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またかよ入院日記 5

大どんでんの前回はこちら。


再入院まで

そんなわけで(前回まで参照)、3月のある日、またしても入院セットを抱えて「患者」と相成ったのでした。

入院に至るまでもいろいろあったのですがそこは省略。しばらく風呂に入れなくなるので、事前にオットと某所の温泉でまったりしてきたのは内緒でも何でもありません。部屋にお風呂があって寒風吹きすさぶ日本海が見え、大変結構なお宿でした。ごはんもおいしかったし。

春を待つ日本海を望む
断崖の上に建っているホテルノイシュロス小樽

厳密に言うと、こちらは温泉ではなくて海水を引き込んで温めているようでしたが、それでも結局「塩泉」ですよね。
とにかくお部屋がステキでお部屋のお風呂もステキでごはんも結構で大満足でした。シーズンオフで静かだったしね。
よし、これで手術に耐えられるぞ。

お部屋のあかり
ごはんも結構でございました


さあ病院です。

このあいだ入院して手術(腹腔鏡)をやったばかりなので、なんだか入院のベテランになったような気持ちです。入るのも前回と同じ階。
ただし今度は普通の個室が空いていたので、そちらにしてもらいました。部屋にトイレとシャワーブースが付いています。

いろいろ持ってきたのはこんな本たち。どこまで読めるでしょうか。

手当たり次第にいろいろ持ってきた

最初にすぐ読んじゃったのは「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」(青柳碧人 双葉文庫)。次に手に取ったのは「Musik macht Frei(音楽は自由にする)」(坂本龍一 新潮文庫)。教授、まだまだ生きて活躍して欲しかったなあ。本を読んだら実にとんがった面白い人でした。

入院初日は翌日の手術準備だけなので、本の合間に病棟の共用のお風呂に湯を張ってがっつり入ってきました。まあこう書くとほんとにわたしって風呂が好きね。好きなんですよ実際。髪も洗ったしな。よし、準備OK。眠れないけど、まあ準備OKでしょう。


手術当日

当日になったら3ヶ月前の腹腔鏡手術と全く同じなんです。
朝から絶食で、
浣腸の看護師さんが来て(今回は少しだけがんばった)、
そのあと手術までひたすら待つ。

本を読んだり病室やデイルームからの景色を眺めたり、本当に何もすることがありません。ぼーっと待っている中で、「手術って、自分(患者)にとっては一生に何度もない大変な経験なんだけど、医師やスタッフにとってはどうなのかなあ」ってふと思いました。

今回の森野の手術は「子宮全摘、大網切除」です。前回の腹腔鏡では「卵巣腫瘍(卵巣も卵管も一緒に)摘出」でした。
人間の身体を切ったり穴開けたりして臓器を取っちゃうわけですよ。想像するだにスプラッタですね。

だけどこうした手術はとてもポピュラーで、入院した病院のホームページを見たら年間に50例とか100例とか実施されていました。50例って、毎週一回はお医者さんの誰かが患者さんの腹を切ってるってことです。お医者さんにとってはこういう手術ってそれほどレアなわけではない。大変困難で大手術って訳でもない(多分)。もしかすると先週も先々週も、あるいは来週も同じ手術をするのかもしれない。執刀医だけでなく、麻酔医も、手術室スタッフの看護師さんたちも。

それって自分の仕事で言ったらどういう感じなんだろう……とぼんやり思いました。

森野の仕事は基本的にひとりでやることが多いんだけれど、人と関わることも多々あり、時には大勢の前でプレゼンしたり話す事もあります。
そういった、自分にとっての「研修の講師」みたいな位置付けなんだろうか。毎週とは言わないがたまにあるし、大きな仕事だからそのためには準備もいるし。でも準備は通常業務と並行して行っていました。医師にとって手術もそんなものなのかなあ。前にも何回もしていて、さして緊張するものでも無いのかなあ。でも軽い手術だって患者の命に関わるよね。

そんなことをぐるぐる考えているうちに「もう少しです」の連絡が来ました。既に手術用の浴衣のような術衣に着替えていたので、前と同様、体温保持のためにこたつソックスをはき上着を羽織ります。
今回は腹腔鏡ではなく開腹です。だんだんドキドキしてきました。
 

硬膜外麻酔

とうとう時間になり、看護師さんに連れられて手術室へと赴きました。
前回と全く一緒の流れ。キャップをかぶり、スタッフ全員もキャップをかぶってマスクをしている中に入っていき手術台に横たわります。

今回は開腹手術なので、実は麻酔が前回と違っていました。
全身麻酔はするのですが、それ以外に、痛み止めのために硬膜外麻酔をします。実はこれが一番怖かったのです。

硬膜外麻酔は、背中に麻酔を打ってから脊髄のところに細いカテーテルを入れ、そこから痛み止め用の麻酔を入れる方法です。

背中ですよ
脊髄ですよ

一体どういう感覚なんだろう、カテーテル自体は麻酔を効かせた中で入れるにせよ、最初の背中への麻酔はどんだけ痛いのだろうとビクビクしていたわけです。

ほぼほぼ裸の状態で(上に大きなタオルは掛けてくれている。そういう気遣いは有難い)横向きになり、麻酔医が背中に針を刺すのを待っているときの気持ちったら!
もう絶対血圧が200くらいまで上がっていたと思います。脈も150くらいだったんじゃないか。ドキドキドキドキ……

もうひとつ前回と違うのは、重大な手術ミスを回避するため、尿管ステントという細い管(?)を両方の腎臓近くまで入れる(そしてあとで血尿の原因になる)ことでした。こちらも大層な処置なんですけど全身麻酔してから意識のない中で行われるんで、正直、うまくやってねーくらいの気持ち。

しかし硬膜外麻酔は、全身麻酔に先立って行われるのです。意識がある中で。
なので震え上がっていたんですね。

そうしたら!

チクッ
あれ?

もう麻酔したの?

ちょっと背中に妙な感覚が走りますが……

「はい、うまく入りましたよ」
との麻酔医の声が聞こえました。
えっ、もう終わったの?
うっそーーーほとんど痛くなかったやん
あれで硬膜外麻酔OKなの?
麻酔医先生優秀!!
すばらしい!!
ブラボー!!
スタンディングオベーション!!!!

とまあ、全身麻酔以前の森野の記憶はここまででした。

次はこちら。


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