着地点がないけれど、「男好き」と呼ばれている友達について綴る。

とある友達とは、高校の同級生だった。
彼女とわたしは、出席番号と４月の席が前後だった。
最初は彼女の目つき強いしプリント回されるたびにびくびくしてたけど、だんだん喋るようになって、席替えの前には「一緒に話せて楽しかった！」とメモをくれた彼女。
いつも彼女と一緒にいたわけではないけれど、遠足では一緒に回ったりしたし、隣の席に何回もなったし、たまたま彼女の卒アルの一番左上にメッセージを書くことになったのもわたしだった。
そんな彼女は、「男好き」と言われる人だった。

女の子には「月野さん」「火野さん」と苗字で呼ぶことが多いのに、
ほとんどの男子には「水貴くん」などと下の名前で呼ぶ。
女子と喋ってるより、男子と喋ってる方が多い。
男子との距離が近い。
枚挙にいとまがないが、男子と仲良くしている彼女の姿は他の女子にはあまり良く映らないようで、「～ちゃんってほんと男好きだよね」ってよく陰口を言われていた。

でも、わたしは彼女からその理由を何かのタイミングでたまたま聞いたことがある。
女の子はかわいいから大事に扱いたい。男子はどうでもいい。
だから女子には「さん付け」だし、男子は下の名前でおっけー。
男子に嫌われてもいいし男子の方がねちねちしてなくて喋りやすいから、女子と話すより男子と話す方が楽だ。　と。
わたしは、そういう価値観があるんだなと興味深く聞かせてもらったし、彼女が楽しければいいかと来る日も男子と喋る彼女の声を聴いていた。

大学に進学すると共に彼女とは会わなくなり、時は経ち、
社会人になって彼女とは職場の「同期」として再会した。
彼女は彼女の道を進んでいたというか、本当に昔の彼女のままだった。
研修の時には仲良くしたい男子には積極的に話しかけに行き、
積極的に飲みに行き、女子より男子の友達の方が多いんじゃないかと思うくらいネットワークを形成していた。
彼氏はいるのに、「この子かわいい」「この子面白い」という理由でLINEを続け、「その気にさせちゃったかなあ」と変わらないかわいい顔のまま舌を出していた。
「研修であんた女の子ばかりと話してたけど、オブリガートも色んな男子に話しかけてみなよ！世界が開けるよ！」と勧められたけど、それは遠慮しといた。

しかし、彼女を良く思わない人もいる。
職場の同期の一部で飲み会をしたのだが、「やばいやつ」として彼女の名前が挙がっていた。

～ちゃんって知ってる？？あの子やばいよね！
どんどん男を落としていくのよ。
お昼ご飯も、いつも公園で男と食べに行ってるんでしょ？
★★課のあの子も乗せられてて、彼女に「タイプはピアスをつけた人」って言われたら本当にピアスを開けてきたらしいよ！
男子って単純よね、かわいい顔でめちゃくちゃ話しかけられたら好きになるしかないじゃんねえ。
いやー、複数の男とあんなに話せるなんてどんな神経しているのかしら。

わたしの隣に座っていた初対面の女の子は、相当酔っていたのか話の途中で彼女のエピソードにびっくりしてわたしに抱きついてきた。いや、彼女の性格を知っているわたしからすると抱きつかれる方がびっくりなんだけど。

まあでも、そうなるよね…　あんた、高校でもそういわれてたもんね…。
あんたの「男子は適当でいいからがんがん話せる」という価値観、多分「同性と仲良くする」「複数の男子に気を引かせてしまう行為をしない」価値観の保有者より圧倒的少数だと思うから…。

彼女のそういう性格をわたしも完全に理解することはできないから、「どうか彼女が呼吸しやすい世界になりますように」なんて祈りは偽善ぽくってできないけれど、
それでも自分が完全に理解できない行動を取っている人にもちゃんと理由はあるんだなって想像力を持ちたいなって思った。彼女を好き/嫌い、得意/苦手と思うかにかかわらず。

ところで、５月くらいから彼女とは遊びに行ってないわ。
ランチでも誘おうかな。
いやーでも、忙しいかもしれないな。
彼女が幸せで忙しいならそれでいい。様子見るか。