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散歩日記

おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

秋は素晴らしい。
部屋にいても落ち着かず、秋空の下へ行きたくなってしまう。
それはまるでお父さんと遊んで欲しい子供のように…。

だから僕も玄関のドアを開けた。
11月とは思えない太陽からの出迎えに、僕はニコッと返した。

そのまま当てもなく歩いて行く。
気温19度。頬に当たる風が心地いい。
本当に単なる散歩。僕はスマートフォンしか持っていない。
すると目の前に野良猫が現れた。

誰かの帰りを待っているのだろうか。精悍な顔をしている。


「僕の家には不思議と野良猫が集まってくる。本当だよ。君も来るといい」
僕は野良猫に住所を告げた。
野良猫が「にゃぁ」と小さく鳴いた。

そのまま20分は歩いただろうか。
さすがに疲れたので、自動販売機でおしるこを購入した。
汗ばんでいるのに、喉がカラカラなのにおしるこだと?
いいじゃないか。僕は血糖値が低いのだ。
飲み終えるとさらに喉が渇いたので、ミネラルウォーターを購入した。


すると雨が降ってきた。
だけど空は笑ったまま。つまり通り雨だ。
僕は道路を挟んだ和菓子屋さんに入店した。
店内は薄暗く、なぜか扇風機が稼働している。コロナ対策か?
僕はショーケース内の商品を見ながら、雨が上がるのを待つ。
「いらっしゃいませ。お若いのに和菓子がお好きなのですか?」
ジャケット姿の主が話しかけてきた。緑色のハンチングが眩しい。
気まずい。一番気まずいパターン。
だけど若いと言われて、ちょっとテンションが上がった。
「そうですね…おすすめは何ですか?」
一応興味のあるフリをしてみる。
「そちらの最中は自信作でございます。日に300個は売れています」
主が口ひげを触りながらほほ笑んだ。
握りこぶしサイズの最中が1個250円。主の話が本当ならば、最中だけで75,000円の売り上げだ。
「では、ひとつ下さい」
若いと言ってくれた御礼だ。
「おおきに。きっと満足頂ける事でしょう」
「あの…バーコード決済でも大丈夫ですか?」
ゆっくりと頷いた主が、ハンチングを取った。
「大丈夫でございます。私の頭もバーコードですから。ひっひっひっ」
主が笑い出した。確かに主の頭は見事なまでのバーコード状態。
気まずい………昭和のノリは勘弁して欲しい。


店を出ると雨が止んでいた。
僕は最中をポケットにしまうと、再び歩き出した。
おしるこを飲んで、このあと最中を食べればカロリーが半端ない。この散歩では消費しきれないかも。
でもいいじゃないか。こうして気持ちよく散歩ができているのだから。
僕は前方の空を見た。
「ああッ…蒼天は我に味方せり!」
蒼天に綺麗な虹が出現していた。


虹は天からの施し。僕は一人で三国志の世界観に浸っている。


秋空に誘われふらっと散歩に出ただけで、きれいな虹まで見る事ができた。やはり人生は行動あるのみ。悩み考え続けても答えは出ない。運を動かさないとダメなのだ。つまり身体を動かす事で運を引き寄せられるのである。


雨上がりの散歩から30分以上かけて僕は自宅に戻った。ミネラルウォーターが空になった。
僕は大汗をかいたのでストレッチをはじめた。身体を柔らかくする事で代謝も上がり怪我もしにくくなる。
屈伸運動をしていると、「ベりッ」と異音がした。
ジャージのズボンのお尻部分が破れたのだ。それもちょうど肛門の位置。
500円玉くらいの穴が開いていた。
僕は笑った。
天高く何度も笑った。
すると腹筋がつった。
「いたたたたたたィ」
僕はその場に蹲った。
本当に痛い。何かにすがりたい………。
気がつくと僕は、主から購入した最中を握りしめていた。
そして腹筋が正常に戻ると、最中が粉々になっていた。
「主さん。違った意味でありがとう」
すると野良猫たちが集まってきた。
その中に、住所を教えた野良猫も参加していた。

秋の散歩は僕の糧となり、こうしてみなさんにお届けする事ができましたとサ。


【了】


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