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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(14)25/10クラウド・ソーシング

 今回取り上げるのは「25/10クラウド・ソーシング」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

 30分以内に、大勢の人が大胆なアイデアを出し合い、分類するのを助けることができます。25/10クラウド・ソーシングを使えば、イノベーションを「どんどん」広めていくことができます。楽しくて、早くて、カジュアルな方法ですが、真剣かつ有効な方法で、大胆なアイデアを生成し、グループ全体の知恵を結集してトップ10を特定します。驚きの連続です。

”LS Menu 12. 25/10 Crowd Sourcing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 短い時間で参加者全員でアイデアを出していき、参加者が主体的に採点に参加して良いものを絞り込むという手法である。
 「25/10」という表現は、次の項で進め方を見ればわかるが、参加者全員で出したアイデアを「25」点満点で採点していき、そのうちのトップ「10」を選んでいくという流れを表している。「クラウドソーシング」は「群衆から湧き出る知恵」というような意味合いである。

5つの構造要素

1.始め方
・参加者に、大きく大胆に考え、最も魅力的なアイデアを一緒に発見するよう誘う。「もしあなたが10倍大胆になったら、どんな大きなアイデアをお勧めしますか?始めるためにどんな最初の一歩を踏み出しますか?」と問いかける。

2.空間の作り方と必要な道具
・椅子やテーブルのないオープンスペース。
・参加者は、立って、歩き回ります。
・インデックスカード(参加者1人につき1枚)。

3.参加の仕方
・全員が参加し、同時に参加する。
・誰もが平等に貢献する機会を持つ。

4.グループ編成の方法
・各自が大胆なアイデアと最初の一歩を生み出し、インデックスカードに書き込む。
・全員が立ち上がり、カードを回す。
・ペアで意見を交換する。
・参加者が手にしたカードを各自で採点する。
・グループ全体で、最終的な最高得点とアイデアを共有する。

5.ステップと時間配分
・プロセスを説明する。3分
 「まず、参加者全員が、自分の大胆なアイデアと最初の一歩をインデックスカードに書きます。次に、参加者は周囲を回り、カードは人から人へ渡される。「ミル&パス」のみ。読まないでください。ベルが鳴ったら、カードを渡すのをやめ、ペアになり、手にしたカードについて考えを交換します(「何も話さずにカードを読むことです」としてもよい)。次に参加者は個々に、カードに書かれたアイデア/ステップを1~5点(1点は低い、5点は高い)で評価し、カードの裏面に書き込みます。これを 「リード&スコア」と呼びます。ベルが鳴ったら、2回目のカード回しである「ミル&パス」を行います。再びベルが鳴って 「リード&スコア」の採点サイクルが繰り返します。これを合計5回の採点ラウンドで行います。5周目を終えたら、参加者は最後に持っているカードの裏にある5つの得点を足します。最後に、上位10位のアイデアを特定し、グループ全体で共有します。」
・カードを読まず、人から人へカードを渡すだけで、各人が1枚のカードだけを手にする。人によっては、このプロセスに戸惑うかもしれません。2分
・参加者に、自分のカードにビッグ・アイデアと最初のステップを書き込んでもらう。5分
・3分間の交換と採点のラウンドを5回行い、その間は雑談(と笑い)の時間を設ける。15分
・参加者に、持っているカードの裏面にある5つの得点を足してもらう。
・カウントダウンを行い、最も得点の高いアイデアをグループ全体で見つける。「25点を持っている人は?」と尋ねる。25点のカードを持っている参加者がいれば、そのアイデアとアクションステップを読み上げてもらう。「24点の人」「23点の人」...と続けていく。上位10個のアイデアが確認・共有されたら終了。5分
・最後に「25/10をするなかで何が気になりましたか?」と尋ねて終了。2分

”LS Menu 12. 25/10 Crowd Sourcing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「全員で何かを考えアイデアを出す」というじっと座って考え込むというイメージとは真逆で、会場を動き回りつつ、テンポよく進む(3分ぐらいでどんどん場面が転換する)。ワークの全体像がよく分かっていないと「戸惑い」が生じやすい
 そのため、最初にこのワークの狙いと「ミル&パス」や「リード&スコア」などのステップをしっかりと参加者全員が理解できるように配慮することがポイントとなる。

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・グループの多様な知恵を素早く活用する力をつける。
・内部から透明性をもって生み出された、永続性のある結果を得ることができる。
・多様な意見の相乗効果と一貫性の構築。
・初心者が大胆に考え、実践的な第一歩を踏み出し、検証可能な仮説を立てることができるようにする。
・良いアイデアと集中的な実験が湧き出るような環境を作る。

”LS Menu 12. 25/10 Crowd Sourcing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 良いアイデアを出すことも大事だが、中長期的に考えれば、全員がアイデア形成に貢献しようとする態度を作ることがより重要である。
 このLSには、よいアイデアを考えることに自身の無い人であっても、採点やちょっとした気づきを加える機会が上手く織り込まれていることから、全員がより主体的に参加できる環境や文化をつくるという狙いが込められている。

