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モモタマナの種でグリーンパスタを作る01:皮むき大変

01:導入:

水生動物学研究室主宰の太田欽也です。今回は、私たちの臨海研究場に植わっているモモタマナについて解説してゆきます。このNoteは「モモタマナの種でグリーンパスタを作る詳しい説明」Youtube動画のテキスト版です。動画を見る前に文字で内容を確認したい人や、文字情報のほうが理解が早いとお考えの方は参考にしてみてください。しかし、動画のほうが圧倒的に情報量が多いのでまず動画をご覧になられることを強くお勧めします。こちらのリンク(https://youtu.be/Itjl4Q0E90c)、もしくは下の画面をクリックしてご覧ください。

 毎年、秋から冬になると赤くて大きなはっぱを落とす、この樹。熱帯魚が好きな人でしたら、この樹の葉っぱがマジックリーフとして売られていることをご存じかもしれません。 この葉っぱに多く含まれるタンニン酸を利用して水質を調整するのですね。我々の臨海実験場の周囲にはたくさん養殖池がありますので、その影響だと思われます。この樹が7本植えられています。昔はこの葉っぱを使って養殖池の水質を整えていたのだと思われます。今はほとんどこの樹の葉っぱを使って水質を整えることはないのですが、昔の名残だとおもわれます。この樹が植えられているのです。
 さて、なんで、今回、わざわざこの樹の紹介をしようと思ったかといいますと、この実の中の種。これが美味しいみたいなのです。調べてみると、アーモンドやピーナッツに近いらしいのです。でも、周囲の台湾の人たちに聞いても誰も食べたことがないみたいなので、自分なりに試行錯誤して料理を作ってみることにしました。そして、この周囲特産のエビと合わせてグリーンパスタソースを作ってみました。なので、今回の動画は台湾宜蘭礁渓時潮村中央研究院臨海研究場スペシャル・エビ入りモモタマナ種グリーンパスタ解説の第一回となります。

02:収穫

この動画をとる前に、あれこれ調べたのですが、このモモタマナの実の食べ方についてはあまり資料が見つけられませんでした。時々、東南アジアや西南アジアのYoutubeクリエーターの人たちが手で割って食べているのを見たことがあるのですが、どうも、大量にこのモモタマナの実を処理して販売しているような人はいないようです。なので、あれこれ自分でいろいろ試してみました。
 まずは収穫方法です。実は熟すと勝手に落ちてきますのでそれらを拾い集めます。どうもこの実。香りが昆虫たちにとってたまらなく良いらしく落ちる前からハチやハエの類が集まっています。そして、おちたらすぐにアリが寄ってきます。当然、中に卵を産み付ける昆虫の仲間いますので、拾い上げてバケツに移すとこのような感じで幼虫が飛び出してきます。あと、アリも、大量にいるので、時より手に上ってきて咬まれます。なので、ちょっと、あまりにもこのような昆虫が多い場合はしばらく水につけておきます。
 そして、集めたら、このように日当たりのよいところに置いて乾燥させます。今回、あまり経験がなかったものですから、そのまま何も処理をせずに乾かしたものと、事前に皮をむいたものを準備することにしました。

