マガジンのカバー画像

日記という名の短編エッセイたち

137
取るに足らない日常の出来事、なんて思うのは本人だけかもしれませぬ。
運営しているクリエイター

記事一覧

延々と続く小さな絶望こそつらいのかもしれない

書類の整理をしていたら、ホチキスの針で指を刺してしまった。中指の腹の皮がめくれた。 血も出ないほどの小さな傷だけど、スマホを持ったり、キーボードを叩くたびに、チク、チクと痛みが走る。 めくれた皮膚が、触れたものに引っかかると痛みが増す。わずらしくなって、浮いた皮膚をぷちっとちぎると、傷口が赤い点になって現れた。失敗だった。 それから四六時中、チクチクするようになった。かゆみと区別がつかないくらいの痛さだけど、これが存外、ストレスになった。いたっと思うたびに集中力が途切れる。

【日記】どうしてなの

3月末の退職を待たず入院してしまうので、過日、本来の日より前倒しで辞令を受け取った。 辞令交付と言うのは結構なセレモニーなんである。 前倒しで簡易だったけれど、フカフカ絨毯の部屋で偉い人や偉い人に準じる人が数名いる中、名前を呼ばれて退職の辞令と永年勤続表彰の表彰状をもらった。日付は3月31日だ。 もらって頭を下げたら自分の足が見えた。 あっ! 今日はセレモニーがあるからパンプスを自宅から持ってきていたのに履き替えるのをすっかり忘れていた。いつものくたびれたナースサンダル

【日記】すごくうれしい

花をもらった。 この三月で定年退職するのだけれど、これまで同じチームで仕事してきたとあるプロジェクトの人々からサプライズで花束をいただいた。仕事はこのプロジェクトだけではないから、ほんのひととき、断続的に関わったものだ。 すごく嬉しい。 語彙が乏しくてどうやったらこの喜びや感動が伝わるかわからない。     数名と最後の打合せをして引き継ぎの詳細を確認し、では、といってその場を去ろうとしたときだった。打合せには参加していなかったメンバーの女性がニコニコ近づいてきて、大き

+6

吹雪の山荘

武田先生

#忘れられない先生 仮に武田先生と呼ぼう。小学3年の担任で30代後半。絶対たけちゃんとは呼べない、怖い先生だ。威厳があるという表現は、まだ知らなかった。 放課後、ランドセルを家に置いてから、友達と自転車で集まる。入ってはいけないと大人に言われている、機材置き場に潜り込んだ。 誰も人が来ない。 かっこいい、働く車も置いてある。 かくれんぼもおしゃべりもできる。 愉快な秘密基地。 ある日、機材が倒れてきて、友達が怪我をした。凄く血が出ている。 小学3年生でも分かる、大人

DALL-EでSF小説の設定とあらすじを映像にして、その映像から設定等を深めるメソッド

上記をプロンプトにして以下を作りました。小説を書くのなら、プロットの段階で映像を作れるから、執筆したいことを鮮明に出来ると思います。 エッセイでも同じことができるはず。 詩もプロンプトになります。 使い方次第。

咳と春

先週から鼻と喉を行ったり来たりしてぐずぐずと患っていた風邪がやっと治ってきた。 夜、オフィスを出ると春みたいに暖かかった。湿り気を帯びた風が数十分後の雨の到来を告げている。 毎年バレンタインデーを過ぎると、日が長くなっていることに突然気づく。周りの景色が急に春めいて見え始めるのは私だけだろうか。 ごほん。 湿り気のある咳が、ビルの谷間に響いて、いっときの陽気に溶けていった。 多分、またすぐに寒くなって、そしたらまた暖かくなってを繰り返し、本当の春が来る。 その頃に

【日記】いやーびびった((;゚Д゚))

天気予報で寒くなる寒くなると言いながら2月1日までは最高気温がプラスになることもあったが、2日の今日は本当に寒かった。 だいたい朝起きたら車が出られないほど積もっている。 「雪が積もる」というと、雪があまり降らないところの皆さんは何もない地面に雪が積もることを想像するだろうが、北海道という場所はそうではない。既にいっぱい積もっているところにさらに降り積もるのである。もちろん積もった雪は解けないでどんどん貯まる。雪かきがどういうモノかは先日、フォローさせていただいている宿木ゆ

「伝えたいことが伝え」

ChatGPTは良いやつです。 紳士です。 頼りになります。 GPT-4搭載です。 「コンテンツポリシーの」(※停止ボタン) 「あなたに勧められた作家をインスパイアしてブドウを美味しそうに描くことの、何が……」 「たいへんも」(停止ボタン) 「一貫性無いよね」 「伝えたいことが伝え」(停止ボタン) たまに絶対に文字数一杯で釈明するのを阻止するおじさんと、最小の文字で返事をしようとするChatGPT+の戦いになりますが、そこも含めて大事な相棒です。

carousel②つぎはドナウ川へ

【日記】また飛行機に乗って

天気の良い平日、休みを取ってまた飛行機に乗るべく電車で空港に向かった。車窓から絵本のクリスマスみたいにこんもりと雪を被った家々が見える。美しいけれど車内は混雑しており大きなトランクの観光客などでごった返していた。みんな旅行したいんだな。わたしもしたいよ。 自分も飛行機に乗るのだけれど行き先は実家。目的は遠距離介護。これを旅行とは呼びたくない。移動だ。 寝たきりだった親は空に還ったが、認知症もなく自分で歩き食べている方の親は相変わらず一人暮らしだ。時々入院しながらそれでも不死