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『肉中の哲学』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの文脈で読む(6)第五章 前半 ~p.82

 第四章では、体験や判断と感覚運動体験の融合から生まれる「プライマリー・メタファー」の特徴を検討した。著者たちは、人間の思考において重要な位置を持つと考えている。

 「プライマリー・メタファー」は重要ではあるが、実際の人間の思考はさらに複雑であることが多い。著者たちは、プライマリー・メタファーを組み合わせた複合メタファーを生み出し活用しているとする。複合メタファーについての考え方が第五章の中心的なテーマとなっている。

 本書では、「目的のある人生は一つの旅である」というメタファーが紹介されている。
 これは、実は複合メタファーである。
 「目標は目的地である」
 「行動は運動である」
 上記の2つの「プライマリー・メタファー」から成り立っている
 さらに、「人は人生において目的地を持っており目的に向かって動いていく」という文化的信念が入り込んでいる
 そして「一連の目的地に向かう長い移動のことは旅と呼ばれている」という知識(ここでは旅の定義)がそこに重なっている

 そして複合メタファーである「目的のある人生は一つの旅である」は、上記の成り立ちを経て、4つのサブ・メタファーを含むことにもなる。
 旅 → 目的ある人生
 旅人 → 一つの人生を生きている人
 目的地 → 人生の目的
 旅行計画 → 人生設計

 そして、メタファーを使う人の頭の中にある「旅についての知識」が、人生のガイドラインへと転化するような形で、推論を展開できる(「人生が旅であると感じる経験が無くても考えることができる)ことになるのである。

 この文化的信念という要素は興味深い。この「人は人生において目的地を持っており目的に向かって動いていく」という文化的信念のない世界では、人は自分の人生をただ生きているだけのため、人生に迷いや停滞などもなく、結果としてこのメタファーは生まれないし、推論も展開しない。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドとの関連性

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで使われるメタファーにおいても、モデルに使われる要素(例:旅、人生)に関する知識文化的信念も含んでいることには注意しておきたい。
 「旅」をメタファーで使っても、それに関する知識がなければメタファーは豊かにならない。知識不足でメタファーが上手く展開されないということもありうるのである。象のレゴブロックを使っても象の生態に対する知識が乏しければ、想像は膨らまないのである。
 またどのようなメタファーを使うのかを見る中で、その人がどのような文化的信念を持っているのかを見て取ることができるかもしれない。その把握はそれに自覚的になることで、発想の転換や問題の解決へとつながっていく可能性もあると思われる。

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