見出し画像

家から一歩も出ていない

 時刻は午後11時である。眠くはないが、やる気もなかった。しかし、つい一昨日に毎日何でもいいから書くと決めたので、渋々とMacBookを開く。朝が私よりも早い旦那さんが、換気扇の下で寝る前の煙草を吸い出して、私は座ったままで一吸い貰う。それが自分の中に落ち着くのを待って、ようやくキッチンに細く煙を吐き出した。そして、僅かな、くらり。普段煙草を吸わない私にはこれで充分。二吸い目が欲しいなと思った時には既に旦那さんは歯を磨き終えて後ろの寝床に潜り込んでいる。
 書くべきは提出期限が迫るエッセイの方だと思うのだけど、いざ行動を始めようと思うと今の自分の頭の中に浮かぶことを書くほうがよっぽど簡単だ。何かを書くと決めてから、私の脳内は常に誰かに向けて現状を語るようになった。書くことを前提にしていると、些細なことでも自分の心情や行動を頭の中でいちいち言葉で説明しているのである。ただ、これは今に始まったことではない。常にずっと自分は自分自身と語り合ってきたし、信じられないほどの言葉ーーもしかしたら台詞を自身の脳内に留め続けてきた。映画や小説に影響を受け過ぎているのかもしれない。でも、もうずっとこうなのである。だから時々頭が爆発するような気分になる。書き出そう、吐き出そうとは何度もしてきた。しかし続いた試しがないので、気づけば書きかけのノートや更新が止まったブログばかりが残った人生である。
 昨夜は東京に雪が降った。私は夜中の零時までバーで人を待ったが、結局お客さんは一人も来なかった。寂しいものである。ガラス張りのお店から、大粒になったり、横殴りになったり、時々霙雨のように戻ったりする降雪を見るのは何だかロマンティックであった。お店のモニターではメインキャラクターたちが10代半ばぐらいの時期に見える時期のハリー・ポッターを流していて、その服装と画面の地味さに驚いた。小さい頃に観た時は気が付かなかったが、本当に精彩が欠けるのである。くすんだベージュ、茶色、いまいちはっきりしない紺のチェック、よくてオレンジや渋いピンクばかりで、画面が明るくなるのは杖から魔法が飛び出す時ぐらい。ハリー・ポッターシリーズのファッション特集など観たことがないのはこのせいかと納得をした。一瞬映ったマルフォイのプラチナブロンドと黒を基調として緑でしめるようなルックがとても素敵に見えたのは、グリフィンドール勢がみんなおばあちゃんの箪笥に入っているような服ばかりきているせいに違いない。もしかしたら私は明日ハリー・ポッターファンに刺されるかもしれない。
 まだ白くて綺麗だけれど、じゅくじゅくの雪で足元が悪い中、家に帰って持ち帰ったまかないを食べた。いつもまかないを頼んでおいてくれるオーナーにはとてもとても感謝している。本当は夕方ごろにラーメンを食べていたのでそこまでお腹が空いていなかった。しかし、食べることで得られる小さな喜びが欲しかった。少し取り分けてレンジでちん。とても美味しくて、結局全て温め直してすっかり完食。揚げられた鶏の胸肉をお酢か何かの酸味のあるソースで味付けしたものと白米であった。夜中の寝る直前に食べるときっと太るし、明日の楽しみが減ると思いながらも、食べ物から得られる楽しさと満足感は素晴らしいなとひとりごちて、蓬大福も半分に切って食べる。私は粒あんが好きで、餅よりも餡が主役なので、皮は薄い方がいいなと思った。吹雪饅頭が好きである。
 寝る直前にこんなに食べて、案の定今朝の私の胃は重かった。旦那さんが出勤前に行ってきますと起こしてくれたのに、八時半になっても布団から出たくない。寒くてトイレにすら行きたくない。昨夜、電気毛布で温めたお布団に既に寝ている旦那さんを押しのけて潜り、頭だけを布団から出して、頬には外の雪の気配のような空気の冷たさを感じレたのはとても良かった。しかし、寒いものは寒い。毎朝、将来お金持ちになったら絶対にセントラルヒーティングの床暖房の家に住んでやると決めている。これは私の極論だが、日本人は寒さに耐性があるに違いなく、そのせいで一般の家庭には建物の内部全体を暖房以外で暖かくする、という考えが浸透しないのかもしれない。