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映画『マイエレメント』から考える(ストーリー&海外移住編)

子ども向けの映画だと思って侮っていたら、心を鷲掴みにされたのが、8月4日から日本でも公開されている『マイエレメント』という映画。

普段は映画館に足を運ぶなんてこと、ないんですよね。オースラリアに住んでいるから日本語字幕で見れないし、大音量や激しい映像に疲れちゃうし。お金払って7割ぐらいしか分からないから、もったいないって思っちゃってました。

でも、この『マイ・エレメント』は大きなスクリーンで見たかったんですよね。しかも、一人で。そしたら、期待値以上!!他の観客たちが早々と去っていくなか、エンドロールを最後までしっかり堪能。掃除にきたスタッフのお姉さんを待たせてしまったほど。

あらすじについては、こちらの予告動画をチェックしてくださいね

オーストラリアでの公開は6月〜7月。なので、観たのは少し前です。日本でも『マイ・エレメント』ブームが来ているらしいので(私の周り調べ)記憶を辿りながらnoteに感想をシェアすることにしました。

前半では①純粋なストーリーの面白さ②海外移住して15年経った立場、そして後編では③占星術の四大元素の視点、という3つのポイントに分けて語っていくつもりです。ネタバレ満載、超個人的で妄想たっぷりのコンテンツ語りですが、良かったらお付き合いください。

まだ映画をご覧になってなくてネタバレNGの方は、戻るボタン等でこのnoteを閉じてくださいね。映画を見終わってから、ぜひまたお越しください。



「火」と「水」の恋模様にキュンキュン

アニメの力はすごいですね。メイン・キャラクターは「火」と「水」なのに、人の形をしているからなのか何なのか、もう主人公たちの気持ちに「分かる〜」と共感しっぱなし。

ちなみに、英語で「分かる〜!」は "I can relate to that person!" "I can relate to this so much!" なんていう表現を使います。"I understand" よりも、自分も経験しているからこそ共感できるという感じでしょうか。

火のエレメント・エンバーちゃんと水のエレメント・ウェイド君。全然違う性質で、ともすればお互いを消しかねない間柄。でも惹かれあってしまう。

ウェイドは紳士。どこにも行かず、ずっと「火」の街で暮らすのが普通だと思っていたエンバーに新しい世界を見せるのです。エンバーが本当にやりたいことを見つける後押しをしてくれるのです。

予告編にもありますが、鉱石の上を歩くと鉱石の色に反応してエンバーの身体の色が変わるシーンが好きです。その後、ウェイバーが湖の上をスライディングして虹を作り出すところも。色のダンスを見ているみたいでした。

エンバーが作った熱気球に乗って、ウェイバーと二人で問題の原因となってる箇所を空の上から探すシーンも好きです。目的はシリアスなんだけど、空中散歩というか空の上のデートみたいで心踊るんですよね。

ウェイドはとにかく自分の気持ちをストレートに伝えてるんですよ。何度も。デートに誘うのも自分からイニシアチブを取ってるし。

エンバーは本心を押し込めちゃってるんですよね。恋愛にしろ将来の夢にしろ。もうさー、エンバーの煮え切らないというか、好きなのに好きじゃないって言っちゃう感じが「素直になれよ!」って言いたくなる。


「火」の人たちは移民のイメージ

予告編を見たときは、四つのエレメントそれぞれがお互いに他のエレメントと交わらないようにしているのかと思ってました。でも、実際に観てみるとエレメント・シティでは「水」と「土」と「風」は上手く共存している印象でした。

「火」だけが隅に追いやられてる感じ。

よそ者に家は貸せないぜ

エンバーの両親が初めてエレメント・シティに移住した当初、誰も家を貸してくれません。

移民でオーストラリアに来た人たちが初めて家を探すときも、かなり難しいです。日本でも外国人に家を貸すのを渋る大家さんも多いと聞きます。

知り合いが誰もいなくて、保証もないから。

こちらでは、借りるための審査に、過去に家を借りた時の家賃支払い履歴が必要です。でも、初めてこの国に来た人は、そもそも家を借りたことがないのだから、支払い履歴なんてあるわけがないのにね。

こっちの文化に同化しろ

エレメント・シティの入国審査のようなところで、エンバーの両親は名前をちゃんと聞き取ってもらえません。言葉が違うから。そのため、審査官が勝手に名前を変えて住民登録してしまいます。

これも、中国、東南アジア出身の人たちがこちらで英語名を使うのと似ています。なぜなら、ちゃんと発音してもらえないから。私も最近は日本語の本名と一緒に英語名を名乗ることも多いです。カフェのオーダー名は全部イングリッシュネームです。

私は好きで名乗っているからいいんですが、勝手に名前を変えられるのはアイデンティティが揺らぎますよね。自国の言葉を話すな、この国の言葉を話せという同化政策も現在の多様性とは全く真逆。少し前までの移民の人たちは今よりもっと大変だったんだよなと想像しちゃいます。

排他的な社会での不当な扱い

小さい頃のエンバーがお父さんと特別な花(確かファイヤーフラワーだったかな?)の展示を見に行こうとしたら、入場できませんでした。「火」はお断り!と門前払いされてしまいます。

「火」だからダメ!というのは、人種差別を彷彿とさせます。ファイヤーフラワーなのに「火」の子が見れないのはなんで?って憤りを感じるシーンです。

基本、「火」は「水」を蒸発させ「土」の身体(=木)を燃やししてしまうので、嫌われています。あれ?「風」も「火」が嫌いだったっけ?ちょっとそこら辺の設定は覚えておりません。

コリアンタウンやチャイナタウンを彷彿とさせる街

エンバーのお父さんが作ったお店を中心に「火」のエレメントの仲間たちが集まって街ができたというストーリー。

このお店に行けば自分たちが必要なものは何でも揃う。となったら、その近くに住みたくなります。同じ人種だから分かり合えるし支え合える。なんか、チャイナタウンやコリアン・タウンみたいですよね。

それもそのはず、ピクサーのピーター・ソーン監督は、韓国からアメリカに移住した両親のもとに生まれた方だそうです。

監督の手紙を読むと、ご両親は新天地で苦労されたんだな、でも子どもたちとの時間も大切にされてたんだなということが伝わってきます。

ディズニー・スタジオ(アニメション)公式より

私もアニメーションだと優しい英語だし、イメージしやすいから、かなり理解できるので今回の映画も楽しめました。監督のご両親の立場、よく分かります。


大人の映画の楽しみ方

…と、こんな感じで映画『マイ・エレメント』を考察してきました。

物語に込められたメッセージや背景知識を想像するのは楽しいです。

これは〇〇から取ってきたんじゃないかとか、このシーンはあれを参考にしたんじゃないかとか。生きてきた分だけ経験値や知識を蓄えている大人だからこそ、ストーリーを楽しむだけじゃもったいない。

何層にも重なった味わいがある映画『マイ・エレメント』。③「火・風・水・土」の世界観についてのnoteは、後編で。


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