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Pluto 小さく死んで大きく生まれ変わる②

たかが50年ぽっちしか生きていない自分が公転周期が約250年近くにもなる冥王星について語るなんて何だか恐れ多い気持ちになったりもする。冥王星には威厳というか、やはり他の星とはひと味違うカリスマチックな魅力がある。

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非情で容赦なく見える冥王星にも隠された優しさがある。それはその人が生きていく上でこれだけは絶対に手放してはいけないというものだけは必ず置いていってくれるのだ。

冥王星がもたらす嵐は、その人の魂の望みを叶えようとするために起きる。しかし、その嵐はその人がこれまで大切にして来たものをどんどん奪い去っていく。

近親者との別れ、離婚、リストラ、職場におけるハラスメント、友人との別離、大病など冥王星がもたらす変化の多くは決して心地良いとはいえない体験だったりする。その一方でヘッドハンティングされたり、職場で上司を抜いて重要なポストに大抜擢されるようなケースもある。これらも一見すると喜ばしい変化ではあるけれど冥王星の有無を言わせぬ支配の下で起こるので当の本人にしてみればプレッシャーを感じるだけでなく、周囲からの羨望の眼差しと同時に嫉妬ややっかみにも耐えなければならない。

自分の意図しないところで望んでもないことが起きる・・・人は冥王星がもたらす変化に否応なく巻き込まれ「いったいどうしてこんなことになったのか?」その答えを自問自答する。もちろん、その答えは簡単にはわからない。そうしている間にもどんどん状況は思わぬ方向に進んでいって、ふと周りを見渡すと元居た場所からずいぶん遠くにやって来たことに気づく。ただ現状を受け入れることでしか前に進めない、そんな場所に自分が立っていることに愕然とする。

失ったもの、過ぎ去った時間をいくら懐かしんでも、もうそこには戻ることはできない。ただ降参するしかないような状況の中で人は自ら生まれ変わることを決意する。これまで自分が手にして来た数々のもの、周囲からの評価、地位やプライドが奪われても、なお自分の内に残るものは何なのかを探す新たな旅に出るのだ。

満身創痍、そんな状況の中でも刻々と時は過ぎていく。冥王星がもたらす変化は後戻りできない。それは冥王星が「死」を扱う星だからだ。「死」はやり直すことができない。一生に一回しか訪れない体験を生きながらに味わう。それは自分自身の心や肉体に大きな負荷を与える。場合によっては本当に「死」の近くまで行くようなこともないわけではない。冥王星の影響を強く受けるとき、急死に一生・・・そんな体験をする人もいる。

冥王星の凄さは人をいったん「死」に近づけ、そこから「再生させる」ところにある。生きながら死に近づく臨死体験のように。

人は自らの意図、期待、執着、我欲を超えた世界に放り込まれ、これまでの生き方や価値観を変えざるを得ない状況を潜り抜け、そこで表面的な自分の意図を超えた、自らの最も深いところにある魂の望みに気づく。その道中は果てしなく厳しい山に挑んでいるかのようだ。だが、その山にも必ず頂上はある。

冥王星が出生の天体とハードなアスペクトを組みアプライしていくときの緊張感はまるで暗闇に吸い込まれていくような独特な感覚を伴う。またそれとは裏腹に自分がこれまで知らなかったもう一人の自分に出会えるのではないかという微かな期待や高揚感を感じたりもする。

セパレートしていくときは登山で言えば下山するプロセスと重なる。緊張が緩み、小さな達成感も味わった後、気を抜いてしまうと事故につながるので、まだ完全にリラックスすることは出来ない。足元に気を配り、慎重に歩みを進めることを忘れてはいけない。

そうして無事麓に辿り着き、ようやくハードなアスペクトから解放されたその時、ふと振り返ると自分が登って来た山の大きさに驚かされるのだ。

冥王星はその圧倒的な力で「自分が人生に望んでいるものは何なのか?」という問いを反転させ「人生が自分に何を望んでいるのか?」と問いかける。問いの主が変わることで目の前に広がる景色は全く異なるものになる。

ここまでの一連の流れには数年の時間を要する。公転周期が250年近くある冥王星の影響は長期に及ぶ。じっくり時間という重石を乗せて、その人を根本から生まれ変わらせていく。

数年に渡る冥王星の嵐を乗り越え、ひとり佇むとき、人は自らの手の中にある大切な宝物の存在に気づく。その宝物は自分自身への揺るぎない信頼、病を得たからこそわかった健康のありがたさ、大切な人とのかけがえのない結びつき、今まで気づかなかった自分の意外な才能、これからの人生を賭けて実現したいプロジェクトなど様々だ。人はそれらを大事に抱えながら嵐が起こる前には想像もしなかった未来へと踏み出していく。

~ 注釈 ~

アプライ
ふたつの天体がオーブ0度でアスペクトを形成しに接近していくこと。天体同士が近づくに連れアスペクトの影響が強まっていく傾向にある。

セパレート
ふたつの天体がオーブ0度でアスペクトを形成した後、離反していくこと。天体同士が離れていくことでアスペクトの影響が弱まっていく傾向にある。


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