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家の鍵

家の鍵、一人暮らし8年目になっても今のところ失くしたりしたことはない。なんとかちゃんと家に帰れている。
昨年の3月に越してきた今の家の合鍵をようやく今年の正月に両親に渡した。これはうっかり私が自宅で孤独死したときに親が家に踏み込める用とのことだが、私が家のかぎを無くした時の保険も兼ねている。

正直渡すのは嫌でしょうがなく、本当だったら近所に住む友人に預けたかったのだけど、まだ両親はしっかり存命で認知機能も落ちていないし、それならばまぁまずはこちらに筋を通すべきなのか?と思い預けたのだった。
でも筋って何だろう。前の家は私の身分が学生だったため審査が通らず父親の名義で借りていた。この場合はもう名義から親の管理下にあるため鍵くらい預けるべきだろう。
でも今の家はどうだ。探してきたのも名義も支払いも全部私である。この場合における筋とは一体なんだろうか。

両親は今の家に来たことはない。内見も引っ越しも全部1人でやった。住所くらいは教えなさいとのことで教えたが、多分私がウッカリ死なない限り来ることはないだろう。
前の家は父親だけ来たことがある。私が1日メッセージアプリを開いておらず母親からのメッセージを未読にしていたら、鬼のように電話がかかってきた。それにも出なかったため「自宅でコロナで死んでいるのかもしれない!!」と23:00に茨城県に住む父親をわざわざ都内の私の家に寄越したのである。
当時はコロナ禍で、ノイローゼのようにコロナを恐れた母は外出する全ての人類を悪とみなし、当然学生だった私は学校の近くに借りた家と学校の往復のみしていると思っていた様子だった。

んなわけねぇだろうよ。実際は同級生と飲み歩き当然アルバイトもしていた。電話がかかってきたときはちょうどアルバイト中で、その日も23時までの勤務だった。
父親にはアルバイトをしている旨は伝えてあったものの、まさかその日にシフトが入ってるとは思っていなかったようでノイローゼ気味の母親に「娘は不在でした。」と報告したらしい。当然、母親は発狂である。

「お母さんにはいなかったって言ってあるからね〜。あとで連絡しておいてね😊お父さんは無事に家まで帰ってきました。」ってメッセージを読んだ時には本当に頭を抱えた。これからあのヒステリックな金切り声を耳元で浴び続けなければならない。母親は声が高くてとにかく大きい。声が大きいやつが勝ちみたいな家の育ちなのだ。とにかくでかい声を出して主張を押し通して押し込んで押し倒す、そんな強行派プレイスタイルである。
案の定その日も1時間電話口でぎゃあぎゃあ言われた。何を言っていたかはまるで記憶がないがうんざりしながら途中のコンビニでビールを買い飲みながら夜道を歩いて帰ったことだけは覚えてる。夏でよかった。ビールを飲みながら夜な夜な散歩しても凍えて死にかけるなんてことはないから。

最近気づいたのはキーケースにしまうと高確率で鞄の中で鍵を見失い胃の辺りがキュッとなる。ケースにしまうことでおとなしくなってしまい鞄を振ってもカチャカチャ鳴らないから探してあげられない。頼む、存在感を出してくれ、私が探せなくてもお前の方から存在をアピールしてくれ。しまい込まれてアピールできぬというのならとキーケースからキーホルダーに付け替えた。
キーホルダーは大学卒業時に恩師からいただいたcoachのもの。小さい写真が入れられる仕様になっているけど特に入れたい写真がないまま数年。革がちょっと傷んできたのでそろそろお休みさせたい。
ワタリガニの栓抜きキーホルダーが今一番欲しいものです。家の鍵を守り、瓶ビールを歩き飲みさせてくれワタリガニ。

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