静寂の図書室で2人は話す

休憩時間:文化祭準備

10月も後半になり来月の文化祭に向け二週間の文化祭準備期間に入った。
この期間はクラスの準備に充てる為、部活動・委員会活動中止
図書当番も司書さんがやってくれるので気にせず準備に入る。
この高校の文化祭は毎年11月の初めの3日間行われる
各クラスの催し物
文化部の展示会
体育館でのライブイベントなどなど盛りだくさん
学校の装飾もど派手で何でもイラスト研究部と美術部がタッグ組毎年文化祭美術監督会を結成して総力上げているらしい。
クオリティーの高さは年々上がり今では有名なデザイナー・クリエイターがお忍びで見に来てるの本当かな。
県内でも田舎の方なんで芸能人は来ないけど、近所の方や友達も沢山来て大盛況なんだとか。私は今回が入学して初めてなので楽しみが強い
私のクラスは暗闇の迷路でお宝探しゲームをやる
教室を布で覆い暗闇を演出
段ボールで作った迷路の中に宝箱を隠し懐中電灯で見つけて無事迷路から出れたらゲームクリア
商品は文化祭内で使える商品券3枚
時間制限は沢山の方に入って貰うべく3分にした。5分案も出たが待ってる間の体感長く感じるのでは?となりとりあえず3分にして、完成して試しプレーで変更してみようとなった。
難しくならぬようかと言って簡単になりすぎるのもつまらないし・・と考えに考え何とか出来た迷路設計図は、謎解き大好き坂田君が作成
完成品チェックでは皆
すげー
よくこんなん思いついたな
絶対面白いじゃん と大絶賛
勿論今回の制作監督も坂田君になり坂田君の指示で私達1年C組は急ピッチで活動中。スケジュールも順調でこれなら文化祭3日前に間に合うねと言っている。準備期間は学校に夜通し居ていいので交代で家に帰ったり泊まったりしていて何だか楽しい
準備期間6日目土曜日本日私は泊りで作業する番

「かんちゃーんそっちにガムテープある?」
「あるよー何個必要?」
「2個あると助かる」
「了解。今持ってく。」
私の事をかんちゃんと呼ぶのは入学して1か月後放課後本読んでいた私に
「それって堀山新田さんの最新刊?」と声掛けてきた「ごっちゃん」

ごっちゃん改め後藤結城(ごとう ゆうき)
同じクラスの女性
目は切り長の一重で黒髪のワンレンボブ
顔が小さいのでとても似合う。韓国アイドルと言っても頷ける程アジアンビューティーだ
身長は私と同じ158cmで可愛い
性格はずぼらでお昼になると購買へロケットダッシュするその姿は黒ヒョウと呼ばれており男子も追いつかない速さだ。陸上部のスカウトが来たが
「私ご飯買うなら早く走れますが、目的が走るだけなら遅いんで使えません」と断ったの聞いて大爆笑した。確かに体育テストの50m・100m走は遅くもなく早くもないし、学校主催のマラソン大会も学年別で120人中70位とこれまた普通。
「本気出してみたら?」と私が言うと
「最初本気で走るけど、どんどん嫌になってきてさ。だって走り終わったら美味しいご飯無いんだよ?学校からもお弁当出ないしさ~そんなん力出ないわけで遅くなっちゃうの。かっちゃんは早いよね」
「私の家は体育会系だから鍛えられちゃっただけ。てか本当ご飯好きだよね」
「美味しいご飯は生きる希望」
謎の迷言残した友達である。
            ◎
土曜日は大体の生徒が家に帰るため夜学校に残ってる人数が見張り役の先生数人と作業の生徒が見た感じ30人くらい
当番制決める時まずクラスでいつ家に帰りたいか・バイトのシフト日程・泊り作業OK希望を紙に書き提出して担任に提出。それを基に担任が2週間の作業シフト作成し変更や当欠の保険として多めに人数を入れていた。
泊まりOKでは親御さんの許可書が必要なんだが私の両親は
「良いじゃなーい!!青春の香りがするわ~心配せず遠慮なく泊まってきなさい。ね?亜紀雄さん」
「うん 構わないさ。お父さんもその頃は学校に籠って文化祭作業やってたよ~知恵がお父さんと同じ高校の文化祭の準備するなんて嬉しいな。無理せず楽しんで来いよ」
私が言うのもなんだが寛大過ぎじゃない?まあ本人達がそう言うならと希望の紙には、好きに組んで大丈夫ですと書いて提出したんだが
担任に
「親御さんが良いと言ったんなら良いが、本当に好きに組んで大丈夫か?門崎さんと2.3人しかそう書いてなくて申し訳ないから希望聞くぞ?」って呼び出され心配されたけど、私は「うーん特に無いので好きにやっちゃってください」と言い更にびっくりさせてしまった。完成した作業シフト見たら担任の考慮で泊まり連勤の次は休みしてくれていたので嬉しかった。
文化祭準備期間に入る前の図書当番で先輩にシフト見せたら
「ほ~よく出来たシフトだな。後輩んとこは何やんの?」
「暗闇の迷路お宝探しゲームです」
「何だよそれ面白いじゃん!!会いに行くよ。お宝の中身は何だよ」
「楽しみにしてます。中身は内緒です。先輩は何やるんですか」
「俺ら劇やることになった。30分の公演を1日3回やるんだけど3日間全く違う話やるんだよ~俺初日のラスト公演でさ胃が痛くてしょうがない」
「面白そう~何役ですか?まさか王子役笑?」
「おい馬鹿にしてんな?俺は物語の語り部だ。ナレーションみたいなもんだ」
「へえ。なら台本見ながら出来るし楽ですね。先輩声通るし」
「まさにその通る声で推薦されたんだ。でもただ読むだけじゃダメだし感情出していかなきゃダメ!!って宝塚オタクの演劇部のやつの指導が熱い熱い」
「確か宮野先輩でしたっけ」
「そう。あいつ演劇になると本当人が変わるから大変だよ」
初日の16時だから見に来いよ!!先輩はそう言って帰った。
            ◎
作業を一旦休憩し各自ご飯食べて学校近くの温泉に行く人は行き寝る人は寝る自由時間となり、私はご飯と上着持って中庭のベンチに座る
ごっちゃんは学校から家が近いため一旦帰った。
時刻は18時
外の空気吸いたくなり寒いの承知で出たんだけどやはり寒い
お母さんがお弁当だと洗えないからおにぎりと
「寒いだろうしこれでコンビニでスープとか買いなさい」
とくれた1000円札で玄関の自販機で買ったコーンスープを共に食べたら温かくなった。おにぎりの具は梅干しと鮭のハラミだ美味しい
作業の集中力で気付かなかったが相当お腹空いていたらしく無心で食べていたら2階の廊下から誰か手を振っていた。
この学校の中庭は無駄に広い
校長のこだわりで大きい噴水がありそこから花壇やベンチなど置く豪勢さ
敷地も広いので建物の窓から私が座っているベンチまで約100m離れている
そのため視力が良い私でも誰だが分からない
なので誰かと間違っているんだなとほっといたら

