全て、貴方のせいです。 第4話
概要
筆者は、死神と髑髏を崇拝する村が実在した事を突き止めた。存在を消されたこのカルトは、筆者の素性と関係する事が分かった。
鬼哭啾々
これは、おばあちゃんの日記に記されていた内容を、私がまとめたものになります。
日本の発展が進むにつれ、村人は生贄を捧げなくなりました。過疎化も進んだからです。村は外に人を出さず、外からの人も受け入れなかった為、成長することは不可能でした。
限界集落と化すのは避けられない。その状況を危惧した僧侶が、宗教改革を皆に提案しました。
骨を山に埋め、逆さ事も辞め、髑髏教の痕跡を無くす。忌み子が生まれても殺さないし、高齢者は村人が協力して介護する。そうやって、普通の田舎に擬態する。
それでも、村人に培われた宗教観は変わらない。依然、死神を崇拝し続ける。髑髏本尊に祈る気持ちがあればいいと、僧侶は村人を説得し、髑髏寺は廃寺と化したのです。
「どちらにせよ、村は終わっていた」
おばあちゃんはそう書いていました。村から人が消える結末に、変わりはなかったのです。
何千年も前から髑髏教は存在してきましたが、年月が経つ毎に教えの捉え方も変わっていました。そのせいで愚かな選択をしたと、おばあちゃんは言います。
体力に自信ある何人かの村人が協力し、山に骨を埋める事にしました。
朝から始めて日が暮れた頃に終わり、帰ろうとした時の事。ちょうど、髑髏岩がある付近でした。村人達は次々と足を滑らせ、崖から転がり落ちて死んだそうです。それはまるで、姥捨山に老人を捨てた様に。
「祟りじゃよ」
おばあちゃんは、崖の下から無数の手が伸びるのを見たそうです。なのに、おばあちゃんの足は掴まれませんでした。
おばあちゃんが生き残ったのは、子供を身ごもっていたからではないかと言います。誰の子かも分からないのに、妊娠していたと、震えた文字で記していました。その子供が、私の父です。
言葉を喋れるようになった頃、「僕の本当の名前は、髑髏本尊なんだ」と言ってきたそうです。
「呪われた子じゃ」
そうは言いつつも普段は普通の子供で、また、おばあちゃんにとっても腹を痛めた子である為、大切に育てていました。そんなある日、おばあちゃんが当時小学生の父を連れ、散歩中に起きた出来事です。
向かいから歩く他の子を、迫り来る軽トラの前に突き飛ばしたのが、最初の殺人との事。被害者の子は、双子の弟だったそうです。
あまりのおぞましさに手に負えないと、霊能力者のもとを訪ねました。そこで、こう言われたのです。
「この子の周りは狂人と死人だらけになる」
そう言って手の甲を合わせ、「死は平等に訪れる」と連呼しながら、壁に頭を打ちつけました。気が狂ったように、何度も、何度も。血が出ても止めず。おばあちゃんは思わず悲鳴をあげたそうです。
腰を抜かして怯えている時、ふと隣を見ると、父が笑いながら裏拍手をしていたそう。
「息子は霊能力者の屍を食べた。真っ赤に濡れた口元は一生忘れん。ワシは生贄を捧げ続ける役割を与えられたんじゃとわかった。その為に生かされたんじゃ」
父は、普段はそこら辺に居る子供の様に見えます。ただ、たまに狂気が見え隠れするそうです。
皆と同じように学校に通い、勉強と部活に取り組みました。その間も、時よりおばあちゃんは村人を生贄として捧げていました。
中学生になると、父に魅入られる女性が多かったと言います。その内の一人が子を授かりました。
「同級生の子が妊娠したと聞いた時は、呪いはまだ続くんじゃと恐ろしくなった。いつになったら終わるのやら、と」
その時の子供が、私です。
2000年4月4日、午前4時44分。それが、私の産まれた時刻。
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