金曜夜話

 のっけからこんな話はどうかと思いますが、蒙古タンメン中本で北極野菜シャキシャキ(麺大盛、背脂、北極煮卵、ライス)を食べまして。
 ホントにどうかと思うが、毎週金曜日は胃袋に負荷をかける、先日38歳になったばかりのアラフォーです。
 まぁ辛いのは辛いですが、慣れたもので、ちょっと痛ぇと感じつつも最終的に美味い。しかし、終盤になるにつれて、やんわりツラい。男として残すわけにいかず、ぐいぐい、胃へ流し込んでいく私。完食するまで水を我慢し、一気に飲み干し「ご馳走様」と捨て台詞を吐き退店する。
 もう2年は経つだろうか。
 蒙古タンメン中本に通いだし。
 ここまでひとつの店に通うのは、近所の、今は無き町中華「〇〇〇」以来である。その店は、子供の頃からよく出前で頼み、来店もしていた。味は普通に美味いぐらいで、とりたてて褒めるほどでなし、よく言えば家庭的であった。今は亡き父親と知り合いで、食事に連れて行ってもらったり、それなりの付き合いがあった。
 今思えば、あれは自分の人生の中で、支えのひとつになっていたことは確かだ。現在は店がはいっていた建物は別の建物になっており、付き合いはまったくない。寂しくはない。良い思い出だ。
 閑話休題。
 冷静になって何故、蒙古タンメン中本にハマったのだろう。
 都内を中心に展開している、旨辛、激辛の店がある。そんな薄い認識はあった。そんな有名店が地元の駅前に出来たのだが、しばらくは行かず、ふとした弾みで「せっかくだから」という漠然とした理由で入店した。最初の一杯は『蒙古タンメン』か『五目味噌タンメン』のどちらかだった。
 しばらくして『味噌卵麺』、慣れてきたところで『北極ラーメン』に挑戦した。最初は辛味の強烈さにやられて、旨味を感じられなかったが、これも慣れ。食べ続けるうちに辛味の奥の旨味を、私の味覚が感じ取り、今では病みつきの様相を呈している。
 ちなみにおススメの限定メニューは、
 『北極プルプル』である。
 これは、北極ベースのスープ、具材は牛モツのシマチョウ、マルチョウを主役として使用。ねぎとニラ、糸唐辛子がトッピングされている。丁寧に下処理されたモツは臭みも無く、北極スープにドップリと漬けられ、さながら『北極モツ鍋』とった趣き。 
 ビール好きにはおつまみとしても重宝します。ライスとの相性も抜群。
 また、特筆すべきはベースとなる北極スープで、モツと共に仕入れられる牛脂、おろしニンニク、生姜、ゴマがさり気なく加えられ、香りから違いを感じるその重厚な北極スープの味わいは感涙ものです。 
 ふと、帰りにバスでひとつの考えが頭を擡げた。
 いつまで、中本に通っていられるだろうかと。スープまで完飲する主義でないものの、胃袋や腸に対してそれなりの攻撃力を誇る中本であるから、あと数年したら、引退を考えるようになるかもしれない。
 それを防ぐため、胃腸を鍛える。どうするかは、ネットで調べる。
 後で。面倒だから。
 まぁ、喰えるところまで喰う。私の胃袋はまだ、白米1キロを受け入れるキャパシティはある(健康を考えて減らしている)。
 だが、アラフォーである事実を無視したような体育大食生活は慎み、修行僧の如く管理された食事に移行すべきなのか。
 確実に続かないだろう。毎週金曜日恒例の、蒙古タンメン中本と土曜日の酒盛りで、修行僧は煩悩に急転直下してしまう。フライデー、サタデーを漂白する勇気はない。
「蒙古タンメンと酒は止めましょう」
 そう医者に宣言されたら、
「そこをなんとか、先生の英知で、止めずに済む方法を授けてください」
「死ぬよ。血液検査の結果も芳しくない。今は良くても、数年後は確実に実害がでるから、今のうちに―――」
 私は、我慢できず「もういいです」と言って、診察室を出るだろう。先生の疲れ切った顔面を尻目に、言われたことも忘れて、そのまま、蒙古タンメン中本に直行することだろう。
 現実的に出来る対策としては、蒙古タンメンに限らず、スープは飲み過ぎないようにするぐらいだ。スープは完飲しないものと、ラーメンオタクもそう言っている。
 それにしても、ゴールデンウイークが眼前に迫っている。
 新宿、映画、読書、古着。
 そんな大型連休。
 もしかして、三十日は、北極プルプルを食べちゃうかも。
 あー、健康に悪いなー、いやー、困っちゃうなー(歓喜)


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