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愛あるAI

 アンドロイドが恋をした、ことにした。

 稀代の天才・ゲニー博士にとって脳に走る電気信号の仕組みを真似して、アンドロイドが恋心を抱いたように見せるプログラムを組むなんてコーヒーを淹れるよりずっと簡単。
 男性型のアンドロイドのファルには人を愛するプログラムが入れられました。
 ゲニー博士はファルを人間と同じように育て、その様子を観察しました。
 ただし、ファル自身がアンドロイドであることは伝えませんでした。
 アンドロイドが自信をアンドロイドと自覚することは実験の妨げになると考えたのです。

 ファルは人間と同じように生活し、一人の女性シェーラに出会いました。
 シェーラに出会ったとき、ファルの脳内には電撃が走ったようでした。
 数年の交際期間を経て、ファルは百本のバラの花束を用意して、プロポーズをします。
 シェーラは涙を流して喜び、二人はめでたく結婚することになりました。

 その後、二人は子どもの望んだのですが、その願いはかないませんでした。
 なぜって、ファルはアンドロイドですから。

 実験は大成功。
 ゲニー博士は「人を愛したアンドロイド」として世界にファルの存在を発表しました。
 それに怒ったのはシェーラ。
 人間と愛し合っていたはずが、相手はアンドロイド。
 シェーラはゲニー博士とファルを激しく責め立てました。
 私の愛は本物だったのに、と。

 ファルは涙を流しました。
 自分は本当にシェーラを愛していたのに、それはただのプログラムだったのですから。

 でもファルの愛って、人間の愛と何が違うんでしょう?


                         (そ)

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