りてきた言葉じゃなくてなんてことない日に渡すケーキみたいな 感傷をくれよ 短いコピーでも花占いでちぎった花でも

          連作 感傷をくれよ

          連作 三つ編みにあえて

          生活に潜む『はずれ』のくじばかり引く日もわらってみせたい、わたしに 手探りで進む日常 カフェオレの苦さに気づけて一マスの春 三つ編みにあえてするような昼下がり 一緒に揺れる菜の花の黄色

          連作 三つ編みにあえて

          連作 春風を反射

          言いたくても言えないことを。春風を反射している銀のスプーン 濃いほどにうら悲しさは刻々とフレアスカートに染みていく春 弱虫が映ってしまいそうだからエスプレッソを流し込む喉

          連作 春風を反射

          連作 願望は願望のまま

          どこまでも建設途中の家みたい うんざりするほど壁しかない心 もうずっと向いてないだけ頑張るは花を踏み散らす闇の呪文だ 願望は願望のままにしておいてこっそり取り出すお菓子のように

          連作 願望は願望のまま

          連作 むなしさのフレーバー

          アイシャドー残したままのまなぶたの変身を解くみたいなゆびさき 検索結果ゼロ件みたいなむなしさのフレーバー口に運ぶ休日 手のひらは伸ばせないただ維持をする、わたしにできる一杯の悪意

          連作 むなしさのフレーバー

          連作 チェックのシャツ

          この胸を振動させる声だけがほしくてひらくいつもの動画 継続をするたびひらいた両腕に鳩が一匹増えるみたいだ なだらかな肩の稜線 やわらかなチェックのシャツに染みこむ照明

          連作 チェックのシャツ

          連作 夜中のケーキ

          この日々の終わりに点けるキャンドルは夜中のケーキのようなあかるさ 伸びかけのツーブロックを揺らすような朝焼け色のカモメの羽ばたき 真昼間の野原がそよぐのを君と二階のベランダから見つけたい

          連作 夜中のケーキ

          連作 黙ってるだけの夕暮

          ステータス異常なだけの生活と正しく刻む時計の相性 水曜を土曜とおもう気のゆるみ あらゆるだるさと共存できない 黙ってるだけの夕暮に落としてるふたりの、咲くのをやめた花の芽

          連作 黙ってるだけの夕暮

          連作 選択肢もうないんだよ、

          選択肢もうないんだよ、自由度の高い日々から消えていく海 簡単なことはもう既にないゲームのチュートリアルで五回死んだり 心臓の真上でナイフを止めたまま生きているような朝の味噌汁

          連作 選択肢もうないんだよ、

          連作 ありがとう、夜が

          まっすぐに君に向かってありがとう、夜が滲んだ落涙だった イヤホンをまた充電し忘れてるとき車窓にはわたしはいない 照明のスイッチを押すための目の潮位はあがって生温い頬

          連作 ありがとう、夜が

          連作 心の荷物

          睡眠は救いとおもう海底の底から見上げるほのかなひかり 生きていることが足枷 春の野に咲く花々を踏まずに歩く 振れ幅の大きさ わたしひとりではもう持ち上がらない心の荷物

          連作 心の荷物

          連作 ひかりの波止場

          どこまでもひかりの波止場のはつはるの花であふれる駅のポスター 口角をあげればきっとたのしくてミモザみたいにうれしい手帳 春からはまだまだ遠い夏の駅徐行運転で進むよわたしも

          連作 ひかりの波止場