03:皮むき

ちょっと、中を見てみましょう。このモモタマナの実の構造を少し切ってみるとこんな感じです。表面のうすい皮の下に虫たちがいかにも好きそうな果肉の層があり、その下は繊維でおおわれており、そして、さらにその下にはコルク質の層があります。つまり、この実は3重の異なる性質の弾力性のある装甲に守られております。そして、さらに、このコルク質の層の下には非常に硬い殻があり、その下にアーモンドのような実が入っています。ちょっと、見やすいように中を割ったものをお見せしていますが、ここまでたどり着くのが大変なのです。
 ちなみに、参考までに、果物の各部位の呼び方について調べてみました。この、一番外側の皮を外果皮、真ん中が中果皮、そして、この一番硬いところを内果皮と呼ぶようです。英語だと、Exocarp, Mesocarp, Endocarpとよばれるようです。そして、この内果皮のなかに食べられる種子があります。この種子は茶色の種皮に覆われていて、中はもっと白みがかった色をしております。たしかに、アーモンドのようです。
 つまり、このモモタマナの実は、この中果皮に衝撃を吸収する繊維とクッション材となるコルク状の組織を持ち、内果皮に猛烈に硬い殻を備えているということになります。そして、可食部である種子にたどり着くにはこれら3層構造をすべて取り除く必要があるのです。ちょっと、自分の勉強のために用語を調べてみました。でも、日常使い慣れていないので、この辺の用語はいい加減になりますが…そこはご了承ください。
 では、最初の表面、果肉、繊維の層を取り除くところを詳しく見ていきましょう。実際、いろいろ試したのですが、いまだに最適な方法は見つけられておりません。この動画を収録したときはこのようにひたすらナイフで皮をむいておりました。まだ生のうちに、やわらかい組織をとってしまったほうが作業が楽だと感じたのです。
 しかし、当然ですが手動で一つ一つむくには限界があるのです。なので、どうしてもいくつか放置してしまう実が出てきてしまいます。そうなると、そのまま乾いてしまうんですよね。でも、それはそれで、今回の試みとして、乾燥させてから、別の方法でこの皮を取り除くことにしまました。ラジオペンチを使って一つ一つ繊維質の皮を取り除きました。
 ひょっとしたら、皆さんの中に。「わざわざ、その繊維質とコルク質の部分は取らなくても、石かハンマーでたたき割ればいいのでは?」とお考えになられる方もおられるかと思います。
 はい、私もそうもいました。たしかに、そうやって中の種子を取り出すこともできなくはないのです。しかし、どうもこの繊維やコルク質の部分が衝撃をうまく吸収しているようで思ったようにきれいに割れなかったのです。なので、このような手間のかかる方法をやっているのです。でも、ちょっと、説明するよりも実際の作業の様子を見てもらうのが良いと思いますのでご覧ください。

04:殻割の試行錯誤

まずは、石斧。ロマンを感じます。これで、すべての殻を割り終わり、完全にすべての作業をオーガニック系・サステイナブル系の道具で済ませることができたらなんて素敵なのでしょう。そう思いました。では、見てください。
 はい、大変です。まず、自分の指を叩き潰す危険性と向き合わなくてはなりません。そして、木の柄の穴に軽く固定されただけの石斧の石がいつすっぽ抜けて飛んでくるかわかりません。柄もたたいているうちに割れてきます。皮むきをしていない乾燥したモモタマナの実をたたいて中の種子を取り出すまで結構時間がかかっているうえに、高確率で種子がボロボロです。
 というわけで、文明の利器を使いました。金属製くるみ割り器(大体アマゾンで2000-3000円ぐらい.17$?)。これ、良さそうなんです。はい、しかしながら、これまたものすごーく時間がかかってしまうんです。もう、この、柄を見てください。曲がってます。そして、時間をみてみると、もう石斧とあまり変わらないんですよね。使っているうちにどんどん曲がり最終的に、もうモモタマナの実がこの間に入らないようになってまいりました。
 そして、さらに、「カニ用ハサミ、くるみ割り付き」。こいつならやってくれるはずです。期待が持てます…が、結局、柄が曲がるほど握ってもなかなかうまく割れてくれないんですよね。実際に買ってきた時と比べて、もう鬼のように柄が曲がっています。
 そうして、そうなると、これはそういうトンカチを買って来ればよいのではないかと思うわけです。そもそも、最初に石斧みたいなこだわりの過ぎる道具ではなくて、素直にしっかりとしたハンマーを使えばよいだろうと。いろいろ種類もありますので選択の余地もあるわけですし。なので、打撃面に凹凸のついた仮枠ハンマーを購入。そして、これも試してみました。でも、どうも、石斧と状況はあまり変わりませんでした。たしかに、安全性は増しますが、原理は変わらないので当然の結果といえば当然の結果です。
 で、あれこれやってたどり着いたのは、この梃式マカダミアナッツ割り器。これです。これだと、指が完全に挟まれてケガをする危険性は少なくなります。なおかつ、徐々に力を入れながら弾力のある繊維質やコルク質の組織を押しつぶしながら圧力をかけることができます。そして、程よく割れたところで力を緩めると中の種子をつぶさずに取り出すことができます。これ、これです。これだよ。と手ごたえを感じたところで…今回の本編は終了です。

05:次回予告

はい、これで、このグリーンパスタの材料の下ごしらえのための下ごしらえの途中まで来ました。こちらのパスタはちゃんと自分で作りましたので、ミッションは成功しているのです。しかし、そこに至るまでの道のりはそんなに簡単ではないのです。次回は、殻を割る様子とした下処理をする様子までお見せすることができると思いますので、お待ちください。


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