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私は顔文字が嫌いだ

わたくしは、顔文字が嫌いだ。

わたくしは、言葉が好きだから
「ニュアンス」や「情緒」は、言葉で表現してある方が、いい。

顔文字や絵文字を多用する人は、
「私はカジュアルでフランク」っていう言外のセルフイメージを
演出しているつもりなのかなとも思ったりするが、
受け手であるわたくしにとっては、
むしろ逆に作用してしまう事の方が多い。

そんなことを言いながら、わたくしが全く顔文字や、絵文字を使わないかというとそんなことはなく、
結局、それこそ、ニュアンスの問題なのかもな、と思う。

その日、携帯が鳴ったのは
わたくしが、父の入院先の病院から帰って、一息つこうかとした所だった。

「明日、いらっしゃいますか?」

「あ、いつもありがとうございます。
はい。明日、伺います。」

「そうですか。じゃあ、その時
紙おむつをご用意なさってください。
これから入用になりますから。」

「あ、はい。」

「大人用のMサイズです。」

「判りました。・・・あの、今日の方がいいですよね?」

「そうですねえ。まあ、できれば早い方がありがたいですけれど。
下の売店に売っていますから。」

「はい。判りました。」

病院までは、バスを乗り継いで、待ち時間を入れると、
自宅から片道1時間かかる。

それでも、父が不自由しないために、
看護婦さんに少しでも負担をかけないように。

私は、また、病院へと向かった。

病院へ着いたのは1時過ぎで
売店に向かうと
あ、あった。
これだな。
紙おむつのMサイズ。

病室で、病室のロッカーに入れて
看護婦さんに
「あの、紙おむつ、ロッカーに入れておきましたので・・・。よろしくお願いします。」

そう言って帰った。

帰宅して
「お茶でも飲んで、ゆっくりしなさい」という母の声に
「そうだねー」と答えていると、携帯が鳴った。

いつもの方とは違う看護婦さんの声。

「あー、すみません。今日、持ってこられた紙おむつ、
なんでこのサイズにしはったんですか?
Lサイズじゃないと、駄目なんですけど。」

「え?
・・・・あ、そうですか。
・・・・Lサイズなら、大丈夫ですか?」

「Mサイズは、小さいんですよ。」

「・・・判りました。すぐに、そのサイズのを持ってあがります。」

心配そうな母に「大丈夫、ちょっと行って来るから」
そう言ってわたくしは、再度病院へ向かった。

病院へ着いたのは4時過ぎで、急ぎ足で売店に向かうと
売店のシャッターは、閉まっていた。

え?

病院の周りには1件コンビニがあるだけで、
コンビニには紙おむつは、売っていない。

20分程行った所にスーパーがある。

そこに、あるかもしれない。

タクシーを探したけれど
タクシーはいなくて
バスを待つ時間が惜しくてわたくしは、歩いた。

必死に歩いてスーパーに着いて
「紙おむつ、紙おむつ・・・」

呪文のように頭の中で繰り返して
ああ、赤ちゃん用のしか、ない。

あ、あそこのは、大人用??
だめだ。
Mサイズじゃん。

「すみません、こちらのLサイズ、ありませんか?」

ちょっと見てきますと言って裏手に引っ込んだ店員さんが
「1個ありました。こちらでよろしいですか?」
と持って来てくれた時は、天使に見えたよ。

その包みを抱えてまた歩いて病院に帰って
詰所に
「・・・Lサイズ、用意できました。すみませんでした。」

家に帰って
ふううう~~と思ったら
また、携帯が、鳴った。

「LLサイズ、用意してもらえます?
なんか、Lサイズだと、やりにくい気もするんで」

「・・・判りました。」

今度は、病院へ向かう途中の薬局に寄る。

LLサイズの紙おむつ。

父が不自由しないように。
看護婦さんに少しでも負担をかけないように。

帰宅したらもう8時を過ぎていて

「今日は「THE病院の日」だったねー」

なんて、母と話して笑い話にして。

夕食後
PCを開いたら、友達からメッセージが届いてた。

なんだろねってメッセージを開いてみると

「tonchikiちゃん、お帰りなさい。
今日も一日ごくろうさま。 (^_^) 」

PCの前で
号泣した。

わたくしは、顔文字が嫌いだ。

でも
一度

顔文字で、泣いたことが、ある。

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