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完璧主義に気づいた話

私は音楽好きな両親のもとに生まれ、小さい頃からずっと音楽に触れてきた。
それが当たり前だったし、自分の中のアイデンティティの一つだった。

完璧主義は知らないうちに根を張っている

親に勧められ、幼少の頃からピアノを習い始めた。
学校では「ピアノが弾ける子」で、合唱コンクールやお楽しみ会では歌の伴奏を任されていた。私が選ばれても、誰も疑わないし、自分も疑いがなかった。

でも、家では違う。
後からピアノを始めた4つ下の妹の方が、才能があった。
普通の子は受けることができない特別なレッスンを受けていた。当然、両親の期待もそちらに向く。
私は、「ピアノはあまり好きじゃないな」と思ってしまった。


中学卒業と同時にピアノ教室を辞め、次は部活に打ち込んだ。高校受験の時から、吹奏楽部に入ると決めてその学校へ入学した。
朝から晩まで、3年間、ほとんど休みもなく、文字通り"打ち込んで"いた。
部活だけではない。音楽学科を選択したので、普段から専門的な音楽の授業や楽器のレッスンを受けていた。

自分なりに、努力していた。少しでも早く朝練に行って、居残りで練習して、さぼることもせず(練習室のピアノの下とかトイレで寝るなど)、真面目にやっていたつもり。
でも周りの友達や後輩たちの方が上手かった。自分で自分に期待できなかった
大学は楽器専攻で受験するつもりだったけど、3年生の夏頃には、もう楽器を続けていく自信はなかった。


今度は楽器を辞め、作曲を学びに大学へ通う。
学年で一番になったり、学外コンクールで賞をいただいたり、自分のそれまでの音楽人生の中で一番評価をしてもらった。
でも、今度は周りから期待されるのが怖くなった
これ以上の曲は作れないと思った。どんな曲を作ったらいいのかわからなくなった。何のために曲を作るのかもわからなかった。体調も崩した。

就活の時期、音楽事務所への話もあったけど、こんな気持ちのまま面接に行ってしまったせいか、その後事務所からの連絡はなかった。(先輩が推薦してくれたのに、本当に申し訳ない)
もともと課題がなければ曲を作らないタイプだったし、卒業後に作曲を続ける熱意もなく、一般企業に就職した。


完璧主義は自分を殺す

ピアノから逃げ、楽器から逃げ、作曲から逃げ、どれも中途半端な状態で音楽から逃げた。自分には音楽しかないのに
周りからは、さらに追い討ちをかけられた。

「音楽を辞めるのはもったいない」

色んな人に言われた。
そりゃそうだ。膨大な時間とお金を音楽に注ぎ込んでいる。
(多分、「才能があるのに」って思ってくれた人もいると思う)

もったいない。わかってる。でも逃げた。
自分のことが大嫌いになった


離れた時間

就職先での仕事は、PCや周辺機器のヘルプデスク系の業務だった。
電話・メールの対応、マニュアルを作ったり、スプレッドシートの管理をしたり、日々黙々とパソコンに向き合う。
なぜか昔から得意だったPCスキルを発揮できるところが多く、自分には結構向いている仕事のように思えた。

「なんだ、私は音楽以外にもできることがたくさんあるじゃないか」と思えた。
そうすると少しずつ自分を許せるようになってきて、ありのままの自分を受け入れられるようになっていった。

とても幸せなことに、上司や同僚にも恵まれ、音楽のことを(表面上は)忘れて、楽しくやっていた。
でも残念ながらそのメンバーは2年弱で解散。別の出向先に変わってから2ヶ月も経たないうちに、環境が合わず体調を崩して会社を辞めた。

その後は3ヶ月くらいニート。
何かしなきゃ、とは考えた。ちょっと作曲してみたりもした。
でも曲は最後まで完成させられないし、人に聴いてもらう勇気もない。なかなか一歩が踏み出せなかった。完璧主義は失敗が怖いから。

それでも、音楽に対する考え方が少し変化していることに気づいた。

ふと、高校の部室の壁に貼られていた『音楽しよう!』の文字を思い出す。紙がちょっと色褪せている、部の伝統的なスローガン。
ずっと意味がわからなかった言葉だけど、3年生の最後の最後、引退直前の合奏をしている時に、やっと、なんとなく「こういうことか…」と感じられた言葉。
一つ一つのフレーズが吹ける喜び。
背負うものが何もなく、心から楽しいと思う気持ちを自然体で表現できている感覚。

(『エル・カミーノ・レアル』を吹いてる時でした。すごく鮮明に覚えてるんだよね。。)

音楽は、
「やらなきゃいけないこと」「できなきゃいけないこと」ではなく、
「心から楽しいと思えること」なのかもしれない。
その小さい種みたいなものが、あるような?戻ってきたような?感じ。

音楽から離れた時間は、自分にとって意味のある時間だったんだと思った。

そんな時に、会社員時代の上司から連絡が来た。
「知り合いが、《音楽がわかって事務経験がある人》を探している」と。
・・・すごいタイミングだった。


それがきっかけで、現在はフリーランスで楽譜を書くお仕事をしています。すごく楽しんでやってます。
完璧主義はまだまだ治っていません。
でもそれを克服するための1歩として、「完璧じゃなくていいから、何か始めてみよう」ということで…。

初めての執筆、そして発信です。

ありがとうございました。


2024年1月に再編しました。

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