コツとワナ
・採点が不規則なものもあるかもしれません。ラウンド5終了時に、5回以上採点されたカードがある参加者がいた場合、その参加者に点数の平均を計算させ、この平均に5を掛けてもらう。
・グループに1つの大きなアイデアと最初の行動ステップを選んでもらい、それがさらに明確で説得力のある表現になるように修正する。
・例えば、「1=あなたの好みではない」から「5=私の好みだ」まで、楽しく、かつ明確な評価尺度を提案する。評価システムが意思決定に使用されるためには、観客が理解し、同意する必要があります。
・交換や採点のやりとりを始め、実演しながら、特に大人数の場合は、時間をかけてフィードバックを求めましょう。
・それまでのラウンドの採点が見えにくいように、カードの裏を付箋で覆う。
・すべてのカードを壁やタペストリーに貼り、得点の高いカードが上になるようにする。

”LS Menu 12. 25/10 Crowd Sourcing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 上記でも述べたが、手順が簡単なようでいて混乱する人が多いとのことで、それを防いだり、混乱が生じたときの対応方法をいろいろと用意しておくことがポイントになりそうだ。

 繰り返し方とバリエーション
・アクションプランの作成に移行するか、トップ10とともに「オープンスペース・テクノロジー」に移行する。
・検証可能な仮説を持つアイデアや実験に、より多くの加点要素を与える。 「あなたのアイデアがうまくいくことを示す証拠は何ですか?」「そのアイデアをどのように検証しますか?」
・「25/10クラウド・ソーシング」の第二ラウンドを、現在のグループ以外の人も含めて行う(これもクラウドソーシングとして知られています)。
・会議の最初と最後に「25/10 クラウドソーシング」を取り入れる。
・トップ10を「合意ー確実性マトリクス」や「エコサイクル・プランニング」で配列する。
・大胆なアイデアを求める代わりに「もし、あなたを妨げている意思決定を1つ取り消すことができるとしたら、それは何ですか?それを解除するための最初のステップは何ですか?」と尋ねる。
・大胆なアイデアを求める代わりに「あなたがしていない勇気のある会話は何ですか?あなたの勇気に火をつける最初の一歩は何でしょうか?」と尋ねる。
・大胆なアイデアを求めるの代わりに「将来、どんなことが起こればいいと思いますか?この方向にバランスを変えるために、今できる実用的な最初の一歩は何ですか?」 と聞いてみてください。

”LS Menu 12. 25/10 Crowd Sourcing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「オープンスペース・テクノロジー」「合意ー確実性マトリクス」「エコサイクル・プランニング」もLSである。別の機会を改めて紹介したい。

 また、基本の問い(「もしあなたが10倍大胆になったら、どんな大きなアイデアをお勧めしますか?始めるためにどんな最初の一歩を踏み出しますか?」)のバリエーションを持っておくことで、応用場面はさらに広げることができる。
 「何かを止める」については、別のLSである「TRIZ」との組み合わせが役に立つだろう。LS「TRIZ」については以下の記事で紹介している。

事例
・「オープンスペース・テクノロジー」や「アンカンファレンス」(参加者主導型)ミーティングの後、アイデアの優先順位を決め、コミュニティを活性化させるのに使用します。
・会議やタスクフォース会議の冒頭で、大胆なアイデアを明らかにする。
・重要な会議のまとめに。
・グループメンバー間でアイデアを共有し、絆を深めるためのクロージング・サークルに。第3部「現場からの声」の「医師教育のためのコンピテンシー開発」をご覧ください。 

”LS Menu 12. 25/10 Crowd Sourcing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 第3部で紹介されている「医師教育のためのコンピテンシー開発」では、前半は別のLSである「DAD」で、問題の分析と基本的な解決アイデアの方向性を共有したのちに、最後にこの「25/10クラウ・ドソーシング」を使って、より具体的なアイデアへと結晶化させていった事例となっている。

 このような解決策を考える場作りでは、問題の分析や基礎知識の共有を参加者間でしっかりと行なっていくことによって、よりよい成果が出ることを忘れてはならない。その意味でも他のインプット・分析系の取り組みと組み合わせたり、まとめ的な位置付けに持ってくるのが良さそうだ。

 また「DAD」というLSについては以下の記事で紹介している。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドは、人々の中に眠っている経験を知識という形で表現させ、お互いにそれらを組み合わせて新たな知識を作ることに優れている
 また、頭にあるアイデアは、基本的に視覚的なイメージが先行しているはずなので、文字よりもより良く他の人に自分のアイデアを表現できる。

 一方で、出された多くのアイデアを相互に評価していく、絞り込んでいくという点については、まだメソッドとして十分に熟していない。

 それぞれのアイデアをつなげ、配置することで、より大きな見取り図を構成していくことはできる(メソッドも確立されている)。ただし、つなげたり、配置していけるのは元になるアイデアの数がそこまで多くならない範囲である。
 個人的な経験の範囲であるが、多くても15個ぐらいまでであろう。このアイデアの数については、それ以上の関係性を考える場合、参加者にとって複雑さの方が優ってしまう(そのワークで得られることが少なくなる)と思われる。

 つまり、参加者が多くアイデアの数を上手く絞り込む必要があるときには、アイデア・モデルをカードへと文章に落とし(できればモデル写真付きで伝えたい)、この「25/10クラウド・ソーシング」へと繋いでいくという方法が考えられる。

 もしくは、アイデア・モデルを展覧会のように机の上に並べランダムに人々に作品の前に立ってもらいコメントと点数をつけてもらうことを繰り返す(5ラウンド)方法もあるだろう。

 上記のようなことを考えていけば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使ったアイデア創出のワークにおいて組み合わせて活用すれば、よりよい結果を導ける可能性がある。

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