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空のペットボトルに出汁とか麺つゆを入れないで

小学生の頃、夏休みは毎日パラダイスだった。

プールが大好きだったので、
毎日、学校のプールへ行った。

朝起きてポンキッキーズを観て、
それからプールへ行く。

午前のプールが終われば家に帰り、
お昼ご飯を食べて、またプールへ行く。

そんな夏休みを過ごしていた。

プールへ行くときは、お茶も持参するのだが、
家に帰ってくるころには全て飲み干して
しまっている。

プールが終わると、キンキンに冷えた麦茶が欲しくて
たまらなかった。

早く家に帰って麦茶を飲みたいがため、
走って帰る。

頭の中は冷たい麦茶のことでいっぱいだ。

息を切らし、汗だくで家にたどり着いた。

真っ先に台所へ行き、冷蔵庫をあける。

ピッチャーに入ったお茶もあれば、
ペットボトルに入ったお茶もある。

すぐに飲みたかったので、ペットボトルの方を
取り出し、勢いよく飲んだ。

麦茶ではない・・・。

勢いあまって飲んでいたので、
2口、3口とその液体はすでに飲み込んで
しまっている。

なんだこれ・・・。

キンキンに冷えたお茶で潤うはずだったのに、
得体の知れない液体でのどが潤されてしまった。

ばあちゃんの仕業か・・・。

ばあちゃんはよく、梅酒や得体の知れない飲み物を
作っていた。

出汁かな?

今はそんなことはどうでもよい。

とにかくキンキンに冷えたお茶でのどを潤したかった
はずだ。

推理している場合ではない。

ピッチャーに入った液体はお茶に間違いないだろう。

すみやかにピッチャーを冷蔵庫から取り出し、
コップに注ぐ。

注いだ液体を、念のため恐る恐る口に含んで
味を確かめる。

間違いなくお茶だとわかり、
勢いよくグビグビと飲み干した。

ようやくお目当てのお茶でのどが潤された。

お昼ご飯を食べ、またプールへ行く。

午後の部も最後の最後までこれでもかというくらい
プールを堪能する。

そしてまた、キンキンに冷えた麦茶のことを
考えながら走って帰る。

まさか、同じことを繰り返すとは。

冷蔵庫にあるペットボトルを取り出す。

1口含んで気がついた。

吐き出すのをためらい、勢いで飲み込んでしまった。

今度は塩っけが強い、濃い液体だ。

すぐに麺つゆだと理解した。

どうしてまたペットボトルに入っているんだ。

腹立たしい気持ちを抑え、
ピッチャーに入ったお茶をコップに注ぎ
一気に飲に干す。

のどがカラッカラの状態なのに、また違う液体で
潤ってしまった。

湧き上がってきた怒りを抑えきれず、
ばあちゃんに問い詰めた。

「お茶と間違えるから、
ペットボトルに変なの入れないで!」

ばあちゃんが悲しそうな顔をしたので、
その程度のことで腹を立てていた自分が嫌になり、
自己嫌悪に陥る。

ばあちゃんにはいつも腹を立てていたので、
強く言うのはもうやめようと思っていた。

ラベルのないペットボトルに液体が入っていたら
要注意だ。

ばあちゃんの仕業かもしれない。


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