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脊髄損傷の僕のトリセツ。

⚠️この記事は健常者の方に読まれる事を前提として書いています。この記事に書いてある事はあくまで僕個人の状態や捉え方についてであり、脊髄損傷の全ての方に一概に言えることではない事をご了承下さい。また専門知識がある訳では無い為、医学的な部分など記載内容に誤りや不正確な部分がある可能性があります。

自分が歩いていた頃の友人に再開した時や、
初めて会った人達に対して
「自分が車椅子になぜ乗ることになったのか」
「どんな障害があるのか」
「受傷当時、そして今どんな心境なのか」

といった事をどう分かりやすく説明したらいいのだろう?

そういえば、事故直後に
“新しい身体、新しい視点。ある日突然、事故で下半身不随になりました” という記事で、当時感じたことを書いて以来、退院した今まで、自分の状態について何も書いてなかったな。

そのように思ったことをキッカケとして自分の頭の整理も兼ねてこの記事を書いています。

言ってみれば、これは、
知り合いへの説明にも使えるただの"公開メモ"

その点をご了承いただいた上で読み進んでもらえればと思います。

「えー何これ!こんな事になるの?」という風に、
自分とは関係のない別世界のお話という感じかもしれませんが、これは、今これを読んでくれてる貴方> と何も変わらない普通の人生を歩んでいた僕> にある日突然降りかかった出来事の結果であり、貴方の身にも明日この様なことが起こらないとは限らない。
ということだけお伝えして筆を進めていきたいと思います!

長ったらしい文章で恐縮ですが、それでは本文をどうぞ!!!

目次
1. 僕の怪我について。何で車椅子に乗ってる?
2. どんな障害があるの?何が出来ないの?

  ①運動機能障害
    1-1. 痙性 (ケイセイ) について
    1-2. バランス(体幹)について
  ②感覚機能障害
    2-1. 怪我や火傷のリスク
    2-2. 褥瘡 (ジョクソウ) のリスク
  ③膀胱直腸障害
    3-1. 尿意/便意を感じるメカニズム
    3-2. 人は何故トイレを我慢できるのか
    3-3. どうやって漏らすの防いでるの?
3. どういった心境なの?(当時と今)


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1.  僕の怪我について。 何で車椅子に乗ってんの?

僕は今、車椅子に乗っています。
なぜなら大学4年の時に交通事故にあい、怪我をしたから。その怪我の名前は「脊髄損傷(せきずいぞんしょう)」

じゃあその「脊髄損傷」って何?って話ですが、ざっくり言うと「背骨をその中にある神経ごと折っちゃう」って事。

みんな首からお尻の辺りまで背骨があると思うんですが、その背骨の中には実はとっても【大きい神経】が通ってます。

その神経は、頭から身体中の筋肉に「動け!」みたいな命令を伝えてるの大事なコードなのですが、
その大事な太いコードが背骨を骨折した時に一緒に切れちゃった!って言うのが「脊髄損傷」なんですね。(「脊髄」っていう神経を「損傷」しちゃったから「脊髄損傷」)

んで、それが切れちゃうと何が起こるかって言うと、切れた場所から下に頭からの命令が届かなくなるので、【怪我した場所から下が動かなくなっちゃう】と言う訳です。(例えば首でやると手や腕にも麻痺が出ます。)

水道の蛇口(=頭)から出てる
ホース(=神経)が途中で潰れ/切れちゃって、
ホースの先にあるコップ(=足とかの筋肉)に、
水(=動けと言う命令)が届かなくなった
…とイメージしてもらえば分かりやすいかもしれません。

ちなみに「頭から筋肉への動けって命令」も届かないのですが、同時に「筋肉や皮膚から頭への "熱い/冷たい/痛い" って信号」も同様に届かなくなります。
つまり【動かない】+【感じない(感覚もない)】って訳です。

ちなみに余談ですが、
この麻痺の具合も人によって色々あって、
完全に神経が切れちゃった状態を「完全麻痺」
一部が切れたり潰れたりした状態を「不全麻痺」と言います。

僕のように完全麻痺だと、基本的に
「全く動かない、全く感覚がない」というのが基本ですが、不全麻痺だと人によって、
「指が動かせる〜ほぼ歩けないけど立てる〜歩ける」「かすかに感覚がある〜布越しに触られてる程度で分かる」など状態は様々です。

一般に言われてることとして、
その脊髄っていうメイン回線のような神経は
一度傷つくと再生・回復しないと言われています。

よく「それって治るの?」と聞かれますが、一般論では治りません。

ただ、iPS細胞のような再生医療が進むと
将来的に治る "可能性" があるというのも事実です。
(中途半端に痛みだけ感じるようになってロクに歩けない事になってしまったり、怪我直後の人しか適応できなかったりと様々な可能性や課題もありますが...)

