見出し画像

ひきこもり駐妻、現地のパーティーに参加する


私は夫の海外赴任に伴い、ヨーロッパで暮らすアラサーニート引きこもり駐妻。

寒くなってきて、加速してきたひきこもり。

そんな中、事件は起こった。

夫の携帯に、1通のメールが届いた。

送り先はご近所に住む大家さんから。

私の家は長屋のように繋がっていて、中では独立した世帯になっているが、似たような家が十件以上連なっている。

長屋というと狭いイメージだが、そんなことはなく、中の広さは
一軒家なみだし、庭付きの世帯もある。

ヨーロッパでは一般的だが、日本ではあまり見ない住居スタイルだ。

そんな我が家の二軒先のお家の方が、クリスマスパーティーをするので、
私達夫婦を招待してほしい、と大家さんにお願いをした
というのだ。

夫は仕事があり、もちろん参加できない。
人見知りでひきこもりの私を察して、夫婦ともにキャンセルの連絡を夫が返そうとしていた。

でも、
私は葛藤した。

ここで断ったら、もう次は誘ってもらえないかもしれない。
それはそれでいいかもしれないが、パーティーの時間帯を知ってしまった以上、見つからないようにその時間帯をひっそり家で過ごすのは、なんとも情けない感じがする。
ご近所に住んでいるからというご好意で、わざわざ誘ってくれたのなら(そんなに深く考えていないかもしれないが)
それにはお応えすべきではないだろうか・・?

もし今回限りだったとするなら、それはそれで好きに過ごして帰ってきたらいいんじゃないだろうか。

そう思って、夫に、行こうかな。と言った。
夫は少し驚きながらも、私だけで参加すると大家さんに返信してくれたのだった。

現地のパーティーに参加するのはもちろん初めて。
大家さんと連絡を取れるのも夫だけで、パーティーの詳細はわからない。

ドリンクパーティーで、お菓子とドリンクは用意すると書いてある。
参加者の詳細も全くわからないけれど、ワインと日本のお菓子を持っていくことにした。

パーティーまでは、英会話の練習。
ご飯を作る間、youtubeで英会話フレーズのパターンを聞き流し、ひたすら発声。

英語字幕で大好きなチャーリーとチョコレート工場を見る。

パーティーでの会話を連想して、
カンペペーパーも作った。

ドキドキしながら、我が家と同じドアの前で、インターホンを押す。
中で迎え入れてくれたのは、優しそうなおじいさん。

素敵なインテリアとクリスマスツリーがある、温かい家だった。

中にはもうご近所の方たちが勢ぞろいしていた。

英語はしゃべれるの?と主催者の奥様に言われたので
勉強中です、と返した。

飲み物を頂いて奥に入ると、アジア系のご家族がテーブルの上のボードゲームで遊んでいた。

お母さん、お父さんと子ども達三人。

お母さんが話しかけてくれた。

カザフスタン人の彼女は、夫の仕事の都合で移住してきた。
最近働き始めたらしい。

私のことについてもいろいろ質問してくれた。

会社を休職しているため、働けないこと
夫の会社からも、働けないと言われていることを伝えると

それは会社にちゃんと交渉すべきだ、あなたのビザなら働けるわよ!
と言われた。

そして彼女は英語だけでなく、現地の言葉を話せる。
パーティーに来ていた人に、私の事を説明してくれた。

周りの人ともスムーズに会話ができるようにしてくれたのがとても嬉しかった。

彼女たちは子どものご飯の関係で早めにその場を去ってしまったので、私は現地の人の中にポツンと一人になった。

でも、だいぶ気が楽になった。

よし、このままの勢いで、どんなに気まずくとも、二時間は頑張ろう。
こんな機会二度とないかもしれないのだから。

テーブルの上のボードゲームで、みんなで遊んだ。
参加者はおばあちゃんばかり、7人くらい。

飲み物はなくなると継いでくれて、並々と赤ワインを頂いた。
手作りの温かい豆のスープも頂いた。

そして終盤、
私は全員に囲まれ、質疑応答されることとなった。

ここに来てどのくらい?
仕事は?
いつまでいるの?
ここは楽しい?
日本は寂しくならない?
友達はいる?
現地の言葉は勉強しないの?

などなど。。
想定していた質問はもっとパーソナルなことを聞かれるかと思っていたけれど、
この国についてどう思っているのか、どのくらいいるのか
が大きな関心だった。

現地語を習いに行きたいなら、近所で習えるわよ
カザフスタン人の彼女はすぐ喋れるようになってた!
友達がいないなら紹介してあげる!
日本人は近所のモールにいっぱいいるんだから話しかけたらいいじゃない!

みんな一斉に喋る。

気付いたらあっという間に二時間が経っていた。

徒歩1分も掛からず帰宅。
いつもの我が家に帰った。

それからは変わらず引きこもり生活が続いているのだけれど、私の中で少し変わったことがある。

近所に知り合いができたという心の安心感。
語学を学習したいという気持ちも芽生えた。

赴任した頃は英語もままならなかったので、一度自分の中で整理したい気持ちがあった。
知識はあるものの、上手く英語が使いこなせなかったのだ。

旅行してわかることもある。
英語が話せるとはいえ、互いに第二言語で話すことが多いので、
国によってフレーズや単語が微妙に変わったりする。
きっと日本で習う英語にもそういう特徴があるのだろう。

色んな所に旅行して、英語を使ってきて、なんとなく使えるようにはなってきた。

このまま英語も勉強しつつ、2年目は何かほかに勉強したいと思っていた。

せっかくだから語学学校に通ってみようかな、と思えたのは、パーティーに行ってみたから。

輪に入れない人を入れてあげることが、語学にはできるのだということを知った。

ちなみに、誰にも会わないからとほぼパジャマ姿でごみ捨てに行ったところ、パーティーの主催者に遭遇。

everything is ok?

と聞かれまくったので、近所に知り合いがいるからと言って、油断してはいけないことも知った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?