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デ・キリコ展と見たままを文字に起こす

東京都美術館で「デ・キリコ展」が始まった。デ・キリコの前知識はほぼ無いまま、足を運んだ。

前知識と言えば、ルパン3世の映画『ルパンvs複製人間』でマモーの拠点とする島にデ・キリコの作品の世界観が再現されており、ルパンがそこを彷徨うというシーンを思い浮かべる。

ただ、その印象があるからこそ、デ・キリコがどんな作家なのだろうとか、どのような作品を遺しているのかなど、興味を持った。

美術館を回るときは、自分のお気に入りの絵を見つけて、それをじっくり観る。なぜ自分がその絵に惹かれたのか、どこがいいか思ったのか。その絵には何が描いてあるのか。そういったことを考える。

1つの展覧会で、1作品出会えればいい。
たくさんあっても、観るのに疲れてしまうから。

今回の展覧会で気になったのは、『大きな塔』という作品である。一目見て、えも言われぬ哀愁と不安を感じる絵だと思い、目を離せなかった。

いつもは、頭の中で何が描いてあるかを整理しながら絵を見ているのだが、近くにベンチがあったこともあり、文字に起こしてみた。

大きな塔メモ

そびえ立つ大きな塔
どこか哀愁と不安を感じる
立体的な陰影なのに、どこか平面な感じがある
背景は深い緑から黄色へのグラデーション。
9割は緑で黄色味が夕焼けか朝焼けように感じる
細長い塔は中央貫く大きな柱と、周囲にある5本の柱で成り立っている。
上に行くほど細くなっていく。
中央の柱は朱色で、周囲の柱は灰色でコンクリートのような感じ。
窓や入り口がなく、のっぺりとしている。
何の目的で建てられている塔なのかは見てとれない。
塔は5つの軒先があり一番上には煙が出ている。煙は右から左へ、たなびいている。
右手から光が差しており、左側に影が出来ている。
塔の両側には建物が塔の4段目までの高さで立っており、右側は影に、左側は日に当たっている。
2つの建物は左右対称で、違うのは陰影だけである。
塔の後ろには荒廃した荒野なっており、岩肌がゴツゴツした感じを感じさせる。

美術館でメモしたままであるが、何に惹かれたのか改めて考えてみた。

まずは、背景である。デ・キリコ特有の緑がかった空に、グラデーションして境界線近くは黄色くなる背景。いくつもの作品に同様な背景が使われている。この作品は描かれているものが、シンプルが故に背景がとても印象に残った。

そして建物。キャンバスには、3つの建物が並んでおり、メインとなっている中央の塔が、にょきっと立っている。立体的でありつつも、どこか平面な感じが印象的な塔が、不安定な感じを想起させる。

この2点が、おそらく惹かれたものの正体なのだろうが、自分でも明確に言い表せない。

自分が惹かれた理由を人に伝えて共感してほしい。いつかこの理由をちゃんと文字に書き起こせるようになりたい。

このもどかしさを、感じるためにこれからも展覧会へ足を運ぶのだろう。

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