全て、貴方のせいです。 第6話
概要
私は、髑髏教の真実を追っていた。そんな中、急に自殺願望が湧き上がってきて… …。
虚栗
施設は全焼。夜中、残骸と化した施設へ忍び込みました。そこで発見したのは、焼け焦げたおばあちゃんの日記。
落ちていた窓ガラスの破片を手に取り、手首を切りました。希死念慮があったわけでもないのに、惹き付けられるように、死にたくなったのです。
柱に持たれ、流れる血を見ていると、涙が溢れてきました。
しばらく泣いた後、いつの間にか眠ってしまいました。
次に目覚めたのは病室。唯一の生き残りになった私を、マスメディアやネット民は「奇跡の子」として日夜騒ぎ立てました。「呪いの子」とか言ってみたり、人間とは適当な生き物ですね。
そんな事もよそに、私はボールペンを使って体に『彁』と書きまくりました。体を埋め尽くすようにこの文字を書きたかったけど、背中だけはどうしても書けません。
それから、別の養護施設に行く運びとなりました。浅草にある、綺麗な建物です。
施設長は私に会うやいなや、汚物でも見るような目をしていました。リストカットの痕がある上、刺青の如く、体中に文字が入っているのですから、無理もありません。
あと、服があまりにも汚れているからと、和服をくれました。灰色の着物です。
これを着て、羽根ペンを使って作文をしている時、心の底から楽しいと感じました。
図書室があり、そこには壁一面に本が並んでいます。色んな本を読んで感受性を養い、知識を蓄え、想像力を働かせて、言葉を紡いでいく。
私はバッドエンドのホラーを書くのが大好きでした。そんな様子を見た職員がコンクールに応募してくれて、なんと優秀賞。
「あの奇跡の子が随筆家に!」とマスメディアは囃し立てました。施設の職員や子供達にも褒められ、私はまんざらでもない。
今まで、私は自らが何者なのかわかりませんでした。ここまで、周りに流されながら生きてきたんです。自分の意思で動いてきた感覚がなかったから。でも、執筆をするようになって、生きている実感が湧いてきました。
中身の無い自分。そこから連想して決めた筆名。
『虚栗』――
あれから月日が経ち、もう成人しました。入居中に出版社との契約も取れて、アパートも借りました。
瓶ビールで取っ散らかった和室。銀色の灰皿には、何十本も積み上げられたシケモクの山。
私は一日中、机に向かい、こうしてブログを書いています。
一睡もせず、食事すら忘れて、タバコを咥えながら筆を執る。煙を吸って、言葉を吐く。それが毎日の習慣でした。
正体を隠して人間社会に溶け込む為、表舞台には立ちません。
そんな私を、周りはこう呼びました。
――筆談の覆面作家。
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