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語られるストーリーを生み出すためのレゴ🄬シリアスプレイ🄬というアプローチ

 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの2024年2月号に「企業文化の変革はリーダーがストーリーを語ることから始まる」という論文が掲載されている。
 この論文は複数名で書かれているが、その筆頭著者は、戦略論の大家であるジェイ・B・バーニー教授である。

 バーニー教授は、組織の経営資源を評価し、競争優位性を構築する戦略を導き出すための「VRIOフレームワーク」を提唱したことでも知られている。

 この戦略と合わせて重要なものが企業文化であるといわれる。戦略と企業文化が一致せねば、従業員はうまく動かず実行力は落ちる。そのとき、企業文化の変革が求められることになるとバーニー教授らはいう。

企業文化の変革はストーリーから始まる

 それでは企業文化の変革はどこから始まるのか、ということが本論文の最初の問いである。リーダーや責任者への聞き取り調査の結果、成功した企業文化の変革の多くは、リーダーが「ストーリーを語ること」から始めているということである。

 良いストーリーの特徴としては、以下の6つのポイントがあるという。

 1.本物のストーリーである
 2.ストーリーに自分を登場させる
 3.過去を切り捨て未来に向かう道を示す
 4.社員の感情に訴えかける
 5.劇的なストーリーにする
 6.社員にも自分のストーリーを語らせる

 どのポイントも大切であるが、特に1の「本物」には、ストーリーが実際のことであることと同時に、ストーリーが語り手の価値観や信念を反映していることが重要となる。
 そして、その価値観や信念が自分のものであること(項目の2)、古いものとは異なる価値観や信念であること(項目の3)が内容的に求められるということである。

 項目の4と5は「ストーリーの示し方」についての特徴である。4は共感を引き起こすようにすること、5はストーリーが忘れられないように強いインパクトを持たせることである。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使って作り出されるストーリーとは

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークでは、ワークの目的に合わせた「問い」に合わせてレゴ🄬ブロックのモデルを作ってもらう。

 ワークの目的が「企業の文化を変革する」ということであれば、「現在の会社が、今後も生き残っていくために、必要な考えはどのようなものでしょうか」などという問いが考えられる。

 そうして作られた作品には、作り手の価値観や信念が反映される。直接、良いストーリーや言葉が浮かんでこなくても、手を動かしてイメージを大事にしながら作品を作ることによって、自分が考えていることが一定程度、可視化される。もし、組織のリーダーがブロックで作品を作れば、そこに自分の価値観や信念を見ることができる。

 組織リーダーの作品に出てきた価値観や信念が旧来のものと変わらない場合もあるかもしれない。ここで大事になるのが、取ろうとしている戦略と信念や価値観の一致である。価値観や信念をモデルで明確にすることによって、戦略との一致について確認する機会を得ることができる。

 その作品をリーダーが従業員に見せて語れば、従業員はリーダーの考えていることを知ることができる。
 ただ、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの作品では、感じていることや考えていることがそのまま素直に出てくるため、作品の説明としてのストーリーはドラマティックなものであることはほとんどない
 ただし、素直に自己開示をした語りをすれば、自然と共感への道は開けてくる。そのような雰囲気をつくりだせるかどうかは、ワーク実施におけるファシリテーションの問題であるといえる。

 同じように、従業員も同じ問いに対してモデルを作り、語る機会が与えられれば、皆が自分のストーリーを語ることにつながる。企業文化の変革を目指すならば、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークは、組織全体で取り組むべきものである。

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークで作られる作品とそこから出てくるストーリーは、ドラマティックさが誇張されたインパクトのあるストーリーではない、そこだけがこの論文の条件から外れているが、自然で静かなストーリーであっても聞く側が、傾聴の姿勢を持てば十分に力をもつ。聞く側の態度をファシリテーションの力で作り上げることがポイントとなるといえよう。

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