「おーい!!後輩だろ!!」

それはそれは聞き覚えありまくりの声だった
先輩!?とびっくりしておにぎり持ったまま立ち上がると
「今から行くから待ってろよ!!」
そう言って先輩は一緒に居たクラスの人になんか話して走り始めた
そんな走ったら・・と思った矢先「大山!!廊下は走るな!!」と先生に怒られてて、すんませーんと言いながらかわしていた。運動神経本当良いな
そうこうしている内に先輩が中庭にやってきて
「はあ、はあ、はあ~着いた~ってずっと立ってたんかよ笑 俺が待ち遠しかったか?うん?」
そこでずっと立ちっぱだった事に気づいて
「違いますよ!!とにかく座りましょう!!」
「またまた~素直になれって~」
そう言いながら先輩は私の隣に座り持ってるおにぎり見つめ
「晩御飯って事はそっちも休憩に入ったのか」
「はい。時間も時間だしようやくです。先輩もですか?」
「ああこっちもようやくだ・・厳しいお稽古から一時開放だよ」
それからお互いの進捗状況話してんだけど
いつも元気100倍のイメージな先輩がぐったりしてる
気のせいか声も少し枯れているのかな
「先輩喉大丈夫ですか?」
「やっぱり枯れてる?稽古だけど本気でついやっちゃうから監督にも今は声量抑えて!本番直前で声出なくなりましたじゃ困るんだから って言われてよう」
先輩適当に見えるけど根は真面目だしそこが出ちゃってるのかもな
「後輩はおにぎり食べて元気になったか?」
「えっ、まあ回復はしてきました。それに外の空気吸いたくて出たんですけど良いリフレッシュになりましたし」
「だからここに居たんだな。見つけた瞬間手振ったのに全然気づかないから声出しちゃったよ」
「嬉しいですが無理しないで下さい。そうだ良かったら」
私はリュックからおにぎりと1つ出し
「お母さん3つ作ってくれたんですけど大きいから2個でお腹いっぱいになっちゃいまして・・先輩食べて下さい。中身は分からないんですけど美味しいのは保証します。」
「確かにでかいな笑 良いのか?実はすげー腹減ってて友達と購買行こうとしてたんだけど後輩が良いなら」
「大丈夫です。先輩この1個で足りますか?」
「足りないからカバンに入ってるカップ麺と一緒に食べるよ。今度お礼させてくれありがとよ」
「そんなつもりは・・」
「俺がしたいんだからさせてくれ、それが大山匡広だ」
なんだそりゃと思いつつフフッと笑ってしまう
確かに義理人情の男だった。
再び2人でどうでもいい話や5日間であった出来事話していたらあっという間に19時でそろそろ戻る時間になった。
「先輩そろそろ戻りますね。あっこれも」
うん?と不思議な顔した先輩の手に私はのど飴を渡す
「本番まで声枯らさないで下さいね。ではまた」
そう言い去ろうとしたら
「後輩」不思議な顔から真剣な顔になっていた先輩
「はい?なんでしょう?」と言ったら

「演劇絶対見に来いよ。これチケット」

今度は先輩が私の手にチケット渡してきた。
目まん丸でそのチケット見つめる私を見て先輩に真剣な表情が一気に崩れた
「そんな目かっぴらいて見つめんなよ笑 でも待ってるからな」
ハッと意識が戻った私は一気に脳内動かし

「はい!!」
人生最大の大きい返事した。
何か妙に嬉しくなって凄い笑ってしまった
その返事に先輩も驚いていたがニヤニヤしながら立ち上がり
「ほら寒いし戻るぞ」
私は頷いて先輩と一緒に玄関に戻った。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?