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「AI ✕ 映像制作 ✕ 3DCG + 作曲」で考えるクリエイターの生存戦略

「2023年はAI元年」という言葉を聞きます。自分の周りのビジネス領域では、少なくとも2013年くらいからAIを活用した広告コンテンツについて商用化を研究している人たちがいたので「AI元年」の起源を辿るともっと昔からあったとは思います。

しかし、昨年末のStable Diffusion 2.0リリースをきっかけに「ジェネレーティブAI」分野でのリリースと生成事例がめざましく、自分もテックニュースやポッドキャストを中心に追いかけていますが、最近はこの分野で今後何が起きようとしていて、社会をどう変えていくか、うまく解釈しきれないほどテクノロジーが加速していると感じます。

まだ世の中に公開してないプロダクトや、技術的に検証フェーズにあるものを含めると、我々がキャッチアップしている情報のもっと先をテクノロジーが踏み込んでいるのは確実だと思います。

映像制作や作曲、3DCGでも活用しているAIツール

私の身の回りでも、AIを活用したツールやサービスが増えてきていて、うまく活用すると生産性向上につながります。特に、映像制作や音源制作では、AIツールが手作業を大幅に削減してくれています。厳密にどこまでAIを使っているかは別として、思いつく範囲であげてみました。

・iZotope社のozoneやNectorなどのAI機能を搭載した音源補正やマスタリングツールの活用
・PhotoShopの人物切り抜き機能
・Premire Proの音声同期機能
・Wisperを活用したポッドキャストの音声自動書き起こし
・内製開発した音声合成エンジン
・CanvaのAI画像生成機能
・ClipStudioの自動着色を活用した影の制作

最近、勉強しているBlenderやAfterEffectsでもChatGPTを活用した事例を見て感動しました。

エンジニアやクリエイター以外の職種でも、業務で活用するスプレッドシートにAIを搭載して、煩雑な業務を自動化したり補完するなどの事例を見ました。コンプライアンスやセキュリティの課題をクリアすれば実用化する気がしました。

AIが日常に浸透した社会でクリエイターのありかた

自分の仕事の分野は映像制作、3DCG、プログラミング、音楽制作です。ジェネレーティブAIの躍進を見て「果たして自分の職業は今後も存在するのだろうか」と考えてしまいます。

ノンクリエイターの方でも、Canvaを活用すれば、クリエイターに発注せずとも、整ったデザインを自分で作れるようになったように、今後はAIを活用してプロレベルに仕上げる一般人が増えていくと思いました。

・AIを活用して生産性とクオリティを担保する一般人の層
・AIを活用してハイクオリティのアウトプットを短時間で制作するプロクリエイターの層

の2種類が顕著に出てくるのではと思いました。

AdobeのCEOの方がこう言っているように「クリエイティブは特別なものではなくなる。」のではないでしょうか。

アドビは、人々がクリエイティビティを発揮して目標を達成するためのツール、スキル、プラットフォームを世に出すために継続的な投資を行い、クリエイティビティの民主化をもたらします。

アドビ CEOから企業の社会的責任に関するメッセージ

以前は、動画撮影 / 動画制作がビデオグラファーの仕事だったものが、TikTokのように一般人がクリエイターになっているのとおなじで延長線上にある気がします。

作曲自動ツールを使って感じた人間の役割

ヒントがDAWを活用した楽曲制作にあると思いました。例えば、DAWではソフトウェアを活用した作曲ツールが数年前から販売されていました。

ヒットソングのコード進行をランダムで生成して、それに見合ったメロディを自動で提案してくれたりします。国内でも「Amadeus Code」というベンチャー企業が、AI作曲サービスをリリースしています。

本来、コード理論やリズムには、人間の耳が受け入れたり解釈できるような規則性があるので、動画や3DCGの合成と比べると、比較的早く実現できていたのだとおもいます。

Scaler2やAmadeusCodeを購入して使ってみた結果、気づいたことは、できあがった楽曲やフレーズは、人間が感情で判断する以上、感覚的に気に入らない場合、修正する必要があることです。

