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「無意識」夢の扉と現実の鍵「自我」


あなたは眠っているときに見る世界を意味のない虚構とお思いでしょうか?

夢とは無意識の海からのあなたへの呼びかけです。
海と表現したのはまさにその広大さ故で、カール・グスタフ・ユング氏は100冊もの書籍を書き記すことでその世界の在り様を人々に提示したのでした。

以下はユング心理学研究所による自我と無意識の構図になります。

私たちが「私」と認識している「自我」は無意識の海に漂う小島のようなものといえるでしょう。

さらにこれを立体的にしたときの構図が以下のようになります。

各時代の預言者達が聞いた声とは、無意識の中で核をなす「自己」であるとユングは考えたのです。

なんにしても、無意識からのメッセージが夢や声としてあなたにまで届いているわけです。

そういったメッセージこそが現実の扉を開く鍵となり得る、ということです。


とある男性のおはなしをしましょう。

その男性は自らの仕事に誇りを持ち、毎日を輝きながら生きています。
自分のやっていることに疑いがなく、夜にはやり終えたという確かな感触を抱きながら眠りにつきます。

しかし初めからそうだったわけではありません。

現実で見つけた鍵を使って夢の扉を開き、そこで見つけた鍵を使って現実の扉を開けたのです。

どういうことか、ご説明いたします。

彼がその仕事に転職してすぐの頃のこと。
彼は以前に勤めていた会社で精神的な傷を負い、他人に対して警戒や疑いを滲ませた態度で過ごしていました。

そのような自分を変えたいと、思い切って全く違う業界に飛び込んだものの、他人が自身を傷つけるかもしれない恐怖から他者と円滑なコミュニケーションがとれず成果は芳しくない状況でした。

職場の人々はみな優しく、彼自身もそれを頭では理解できていたものの、鎧として纏ったプライドを脱ぎされないでいたのです。

あるとき彼は会社の飲み会に誘われました。
自宅が離れていること、田舎で泊まれるような施設もないこと、何よりも他者への恐怖があり彼は誘いを一度は断ろうとしました。

しかし彼は一歩踏みとどまり、勇気をもってその誘いを受けることにしたのです。その方がいい気がしていたからです。後先のことはどうにかなる気がしていました。

飲み会は何事もなく終わり、彼が寝所に困っていると会社に宿泊用のスペースがあることを上司が教えてくれました。

宿泊スペースは物置を改造したような空間で、暖房機器が付いているものの隙間風が冷たく、窓もついていませんでしたが、酔いがそういったことに対する不快感を忘れさせ、泥水に沈むように彼は夢へと落ちていきました。

夢の中の彼はまるでその日と同じように飲み会をしていました。
隣に座っていたのは大学時代の女友達でした。そのころ彼はバンド活動をしており、その女性はメンバーの1人でした。

彼は昔から教室で一人で本を読んでいました。
あるきっかけから同級の男子に誘われて楽器を始めました。自分のキャラではない、と思いつつもそうではない自分があり得るのではないか、という想いが彼に勇気を与えたのです。

彼女は彼がこれまで出会ってきた中で1番の美人で、初めの頃は話すたびにいつも胸が高鳴っていました。
単純に顔立ちが整っているというだけでなく、何とも表現しがたい輝きを彼女が放っていたのです。

(こんな人が本当にいるんだ)
彼はいつもそう思っていました。


彼女は当時と変わらない輝きを放ちながら顔を寄せてきて彼の顔を覗き込みました。
彼は当時と変わらない胸の高鳴りを思い出しました。

彼女と彼は見つめ合う形となり、

そして彼女は優しく、けれど真剣に言ったのでした。

「生まれ変わることはできないよ。
 だけど変わってはいけるから」


彼が子どもの頃に流れていたアニメの主題歌の一節でした。

それを思い出したとき、彼はこちら側へ戻ってきました。

目を覚ました彼はその夢が何か特別な意味を持っていることを確信していました。

その夢を見たその場所が彼にとって特別な意味を持っていることにも確信したのです。

それから彼は走り出したのでした。
今はわからずとも、その仕事を続けることに大切な意味があることを確信したからです。


無意識の世界、つまりは真実の世界では存在はエネルギー体であります。
感覚器官によってでしか外界を認識することができない我々は夢の世界でエネルギー体を認識するために過去の経験情報を当てはめます。

彼を癒し、そこにいる意味を確信させたエネルギー体とその声を、彼は大学時代の同級生や子どもの頃に聴いた音楽として認識したのです。

また、酔いというコンディションや会社の宿泊部屋という環境も何かしらその夢を見させた、覚えておかせた要因であったでしょう。

言い換えればこうなります。

彼がもし子どもの頃にその曲を聴いていなかったら、もしくは女の子向けのアニメだからという偏見によってその曲のメッセージを受け取れなかったとしたら、

彼がもし学生時代に勇気を出さずバンドの誘いを断り、メンバーの女性への胸の高鳴りを経験していなかったとしたら、

もしも、会社の飲み会の誘いを断り一人家に帰っていたとしたら、

精神的な痛みから目を背け、鎧を纏って生きていくことを「そういうものだ」とし、転職という選択をとらなかったとしたら、

どれか一つでも鍵が欠けていれば、無意識からのメッセージを認識するための材料(経験)がないので、夢の扉は開かれることはなかった、といえるのです。

そして夢の扉が開かれなければ、「そこにいる意味(確信)」という鍵を得ることはできず、現実の「輝いている日々」という扉を開くことはできなかったといえるでしょう。


あなたは眠っているときにいる世界を意味のない虚構とお思いでしょうか?

心の瞳で世界を眺めたのなら

そうすれば意味のないものなど一つもないことが見えてくるでしょう?

総て繋がっていることが見えてくるでしょう?

心の瞳で君を見つめれば



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