加えて、リハビリなどで残存機能(残った動く場所)を鍛えることで、ADL(日常生活動作レベル)が向上し、出来ることは増えます。

事実、僕も最初は寝返りすら打てなかったのが
今では一人暮らしができ、階段の昇降などの例外を除きけば、ほぼ普通の人と変わらないレベルで行動ができるとこまでなりました。
(ザックリ言うと胸下の麻痺部分は良くなる見込みないから捨てて、上半身ムキムキになって腕の力でカバーしようね!って事です。)

さらに不全麻痺の人に関しては、個人差は大きいのものリハビリで麻痺部の一部さえも一定以上良くなる場合もあるとのことです。


まぁ、そういった訳で僕は今車椅子に乗っています!!!

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2.  どんな障害があるの? 何が出来ないの?


これは大きく分けて3つあります。
① 運動機能障害 
  〜動きません + バランスあまり取れません〜
② 感覚機能障害 
   〜感じません + 油断すると骨まで穴あきます〜
③ 膀胱直腸障害 
   〜トイレ、漏らすことがあります〜


それぞれについて詳しく説明させてください!


① 運動機能障害

これは、「1. 何で車椅子に乗ってるの」で説明した通りです。僕の場合は完全麻痺なので立つのは勿論、足の小指一本動かせません

そして麻痺して動かせない場所ですが、脚だけではありません。自分の場合、胸髄7番8番っていう胸の部分で神経が切れているので、剣状突起(乳首3cm下)あたりから下には脳の指令が届きません。

「上で説明した通り、動きません!はい、説明終わり!」だとあまりにも話がすぐ終わってしまい、味気ないので、ここからは、①運動機能障害 に関連して起こる+αの厄介者
1-1. 痙性(ケイセイ)
1-2. バランス(体幹の弱さ)
についてお話ししていきますね!

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1 - 1 . 痙性(ケイセイ)について

普段、皆さんの脳は 足などに対して
「動け!」って命令だけじゃなく、
「動くな!落ち着け!」っていう類の命令も実は
無意識に筋肉に出しているのですが、僕はそれも足に届かない。


それゆえ足が勝手に
貧乏ゆすりを始めたり...
・ピンと伸びて痙攣し始めたり...
・急にグニっと勝手に曲がろうとしたり...
・伸びたまま曲がらなかったり
    曲がったまま固まったり...
して車椅子から落ちそうになったり、
時にスムーズに動けなかったりする訳です。

これが痙性 (ケイセイ)と呼ばれる現象です。
まぁ厄介なものではありますが、扱いには慣れていて、痛みも何もなく足が勝手にバイブしたり踊ったりしてるだけです笑

なので僕が急に貧乏ゆすり始めたり、
バランスを崩したりしても驚かないでください
まぁ、脚のあくびみたいなもんです!

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1 - 2.  バランスについて

ちなみに胸下が動かないと言いましたが、
それは腹筋もほぼ効かないという事。
腹筋が効かないってどういうことかと言うと、
まず何をするにも腕の力が思ってる以上に相当必要という事。そして腹筋が効かない=すなわち「バランスが取れない」という事。

これは足腰や腹筋が麻痺して使えなくなって
僕自身初めて気づいたのですが、皆さん、自分で気付いてないだけで何をするにしても か・な・り 腹筋や足腰の力を日常的に使ってます、はい。

物を持ち上げるにしても、何かを押すにしても引くにしても、何かを投げるにしても、腕の力と同等に、いやそれ以上に、皆さん意識してないだけで普段から足腰や腹筋を使ってます。

それがいきなり怪我で
「はい、あなたは今日から腹筋と足腰の踏ん張り使えません」腕の力だけで頑張ってね〜となる訳だから最初はまぁ大変でした笑
例えていうなら、水の中で立って浮かびながら綱引きするようなモンです。そりゃあ何をするにもバランス悪いし腕の力が必要ですよね。

そして、腹筋が効かないという事は
体育の授業でやるような腹筋はもちろん出来ないし、上体が前に倒れると手を使わないと永遠に起き上がれません(笑)

リハビリでだいぶ体幹は鍛えられましたが、仕組みとしては、残った腕や肩、頭を使う事でバランスを何とか取ってるに過ぎず健常者のそれには大きく劣ります

体幹が0レベルの入院当初は、車椅子に乗るだけで、
まるでバランスボールを置いてその上に正座して座ってるようで、少し手を離したり進もうとするもんなら、すぐに前後左右に倒れてしまいそうな恐怖すら感じていたのが懐かしいです笑

あ、お陰様で日常生活に支障が出ないレベルまで 
今現在はかなり体幹も向上してるのでご心配なく!!!


