お題「小判食え」

【コバンザメ】(410文字)

「おれっち、この前『このコバンザメ野郎っ』って言われたんス」
「それで？」
「でも、おれっち意味わかんねくて」
「…お前がバカなのは知ってるよ。ほら、これだ」
（アニキ、スマホで検索して見せる）

「へー、大きい魚にくっ付いて身を守りラクをする…なるほどなぁ」
「バカにされたって理解できたか？」
「え？褒められたんじゃないスか。スゲーっスよね。めっちゃ進化してるっス」
「……まぁ、お前がそれでいいなら」
「それよりアニキ、これ、小判て言うより草履みたいじゃないスか？」

　たしかに『小判にそっくり』などと書いてはあるが、草履か草鞋の裏側みたいだ。
「でも、それじゃ名前は『ゾウリザメ』とか『ワラジザメ』になるぞ」

「そうか。なんかダメっぽい名前になっちゃいますね。そーいや奴ら、おれっちに『コバンザメ野郎っ』って言った後、『小判食えっ』なんつって笑ってたんスけど、『ゾウリ食えっ』だとバカにされた気がしますもんね」

　…だから、バカにされてんだよ。

おわり

(2023/11/9 作)

たらはかに様の11/5～11/11のイベントに参加させていただきました☆
今回は裏お題です～

こういうおバカさんを書くのが大好きなんですよね～(*´ω`*)
あー、癒される…

※先日、村上春樹氏の『海辺のカフカ』を再読したのですが、星野くんというキャラクターが「おれっち」って言うんですよね。それが好きで。
ちなみに、本来主人公がするべき苦労を、ナカタさんとか星野くんというサブキャラが担っているということに再読してあらためて気づきました。
考えてみたら不思議な小説ですよね…。大好きだけど。