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色々な人、色々な大きさ、色々な服

服作りでもうひとつ実現したかったのは、サイズ展開。
ファストファッションの最初のブランド、GAPが上陸したのは1994年だそうだ。それまでの国産の婦人服はほとんどがワンサイズで、時々7、9、11号サイズの展開だった。特にデザイナーズブランドが隆盛を極めた頃はワンサイズ。

「普通」という狭い枠からはみ出してしまう小さいものも大きいものも特別な売り場、限定的なブランドしかなかった。特定の百貨店の隅っこに押し込められたそこに行くのは、排除されている気がしたかも知れない。服に自分を合わせるしかなかった。

おしゃれしたくなる年頃は、ちょうど自意識が強烈になる頃でもある。おそらく悲しい思いをした少女たちも多かったに違いない。私は身近に「自分の国だけど、歓迎されていないのじゃないかと思う」「自分が居て良い場所ではないような気がする」という声を聞いた。

日本でファストファッションが大歓迎され、定着した大きな理由は、価格の安さだけでなく広範なサイズ展開にあったはずだ。しかもサイズピッチ(サイズと次のサイズの差異)がそれまでの国産のものより大きく、幅広い体型の人々に着られるものが売られている。

今、私が試着してくださる方々を見て思うのは、実にさまざまな体型の人が、それぞれ生き生きとこの瞬間を生きているっていうこと。そしてその誰もが私の目には魅力的に写る。小柄な人にもパワーがあるし、大柄な人だって繊細だ。

日本人は体型のバリエーションが少ないように言われてきたけれど、そんなことはない。厚みの種類は少ないかも知れないが、身長も体重も本当に様々。過去の婦人服のサイズ展開が限定的だったり、ワンサイズだったりしたのは、作る側、売る側の都合だ。そのことはずっと口惜しく思っていた。

大きめに着たり、ピッタリに着たりするのだって個人の自由でありたい。

ちょっと話は逸れるけれど、着物(和服)が廃れていったのにも同じことが言えないだろうか。着物に供する反物は幅がほとんど35〜37cmくらいと決まっていて、長い分にはジョイント部分に縫い込んでおく。だから古くなったり寸法の違う人にも仕立て直しが可能なのが着物の素晴らしいところなのだ。

けれど、腕の長い人には一苦労で、幅を最大に使ってなんとかするわけd。足りないと借着みたいになっちゃう。これも反物を織る機械を調節して幅を広くしたら解決すると思うんだが、いや、およそ着物を好むようになって以降40年間もそう考えているんだけど、いまだに変わらないらしい。

もちろん価格が高すぎるとか、動きが不便だとかも廃れる理由かも知れないが、基本的な部分の不親切が着物離れに拍車をかけている気がする。昨今では短い着物の下には洋服を仕込み、古着を安い価格で楽しむという着る側の解決策が目立っている。してやったり!な現象がいっそ気持ちがいい。

と、いうわけで私たちはサイズの展開をしている。男性にも着てもらえそうなシャツなどは5サイズ、大体が2~3サイズの展開。これもまた、極小の私たちにとってもオーダーだからできることかも知れない。

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