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僕の冷めた就活とゆで蛸社長の熱意

こんにちは。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡
この記事は、僕が20代の頃に書いた日記です。
面白そうなので加筆・修正しました。
青臭い青年の駄文ではございますが、ひとつ多めに見てやってください。


僕の大学時代の就活は、3年生の後期試験を終えた2月からが勝負だ。資料を集めながら、より良い条件はないかと活字を辿っていく。4年生の4月から8月までに内定をもらえるかが一つのキーポイントだった。

しかし僕は社会人になることを全否定していた。電車通学だったので、毎日満員電車に揺られながら通勤しているサラリーマンたちを見ては辟易していた。大学までの道中も必ず仏頂面のサラリーマンたちに遭遇するので、僕はえんがちょをして通学していたのだ。だってこんな大人にはなりたくないでしょ?

そうは言っても僕は奨学金とオカンから借りた学費を合わせた、およそ300万円の借金が発生していたので兎に角、どこでもいいから就職を決めなければならなかった。

大学構内で求人票を一通り見たが、パッとしなかった。そもそも高卒で就職するのが嫌で進学を選んだだけなのだ。それも奨学金ではあるけれど、借金を拵えるのを理解した上で。大学に行けば何かが見つかるかも知れないと、当時の僕は思っていたのだろう。

しかし何も見つからなかった。アルバイトに追われる日々の中、2年間で700本以上の洋画ビデオをレンタルし、夜な夜な見ていた。するといつの間にか大学から足が遠のいていた。何も見つからないのなら、洋画を見ていた方が絶対面白いし、ビデオはアルバイト先で無料レンタルできたので、お金も使わずに済んだのだ。
今思えば阿保丸出し。蛸や烏賊にビンタでもされないと、当時の僕は変わらなかったと思う。時代は就職氷河期だったけど就職浪人、今でいうフリーターになる人たちはほとんどいなかった。

そんな中、1社だけ興味のある会社が見つかり、説明会に足を運んだことがあった。その会社は進学塾を中心に業績を伸ばしている〇〇会社だった。

6月の雨季。パステルカラーの傘たちとすれ違いながら、僕は池袋のタワービルに向かった。
到着した会場には200人を超える学生たちで溢れ、熱気に包まれていた。

1時間30分の会社説明会が始まった。壇上には50代と思われるメガネをかけた社長と、30歳前後の女性社員が立っている。
社長は挨拶もそこそこに、「君たち、新聞は読んでいるのか? 朝日、読売、日経は最低条件だぞ!」といきなりキレだしたのだ。まるで成果の上がらない従業員たちを罵倒するかのように。場内の雰囲気がガラッと変わってしまった。

その後もメガネ社長は、今の若い世代は辛抱がたりない、野心がない、挨拶ができないと、不平不満をずっとこぼす始末。それはオタクの従業員だけでしょ? と思いながら僕は聞いていた。
さらにヒートアップする社長。メガネがずれてもお構いなし。そのうち興奮しすぎて頭の血管が切れて昏倒してしまうのではと、こちらが心配するほど熱弁をふるっていた。

そんな状態が30分も続いた。周囲を見ると、みんなだらけ始めていた。だってそうだろう。これから希望を胸に社会に出ていく200人の就活生を前にして、社長がゆで蛸のように顔を赤くして、終始キレているのだから。

すると社長は自分の熱意が伝わっていないのだと思ったのだろう。今度は連れてきた女性社員に向かって、「だからワシもいつも言っているんだ、彼女にな。早く結婚して子供を産めと! 君も33歳やろ?」
今なら大問題であるこの発言を、何の躊躇もなく言ってしまうところが、この社長の、会社の限界なんだと僕は結論づけた。今風に言えば、完全なブラックな会社って事だ。

開始から45分が経過した。
僕は席を立った。
ゆで蛸社長と目が合ったけど、彼は何も言わずにまた自分の世界観に戻って行った。
「ご気分でも悪くなりましたか?」
受付の女性が声をかけてきた。
「ええ。色々な意味で」
僕は軽く会釈をすると、女性がお大事にと言った。
エレベーターが到着した。
僕はエレベーターに乗り込んだ。
するとあっという間にエレベーターが満員になって、ブザーが鳴ったのだ。隣にいた就活生から「よく出てくれました。僕も限界だったんです」と言われた。
すると隣のエレベーターからもブザー音が聞こえた。ブザー音は合計5回も鳴った。つまり5台ある全てのエレベーターのブザー音が鳴ったのだ。おそらく一気に70人近くが席を立ったはず。
今頃ゆで蛸社長は、再びヒートアップしているに違いない。
みんなも同じ苦痛を感じていたのに行動できずにいたようだ。何か複雑な気分だったけど、僕はちょっと嬉しかった。
それはそうだ。だって会社の理念や将来展望などの話が一切なかったのだから。これならスーパーやファミレスでアルバイトをしているおばちゃん達の愚痴を聞いている方がよっぽどマシだ。

ゆで蛸社長は、熱意という意味を完全にはきちがえていた。


この就活以来、僕は何も行動を起こさなかった。

年が明けてからようやっとハローワークに足を運んだ僕は、何とか就職を決めたのであった。

今の学生たちに言えることは、自分の好きなことを仕事にしなさいと言いたい。間違っても就職しなければならないという考え方を捨てることだ。周囲のみんなが就職するから、30歳までに結婚しなくちゃとか、自分は世間より劣っているとか、こんな小さなことを考えるような大人にはならないで欲しい。

両親、親族、教師、今まで接してきた大人たちから得たものを、一度捨てること。真っ新な状態で、自分の好きな事だけに時間を注いで生きていくことが最も肝要なのだ。それを探す為の時間と勉強を惜しんではいけない。

我慢に我慢を重ねて仕事をしても得るものは何もない。ストレスが溜まり目つきが悪くなり体重が増加し、気がつけば冴えない仲間たちと愚痴をこぼしながら居酒屋で酒を飲んでいる残念なサラリーマンに成り下がっているのだ。我慢の先に幸せなど待っていない。更なる我慢しか待っていないことに早く気づくべきだ。

なにもサラリーマンが悪だと肯定しているのではない。夢や希望を持たずに単にサラリーマンになることだけはやめようと提案しているのだ。いつの日か必ず我慢の限界を迎え、心が折れる時がくる。そうなると今までのダメージが一気にのしかかってきて、回復するまでに膨大な時間を要してしまうからだ。人生は思うほど長くはないのだから………。

1人でも多くの人たちが、毎日笑顔で暮して欲しいと願っている。その為にはやはり自分が好きな仕事に携わるのが一番の近道だと僕は信じている。好きでもない仕事をしていても素敵な人間にはなれないし、素敵な異性とも出会えないように世の中はできているのだ。

人生とは、自分の好きな分野を見つけて挑戦・努力していく過程の事を言うのだと思う。その為には周囲に対して常にアンテナを張っておくことだ。
また自分と向き合うことを忘れてはならない。孤独を排除して仲間と群れていては、いつまで経っても自分の人生は見つけられないのだ。


【おしまい】


いかがだったでしょうか?
不貞腐れた僕とゆで蛸社長とは、もしかしたら表裏一体なのではと感じました。それにずいぶんと偉そうに駄文を書いていますよネ!
20代の休日に何を思ったのか、突然書きたいという衝動に駆られました。
きっと就活を怠った反動なのだと、今思えば納得できます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今日は奮発して、家で蛸をゆでてみたいと思います。


【了】

https://note.com/kind_willet742/n/n279caad02bb7?sub_rt=share_pw

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