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背景を知らないと意味がわからないかもしれない。映画『風と共に去りぬ』

こんばんは。きなこもちです。

昔の映画って、なかなか機会がないと見ないですよね。そもそも何年の映画から"昔"というのかも人によって違いますが、名作と呼ばれる映画であっても第二次世界大戦中ともなれば昔過ぎて手を出せない方もいることでしょう。

今回は1939年に上映された名作中の名作、映画『風と共に去りぬ』を紹介します。

あらすじ

南北戦争の頃のアメリカ。南部のジョージア州で、一代で大農園を築き上げたオハラ家の娘、スカーレット・オハラは非常に気が強く、美しい女性として成長した。幼なじみのアシュレー・ウィルクスに恋していたが、アシュレーはすでにアシュレーの従姉妹のメラニーと婚約しており、その恋は叶わなかった。アシュレーに想いを告げたが受け入れてもらえず癇癪を起こした様子をレット・バトラーがたまたま目撃し、その躍動的な精神に強く惹かれた。

スカーレットは当てつけのように、メラニーの弟チャールズを誘惑し、狙い通りプロポーズを受ける。本気ではなかったのにプロポーズされたことに罪悪感を覚えつつ、プロポーズを了承し結婚する。チャールズとの間に息子が生まれるがチャールズは開戦した南北戦争で戦死し、未亡人となってしまった。

その後、スカーレットが未亡人になったことを知ったレット・バトラーと再会を果たすが、故郷のタラは戦火により焼け野原となる。スカーレットは南北戦争など時代の荒波に飲まれつつ、そのたくましい精神で強く生き抜くのだった。

スカーレットとレット・バトラーの美しさ

私が見たときは全編シロクロ映画ですが、その中でも輝きを感じられるほど主演のスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リーと生涯愛することになるレット・バトラーを演じたクラーク・ゲーブルの美しさが本当に際立つ映画です。

なんていうんですかね。匂い立つ美しさというか。今もきれいな俳優さんたちたくさんいますけど、また別の美しさがあるんですよね。ぜひ直接見て確かめてほしいです。

スカーレット・オハラがなぜ人気なのか

この映画、時代背景などを知らずに見るとスカーレットが異様にわがままで、どうしようもない女性に見えてしまうと思うんですよね。私もこの映画をはじめて見たとき、スカーレットの気の強さとわがままさに腹が立って、振り回されるレット・バトラーが気の毒で仕方がありませんでした。いくら気の強いところが気に入ったといっても限度がありますからねぇ…。

私はアメリカの南北戦争は歴史の教科書でちょっと習った程度しか知識がないので、この当時の女性の置かれた境遇など知らずに見ていたわけです。しかし、南北戦争に限らず、アメリカを舞台にした映画などを見るとスカーレットほど無茶苦茶やらかす(?)女性はあまりいない気がするんですね。むしろ気が強くて頑固というと映画『ドライビング・ミス・デイジー』のミス・デイジーの方がイメージに近いです。スカーレットのように自分が美人なのをよく理解して男を手玉に取るなんて、ともすれば野蛮に感じます。

ですが、当時『風と共に去りぬ』のスカーレットは大変な人気だったそうです。これについては出典は忘れましたが昔なにかの本で解説を少し読んだことがあって、要するに当時の女性は男性に黙って付き従うものというのが常識とされていたから、その型破りな女性像が憧れとして映ったとのことでした。私には型破りすぎると思うのですが、大衆にはわかりやすいですし、レット・バトラーにも本気で食って掛かる様子などありえないものを表現していたことが本当に胸のすく想いで見られていたようで、その背景を知らないとスカーレットのすごさがわからないかもしれないと思っています。

おそらく気の強い女性像自体がまだちゃんと確立されてなかったのだろうと思います。強い女性はそれまでもたくさんいたでしょうが、男性とタメを張れるほど文字通り立ち向かうとなると、物理的に強いか手がつけられないほどじゃじゃ馬な女性か、非常に極端なものしか思いつかなかったのかなと。

原作小説は読んでおりませんので、そちらを読むとまた印象が変わるかもしれません。しかし、戦う勇気を持てない、持ち方がわからない女性たちにはスカーレットが心の支えになり得たのかなと想像しております。

アメリカ南部が舞台

アメリカ南部が舞台となる映画は黒人奴隷解放や差別撤廃がテーマになることがしばしばありますが、この映画は奴隷制の撤廃派である北部と維持したい南部との戦いである南北戦争が舞台で、かつ南部に住むスカーレットは当然のように黒人奴隷を使役しているため、嫌悪感から見れない人もいるかもしれません。この映画の監督は黒人奴隷の話を可能な限り除くために黒人が登場するシーンをできるだけ減らしたそうですが、それでも出てはきます。

小説の方だともっとバンバン黒人奴隷の話が出てくるそうで、解放しよう!差別なくそう!が当たり前になってる人からすると常識が違いすぎて頭が混乱する恐れもあります。

そのへんをわかった上で見ることをオススメします。無理なら視聴をやめましょう。

おわりに

この映画はいろんな意味で私の中では衝撃的でした。スカーレットがヤバい女といって差し支えないし、レット・バトラーがなんでスカーレットに惚れるのかわからないし(DV女が好きなのか?)、奴隷を使うのが当たり前の世界に生きることが想像できてませんでした(マイルドにしようとしてあれなのか、と)。

でも、本当に過去と現実は地続きで、黒人差別は今もなくなってませんし、女性が男性とだいぶ対等になってきたとはいえ統計的にもまだ年収差など大きいですし、別の国の歴史と簡単に言うのは違うとも思います。むしろ今も『風と共に去りぬ』の世界観の土地はあって、そこで懸命に生きる人たちもいるわけで、知らない常識の一つを知る意味で見てもいいんじゃないかと思います。


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