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『学習する組織』をレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの文脈で読む(23)第Ⅳ部 第17章「「学習する組織」の最前線」 p525~

 本章で第Ⅳ部の最終章となる。センゲが、今後どのような領域においてリーダーが生まれ、次の世の中を作っていくのかについて見解を述べている。

 本書は英語版が2006年に出版されているので、そこから15年以上経つことをふまえて読んでいくと非常に興味深い。

新しい「学習の定義」

 この章で最初に扱われるのが、新しい学習の定義である。
 これまでは、センゲは自らが主催するSOL(Social for Organizational Learning)が採用する以下の「学習の定義」を扱ってきたという。

 学習とは、個人として、集団として、学習者(たち)が心から創り出したい結果を実現するための能力を向上させるプロセスである

『学習する組織 システム思考で未来を創造する』526ページより

 そこから、さらに以下のより簡潔な「学習の定義」に出会って、そこに今後の可能性を強く感じていくことになる。

 自然界のパターンを発見し、体現する

『学習する組織 システム思考で未来を創造する』526ページより

 2つを比較すると前者が人間の理想に向かうものとして学習を考えているのに対し、後者は自然の在り方に向かうものとして学習を考えている。

 そして自然のパターンと矛盾しないマネジメントの体系を開発することがこれからより重要になってくることを指摘している。それは人間の本質に沿った生き方を目指すものでもあるとセンゲは指摘する。

次世代のリーダー

 次にこれからの社会を導くリーダーがどこから出てくるかについて述べている。それは「女性」、「貧困地域の人々」、「若者」である。
 つまり、これまでの社会のリーダーが出やすかった「男性」「豊かな地域の人々」「年配者」とは全く異なる(ほぼ真逆の)セグメントに、センゲは次の社会の可能性を見出しているのである。

3つの敷居

 最後に「学習する組織」を実現させるポイントについてセンゲは語っている。それは、取り組む人の「知力」や「熱意」ではなく、「心のあり方」であるとセンゲは指摘している。

 その「心の在り方」は3つの敷居を通っていけるかである。

一つ目の敷居:自分を解放して当たり前だと思ってきたことの受け入れを保留する心

二つ目の敷居:心を開いて問題と自分との関係を見ること

三つ目の敷居:自己を手放し、自分のなかで生まれつつあるものを助けること

 である。これはU理論で示された変化のプロセスそのものである。

 このプロセスをまず実践できる人がリーダーとなり、人々に「学習する組織」の実現を導ける人物であるといえる。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドに何ができるか

 一つ目の「学習の定義」についてであるが、SOLが採用してきた定義であれば、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークは、強力にそのお手伝いができる。人々のビジョンを見える形にし、人々のビジョンを一つの物語へとまとめていくプログラムを提供できる。

 さらにその先にある「自然界のパターンを発見し、体現する」という学習の定義にいくらか関連しそうなプログラムとしては、自分の生きている世界をシステムで表現し、そこに未知の変化を起こし、影響が伝播するパターンを考察していくリアルタイム・ストラテジーというプログラムがある。
 
 そのプログラムが最終的に生み出すのはシンプルな行動指針というものである。このシンプルな行動指針が「自然界のパターン」に沿ったものにもなっているように、参加者のワークをファシリテートすることは難しいが不可能ではないと感じられる。

 リアルタイム・ストラテジーをアレンジして、新しい学習の定義に沿うような活動を生み出すプログラムを作ることは、私にとって大いにチャレンジしがいのある課題だと感じている。

 二つ目に扱った新たな時代のリーダーが出てくる領域の人々に対しては、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークショップを積極的にデリバリーしていきたいと思っている。

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークを通じて、その人たちの間でのコミュニケーションを円滑にし、「学習する組織」が生まれることを後押しできるような機会を作っていくことは、私ができる社会的貢献の一つである。

 最後に触れた「U理論」のプロセスについては、個人的にレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで体験できるプログラムを開発している。その解説や方法については稿を改めて紹介したい。



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