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中国鉱工業生産指数と原油価格について 2023/06/15



先日、OPECプラスの会合により、全体での減産はなかったものの、サウジアラビが単独での日量100バレルの追加減産を発表したことにより、一時74ドル代まで上昇したものの、前回のサプライズ減産と同様に一過性に終わってしまったようである。

現在、WTI価格は68ドル近辺で推移している。

注目を浴びる中国市場

さて、今月はOPECプラスの会合だけではないようだ。
ロイターが原油需要の予想を下方修正したことにより、中国市場に対する注目が集まっている。

筆者は、以前から中国の製造業PMIを含めたいくつかのデータから原油需要は引き続き下落し、原油価格も20〜40ドル代まで下落するリスクがあると主張している。
この主張は今も変わらない。

さて、本日は中国の鉱工業生産指数が発表された。
結果は先月5.6%を下回り3.5%と伸び率は低下したようだ。

鉱工業生産指数の影響力

鉱工業生産指数とは、鉱業・製造業・建設業の生産状況に係るデータである。
詳しくは検索してほしい。

今回は、この指数が原油市場にどのような影響を及ぼすのかを考えていきたい。

鉱工業生産指数とは、上述した通り、ある特定の産業に係る生産率であるが、「生産数」を示すデータであるということが重要である。

生産を表すデータには以下の特徴があることは押さえていただきたい。
①生産者は「将来の販売」を想定して生産量を決定しているということ
② 生産者は「現時点での在庫量」を考慮して生産量を決定しているということ
③1つの業界ではなく、鉱工業に係る多くの業種のデータであるということ

① :製品を生産するのは無料ではなくコストがかかっていることは周知の事実である。そのため、生産者は将来販売できる量を念頭に置いて生産量を決定している。言い換えれば、生産率が減ったということは、先月よりも生産者側の需要予測が低下した可能性があるということだ。

② :現時点において、需要が増加し在庫量が減少した場合には、生産者は急いで生産量を増やすだろう。一方で、在庫過多の状態であれば生産量を増やす必要はなく、むしろ減らすだろう。

よって、生産量にかかる指数は、およそ将来の需要量と現在の在庫量を示したものである。

上記①及び②から、鉱工業生産指数の割合が低下したということは、需要の低下、もしくは在庫量の上昇が想定される。ただ、どちらが原因だとしても、結局のところ需要が低下していることの表れであることには変わりないのだ。

③:自動車生産台数は自動車のみの生産に係るデータであるが、鉱工業生産指数の場合、第二次産業の多くの業種が関わるデータであることは重要なポイントである。広い範囲のデータが読み取れる。

中国における第二次産業の立ち位置

鉱工業が該当する分類は一般的に第二次産業である。従って、鉱工業生産指数のその国における影響力の大きさを考える上ではGDPにおける第二次産業の割合を確認することが望ましい。

中国の2022年の名目GDPにおける第二次産業が占める割合は39.9%である。つまり、GDPの約四4割を占める産業であり、中国の景気を読み取るにはかなり有効なデータの一つであるということが言える。

約4割を占める産業の上昇率が低下傾向にあるということは、中国市場全体に影響が波及することは考えるに難くないことだろう。

このまま、中国における鉱工業生産指数も下落を続ければ、やはり原油価格も下落の道を辿るだろう。

ただし、データは必ず連続的に見る必要があることも留意して頂きたい。
必ず、来月も確認して頂きたい。

参考
外務省 中国基礎データ

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