金利と原油市場:継続的利上げにより見落としがちな影響とは 2023/07/14
現在、WTI価格は77ドル台で推移している。
サウジアラビアとロシアによる合計150万バレルの追加減産と米国の消費者物価指数の結果から利上げ停止との見方が濃厚になり、需給逼迫懸念から価格が上昇した状態だ。
7月の0.25%の利上げはほぼ確実しされているとのことだが、米国の持続的な利上げは終局に向かいつつあるという見方がある。
本項を読む意義
さて、今回はの継続的利上げで改めて明らかとなった継続的利上げが原油に関わる経済指標に及ぼす影響を確認していく。
意外と見落としがちだが、本稿の内容に気づいていなかった場合、原油の需要サイドの予測を間違う可能性があるので、ぜひご覧頂きたい。
尚、金利については各々調べていただきたい。
金利と原油需要の関係
原則として、金利が高くなれば、返済額が増える為、借入をしずらくなり、借入を渋る。
今回取り上げたいのは金利の影響を受けやすく、原油とも密接に関連する「製造業」と「寄託業(倉庫業)」である。
製造業と原油の関係
製造業は比較的エネルギーを使用するため、製造業PMIなどは原油需要を予測する上で非常に有効な材料となる。
製造業の経営体質
製造業は概ね「借入→設備投資→生産→販売→借入・利子の返済」というサイクルを繰り返している経営体質だ。
製造業は設備投資の規模が他業種と比較し大きくなる。それに比例して減価償却費が増える。つまり、会社の財産価値も年月と共に下落する額が多いということだ。
製造業者の資金の出口をまとめると以下の三つになる。
設備投資
借入・利子の返済
減価償却費
このような経営体質から、利上げが継続された場合、借入が厳しくなり、設備投資が減少する傾向になる。
設備投資が少なくなれば、受注件数も下げる可能性があり、このような事情も含めた結果、製造業の景況感指数が下落するのではないだろうか。
寄託業と原油
寄託業とは、概ね倉庫業が該当する。寄託業は、「借入→不動産の賃借or購入→財を預かる→財の保存・管理・維持→寄託者への返還→報酬受け取り」というサイクルを繰り返す経営体質だ。
尚、報酬の受け取り時期は各国当事者の合意である(はずだ)。
寄託業は「個人⇆法人」ではなく、「法人⇆法人」が本来は主な制度である為、長期的な契約が多い業種であり、また支出の多くは固定費が占めている業種である。
寄託業の資金の出口(=固定費)をまとめると以下のようになる
土地と物件に係る料金(賃貸借であれば賃借料、所有物であれば減価償却)
財の保存・管理・維持費(→光熱費など)
借入・利子の返済
今回注目いただきたいのは2の「財の保存・維持・管理費」である。
例えば、近年流行りの個人用の倉庫であれば温度や湿度管理などは必要ではなく、場所だけレンタルすれば良い。
しかし、「原油」などの化学製品の在庫を保管するとなれば、多くの管理費がかかそれはもちろん、借入から補填するため、返済がある。
高金利が続くとなれば、資金を借入し在庫量を増やすことより、原油在庫量を減らすことにより、固定費を低くした方が利益の収支が高くなる可能性がある。
また、金利が高すぎると返済を見越して在庫を増やせなくなるということも考えられる。
総括
今回は、金利が原油価格予想に及ぼす影響についてだった。
意外と忘れがちだが、利上げが続いた場合本稿のような現象が発生し、原油需要を予測する際の経済統計に影響を及ぼすことは押えておきたい。
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