見出し画像

爆発する芸術のそばで…

どーーん。

彼の絵は、見る者を惹きつける。
わたしは、ただただ見て、感じた。

さかのぼること5時間前、わたしは彼の隣にいた。

何かを被っていて何かを巻いている、そして上半身裸である

ただし、ここに至るまでにひと悶着あった。
爆発する芸術のそばで、わたしは自分と対決する必要があったのだ。

現在、田川市美術館にてスズキコージ民謡画展が開催されている。
この3日間は公開制作が行われていた。
1か月ほど前、展示会のチラシをみたときから、惹きつけられていた。
それまで、彼のことは全く知らなかった。

昨日夫が美術館の近くをたまたま通り、これまた惹きつけられ、
公開制作を様子を写真に撮り、見せてくれた。
「これはやばいね」と二人で言い合って、明日見に行こうと約束した。

ということで、今日。

館内の作品を見終わり、興奮気味にグッズコーナーに入ると、見覚えのある絵本があった。
それまで、彼のことは知らないはずだったが、違った。

大好きだった絵本
やまのかいしゃの作者、なのである。

絵は別の方が描いてあったのね、そりゃ気づかないわ~。
なんだか一気に嬉しくなって、あわよくばこの本にサインもらえたら最高だなと思って、購入。

公開制作の場所に戻ると、子どもがサインをもらっているところに遭遇。
これはいけるかぁ~!?と、高まる鼓動。

・・・

行けない、のだ。
思考が邪魔をして動けなくなるのが、わたしだった。

制作のあとで疲れているのでは?
ゆっくりしたいのでは?
あ、子どもの次に別の方がサインを…
今行ける?どう?
いや、無理だ。
と立ちすくんでいると、彼は立ち上がり制作が始まった。

夫には「何で今行かんの!?」と言われ、
「諦める、もういい…」の繰り返し。
冷ややかな視線が、ちくちくと痛かった。
「自分はすぐ行けるからって…わたしには無理!」と
痛みに耐えられず、逆ギレしてしまった。
こんなところで、険悪なムード。

理由をつけて逃げたくなる。
本当はサインしてほしいのに。
自分からアクションを起こして、伝えることがスムーズにできないのだ。

思えばこういう場面が人生の中でいくつもあった。
そのたびに、かたまっていた。
「もう、いい」と自分の気持ちに蓋をして立ち去ることが何度もあった。

でも、わたしはこの地球で生きていくって決めたのだった。
そのためにはコミュニケーションから逃げてはいけないと、
自分で決めたばかりだった。

だから、自分で伝えたかった。
自分で、自分の経験を彼と分かち合いたかったのだ。
「わたしはこの絵本が大好きでした」と、彼に伝えたかった。
ただ、それだけ。

涙を拭いて、そっと彼に近づいた。

ほくほくとした気分とともに、
宝物がまたひとつ、増えました。

クスッとしたり、ハッとしたりしたときは、 サポートしてくださると、励みになります☕