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『ゆっくり、いそげ』

好きだけど「嫌い」と言ってしまう。
苦しいのに「大丈夫」と強がる。

人間は矛盾するところがあります。
けれど、それは部分だけを捉えているだけなのかもしれません。全体としてして見てみると、それは矛盾ではなく、マーブルや斑点模様のように絶妙に両立だけなのかもしれません。

『ゆっくり、いそげ』
これは、クルミドコーヒーの店主である影山知明さんがクルミドコーヒーの実践と試行錯誤から育まれた経済と贈与に関する本。相反する言葉です。

僕が読むきっかけになったのは、『世界は贈与でできている』の中で、本書が引用されていたことでした。
与えるものではなく、受け取るものを出発点とする贈与論に、僕は清々しい風を感じて魅了されました。
9回に渡る読書会を実施して、自分の中の価値観が大きくズレました。

そして、最近ふと本屋で『ゆっくり、いそげ』を見つけて、気づけば手に取っていました。

物事を別の視点から捉え直す。
生徒と教師、サービスの提供者と消費者のように、相手の視点に立つことの重要性はしばしば語られます。なんとなく頭ではわかった気になって行動するのだけど、手応えがないまま根本的になにも変わらないことはあります。

それはきっと表面をなぞっているだけで、もっと根深い構造まで見つめていくと、新しい世界が見えてきます。

本書で語られていることは、具体的な事例をたくさん挙げつつも、それを抽象化して、「なぜそうなるのか?」「自分達の目指す未来に向けてはどうしていくか?」のプロセスであるように感じました。

「健全な負債感」というキーワードが出てくるけれど、これもまたなにかを与えることではなく、受け取ってしまったものを出発点とする思想であるように気がします。

とても素敵な本で、これもまた他者と一緒に読みたい本だと思いました。

読んでいただきありがとうございます。 励みになります。いただいたお金は本を読もうと思います。