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JW20 家島と国生み

【神武東征編】エピソード20 家島と国生み


狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行は、播磨灘(はりまなだ)の中央に位置する家島諸島(いえしましょとう)に到着した。

家島到着

ここで、本編の主人公、サノが口を開いた。

サノ「前回の予告通り、家島(いえしま)に着いたぞ! 兵庫県姫路市に編入されている島じゃ。」

三兄の三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)が合いの手を入れる。

ミケ「伝承では、嵐に遭遇して、難を逃れるために立ち寄ったみたいやな。」

サノ「では、嵐が来るのを待ちまするか?」

ミケ「だ・・・大丈夫っちゃ。もう、嵐はコリゴリっちゃ。」

そのとき、目の周りに入れ墨をした大久米命(おおくめ・のみこと)が説明を始めた。

大久米(おおくめ)「この島には、現在、家島神社(いえしまじんじゃ)があるっす。我(わ)が君(きみ)が、武運長久(ぶうんちょうきゅう)と航海の安全を祈願して、天津神(あまつかみ)を祀ったことが由来っすね。」

サノ「天津神?」

大久米(おおくめ)「またまた、知ってるのに~。高天原(たかまのはら)におわします、神々のことっすよ。」

サノ「読者のためじゃ。許せ。」

家島神社1
家島神社2
家島神社3
家島神社4
家島神社5
家島神社鳥居
家島神社拝殿

大久米(おおくめ)「あと、この神社の由緒書によると、家島と名付けたのは、我が君みたいっす。こちらを御覧ください。」

<港内が風波穏やかで、あたかも我が家のように静かであったので「いえしま」と名付けられた>

サノ「そうそう、我が命名したのじゃ。島の人は、覚えていてくれたのじゃなぁ。」

ここで、博学の天種子命(あまのたね・のみこと)が補足説明を始めた。

天種子(あまのたね)「家島の港は、深く入り込んだ湾で、水深もありますよって、船をつなぎ留めるには、絶好の場所にあらしゃいます。天然の良港ですなあ。嵐に遭わんでも、立ち寄ったと思います。」

ミケ「明石海峡(あかしかいきょう)に向けて、船団を整えるためやな?」

家島と明石海峡

天種子(あまのたね)「さすがはミケ様! そういう軍事的理由もあったでしょうな。家島神社がある場所も、天神鼻(てんじんばな)という岬で、明石海峡に通ずる、海の静けさと厳しさの狭間(はざま)のようなところなので、その解釈は素晴らしいですぞ。」

天神鼻

そこへ、小柄な剣根(つるぎね)が乱入してきた。

剣根(つるぎね)「ちなみに、島の人は、家島のことを『えじま』と呼んでおりまする。」

サノ「どういうことじゃ? わざわざ『い』だけを省略したのか?」

剣根(つるぎね)「この島の伝承で、家島は国生み神話にも深い関りがあるとか・・・。」

サノ「なっ!? 国生みっ!?」

剣根(つるぎね)「ただ『い』を省略したのではなく、もともと胞島(えじま)と呼ばれていたとか・・・。」

天種子(あまのたね)「どういうことにあらしゃいます?」

剣根(つるぎね)「国生み神話の個所で『日本書紀(にほんしょき)』の一説に、磤馭慮島(おのごろじま)を以(も)ちて、胞(え)と為(な)し・・・という記載があるのですが、その胞(え)こそ、この胞島(えじま)なのです。」

サノ「おい、剣根よ。説明のようで、説明になっておらぬ。オノゴロ島が何なのか。胞(え)とは何なのか。ちゃんと言わねば、読者は全く意味が分からぬであろう?!」

剣根(つるぎね)「いや、我が君・・・。これには順序というものがありまして・・・。」

サノ「順序が必要なのか?」

剣根(つるぎね)「オノゴロ島とは、国生みで伊弉諾尊(いざなぎ・のみこと)と伊弉冉尊(いざなみ・のみこと)が、一発目に生んだ島にござりまする。」

国生み

サノ「一発目?」

剣根(つるぎね)「そのオノゴロ島を胞(え)と呼んでいるのが、最初に説明した『日本書紀』の記述にござりまする。ちなみに、胞とは、胎児を覆う膜のことですな。転じて、兄という意味とされておりまする。」

サノ「まあ、そういう理由で、胞島(えじま)と呼ばれておるのじゃな。」

剣根(つるぎね)「左様にござりまする。」

サノ「しかし、なにゆえ、転じて兄となるのじゃ?」

剣根(つるぎね)「兄も『え』と呼びまする。中大兄皇子(なかのおおえ・のみこ)など・・・。そういう理由にござりまする。」

サノ「まだ生まれてない者を参考にするでないっ。」

剣根(つるぎね)「まあまあ、その辺はともかく、国生み神話の伝承は、昔から語り継がれていたようですぞ。」

ミケ「家島の隣にある西島(にしじま)の山頂には、イザナギ尊とイザナミ尊が建てた『天(あま)の御柱(みはしら)』といわれる大岩もあるみたいやしな。」

剣根(つるぎね)「その通りですぞ! 頂上岩(ちょうじょういわ)や、てっぺん石、コウナイの石などともいわれている大岩にござりまするが、そういう見方もあるようですな。」

天の御柱1
天の御柱2
天の御柱3
天の御柱遠景
天の御柱近景

そのとき、筋肉隆々の日臣命(ひのおみ・のみこと)が自慢気に語ってきた。

日臣(ひのおみ)「剣根よ! 家島の真浦港(まうらこう)にある大岩は知っちょるか?」

真浦港にある大岩

剣根(つるぎね)「ふっ・・・日臣よ。わしが知らぬとでも・・・。」

日臣(ひのおみ)「し・・・知っちょるんか・・・?」

剣根(つるぎね)「亀の形をした大岩・・・その名も『どんがめっさん』にござろう?」

どんがめっさん

日臣(ひのおみ)「さ・・・さすがっちゃ。」

剣根(つるぎね)「次回は『どんがめっさん』について、説明して参りましょうぞ!」

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