生成された楽曲がMIDIであれば、コード進行やメロディを直接直す作業が発生します。生成された楽曲がオーディオファイルであれば、気に入らなかったとしてもそれを使うしか選択肢がありません。その際、Scaler2のランダムボタンやコード生成ボタンを再び押してゼロから作り直すのは非効率的です。

「音の響きをもうちょっとおしゃれにしたいな」と思ったら、自分でコードに対してテンションノートなど色をつける必要がありますし。「曲調がずっと明るくて単調だな」と思ったら、部分的にサブドミナントマイナーをとりいれ色をつけるなど。自分の好みにあわせて、自分で納得するための、音楽的な知識に基づいた作業が必要になってきます。

仮にジェネレーティブAIに「この曲をもっと良くして!」とトラックデータを送信すると、良い感じにアレンジとマスタリングをして返ってくる時代がくるかもしれません。だとすると、そのオペレーションしている人は人である必要がないので、もっと別の生産性のある仕事を探したほうが良い気がしますが。

今後は、AIがヒット曲を大量生産して流通させる世界がくると思います。それは、現代の広告クリエイティブが大量のバナー画像を生産し、効率的な広告を配信するアドテクノロジーの延長にあるとおもいます。人間から単純作業やクリエイティブな作業がなくなった時代に、人は何をして生活に彩りを感じ、どのように社会に貢献すべきか考えてしまいます。

ジェネレーティブAI時代で、どう生き残るか?

そのデータやクリエイティブを人間が作ったのかAIがつくったのかの判別は意味がない気がしました。大事なのはクリエイター本人が、扱えるかどうかだと思います。

例えば、UnityのAsssets Storeで、インテリアの3Dモデルを購入したとします。

Unityエディタ上で3Dモデルを置いて制作を進めていると、例えば壁にかけた額縁がある壁に影がついていることを発見します。この壁の影はエフェクトでかけた3Dの影ではなく、壁紙に影を焼き付けたものであることに気づきます。膨大な3Dモデル全てに影をつけるのは負荷が高いからの処置だと思います。

この場合、修正するにはUV展開して焼き付いている影を見えないようにするか、テクスチャを直接修正するかになります。となると、UnityやBlenderの操作というよりも「3Dモデルとはなにか?」を学ばないとなおせません。少なくとも、自分はUnityの知識だけではなおしかたが思いつかなくて、後日Blenderを学んで「UV展開」や「マテリアルとシェーダー」を理解したので、当時の修正方法がわかりました。

3DCGの基礎を学ぶことと、コード理論やメロディメイキングなど音楽の基礎を学ぶことは、同じ効用を感じます。AIやサービスが提供してくれる便利なテンプレートや素材をカスタマイズするには、基礎知識が必須になるという点です。

見出しにつけた「ジェネレーティブAI時代でのどう生き残るか」を考える際、テンプートで用意された世界の中でクリエイティブを表現するレイヤー、例えばマインクラフトなどでクリエイティブな世界観を発揮する層と

もう一方は、テンプレートの世界ではなく、ゼロからオリジナルで作っていくクリエイターのレイヤー。どちらに軸足を置くかが重要だと思いました。そして、そのどちらもAIを活用して制作していくのは間違いないと思います。

3Dモデリングにしても、ゼロから頂点シェーダーをC++で描画して3Dを描いて納品している人は稀有でしょうし、楽曲制作についてもコンピューターを使わずに完成まで作っている人は稀有かと思います。これまでもクリエイターがコンピューターを活用して作品を作っていったように、AIを活用して生産性を向上するのは変わらないと思います。

その反面、クリエイティブは民主化されていくので、基礎知識やアカデミックな理論を知っていないと、細かい修正やラスト1%のクオリティアップを求められた時に対応できないと思いました。「AIで作っているのでなおせません」では難しい。

生存戦略とはこの人間による「基礎知識」「ラスト1%」の仕上げではないかと思います。と考えると、なにを頑張ればよいのか見える感じがしました。それでも、数年先は生存できるかもですが、もっと先はわからないので、もうちょっと考えないといけないなーと思いました。



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