祖父母の家のような日本家屋は勿論、暖房やヒーターをつけていない廊下に出ると凍えるほど寒いのが日本の家であり、マンションの一室の仮暮らしでも寒いものは寒い。こんなに夏が暑くてじめじめしていて、冬が寒くてかさかさに乾燥していて、地震やら台風やら噴火やら自然災害が起こり続ける国あるか。なんて住みにくい自然環境なんだと日本列島に生きてきた先祖にも、住み続けている自分にも、蟻のように働き大都市を作り上げた日本国民にも、発展したり停滞したりを繰り返している日本経済にも呆れ返ってなぜ頑張って生きなければならないのか、不毛な問いを脳内で繰り返し、もう時間がない中慌ててシャワーを浴びて会社のパソコンを開き、モニターの電源をいれ午前9時ギリギリに仕事を開始した。在宅勤務の素晴らしさである。ただ、コンタクトレンズを入れる暇がなく、分厚い眼鏡でログインを試みたため、パソコンや会社のシステムの顔認証に何度も失敗し、本当にぎりぎりの時間になって焦って、明日は少しは早く起きようと反省をした。
 昨夜寝たのは遅くないのに、寝ながら消化に胃を酷使したせいか、8時間睡眠ではなく7時間睡眠になってしまったからか、休憩中にコンタクトレンズを入れても午後まで目がずっと重かった。自分の持ってる案件にせっせと取り組みながら、やはり小休憩中にAmazonで近くのスーパーで鍋の具材の豚肉や野菜と豆腐を購入したが、いつまでたっても指定された時間に届かない。仕方なく冷凍うどんを食べたかった無印の養生鍋の素で少し煮込んで食べてから、配送日を明日にしてしまっていることに気がついた。もう一玉食べようか真剣に悩んだぐらいすごく美味しかったけれど、流石に野菜もタンパク質も何も入っていないので身体に悪いなと感じてしまう。
 ミーティングを終え、仕事を終え、神社に電話し、予定している神前式の本申し込みの予約を入れ、その日の有給の申請をし、午後6時過ぎには疲れ切って布団に潜り込んだ。座り仕事をすると、集中する分肩や背中が張り、緊張が解けるまでに時間がかかる。息を着いたところへ旦那さんが帰ってきた。旦那さんも家に帰ってすぐにパソコンに向かいイラストのお仕事に没頭している。旦那さんが買ってきてくれたパン屋さんのチョコパイを食べながら、私はNetflixに上がっていた「不謹慎にも程がある!」をスマートフォンで観ながら爆笑していた。本当に久しぶりの日本のドラマである。そして、またも栄養がないものを食べている。後で作業をしていた旦那さんに私が爆笑してるのは珍しいからびっくりしたと言われた。さすが宮藤官九郎氏。
 さて、私は夜小学生の頃全力で愛した仮面ライダー555の映画を新宿に観に行くかどうか迷っていた。結局、旦那さんに一緒にNetflixのドキュメンタリーを観ようと言われ明日に行くことにして、朝が早い旦那さんが寝るタイミングでこれを書き始めた。
 本当は仮面ライダーへの愛を語りたかったのに、なんだか自分の一日をここまで書いて満足してしまった。書き出すことで、改めて自分の人生も恵まれているなと思えるし、しかし目標との差が明確になるし、ある意味第三者目線でコメディとして消化できるようになるので、頭の中にあるものを外に出せるのは精神衛生上とても良い。
 私は人からの注目が大好きで、わかりやすく結果が出ないとやる気の保持が難しいことは自覚しているので、こういった駄文散文も読んでくれる人が増えるのが理想である。しかし、私の私生活と心情なんて一体誰が読みたいのか知らないし、正直になればなるほど、なんだか世間から甘えったれと怒られるような気がしている。偉そうにとか、贅沢で貪欲だとか、くだらないとか、聞こえてくるのは自分の心の声か。
 noteで読んでもらうには、社会人の通勤時間に合わせるのが良いと読んだことがあるが、毎日続けるのだし、何よりも自分の為に好き勝手に行っていることで、枷が増えれば面倒も増えるので、真夜中に投稿してしまうことにする。書き続けること、投稿することを大事にしたい、まずは第一歩。
 これだけ楽しく書ききれたし、夜はあまり食べていないので、今夜はぐっすりと眠れそうである。これを読んでくださった人がいたら、、、心の底からありがとうございます。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?