2. 感覚機能障害

こちらも前述の通りにはなってしまうのですが、
皮膚などからの信号が脳へ届かないってのが「感覚機能障害」。

じゃあ、感覚がないと何が困るの?というとこですが、大きく分けて2つあります。

2-1. 怪我や火傷に気付かない
2-2. 褥瘡 (ジョクソウ)のリスク

それぞれ解説していきますね!

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2-1.  怪我や火傷に気付かない

皆さん、熱いヤカンなどに触ってしまったらどうしますか?足の指を角にぶつけたり切ったりしたらどうしますか?

恐らく「熱っ」て反射的に手を引っ込めたり、「痛っ」とぶつけた場所を目で確認するでしょう。

そして火傷してたり、怪我して血が出てれば、すぐに氷で冷やしたり、消毒や止血をするでしょう。

しかし、感覚が全くないということは
火傷や怪我したことにも気がつかない
ということ。

なので血だらけになって、
ふと手でそこを触った時にヌメっとして
「何これ!?血?メッチャ出てる!いつから!?」
なんて事になるのです。

気づくのが遅れる
= 消毒や止血などの初期手当動作が遅れる
=炎症や怪我が酷くなってからようやく気づく
=怪我の重症化


といった事態にもなりかねないのです。。
ま、注射は足にしてもらえば痛くないっていう良い事もあるけど笑


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2-2.  褥瘡(ジョクソウ)のリスク

あなたは「褥瘡(ジョクソウ)」って聞いたことがありますか?またの名を「床ずれ(トコズレ)」と言い、こう言うと分かる人が少し増えるかもしれません。(かく言う僕は怪我するまで全く知りませんでした...)

褥瘡とは...
皮膚が 長い時間圧迫され続けることで、その部分に血が通わなくなり そこの細胞が壊死すること。です。

ちなみに最初は
皮膚が赤くなる程度ですが、これが進行すると...
 ▷皮膚が死んで、穴が空き始める...
 ▷こぶし大の穴から肉が見えてくる...
 ▷骨が見えるまでえぐれてくる...
となるわけで、笑えない状況になってきます。もちろん入院コース。(グロ耐性のある方は、"褥瘡"って画像検索してみてください。)

もしまだ、どう言うこと?って言う方がいれば、
輪ゴムを 指の根元か手首に強めに巻きつけて少し放置してみてください。
手や指が、紫や黒ずんだ色になり冷たくなってくるかと思います。(あまり長い時間やると本当に壊死して戻らなくなり、最終的には指が腐って落ちるので注意)

こういった事が起きてしまうのが褥瘡。
じゃあ何で起きるのか?と言うところになるのですが、これは「感覚がない」というところに起因します。

実は皆さんが普段イスなどに座っている時、
数分〜数十分に1回はモゾモゾとお尻を動かしたり、
座り直したり、無意識のうちに必ずやっています。
夜寝ている時も同様、何度も無意識に寝返りを打っています。

ずっと同じ姿勢で座ったり寝たりしていると
違和感を、もっと言うと僅かな痛みを身体が勝手に感じ取り、普通の人は、意識する事なく反射的にモゾモゾと動いて、同じ部分に圧力がかからないよう除圧しているのです。

しかし僕のように感覚がないと、身体は違和感を感じ取れない。だから平気でずっと全く同じ姿勢で座っていられる。
寝てても違和感を感じられないし、仮に感じられたとしても、胸から下 身体の75%は動かないので寝返りなんて打てやしない

結果、かかとや、仙骨/尾てい骨といったお尻の骨などの骨が出っ張っている部分などに血が流れなくなり、皮膚が壊死して、骨まで穴が空き、褥瘡の完成となる訳です。

そしてこれを防ぐために、僕らは、
体圧分散に優れた車椅子クッションやベッドを使ったり...
腕の力でお尻を定期的に持ち上げて浮かしたり(プッシュアップ)...
して、一箇所に圧力がかかり続けないよう常日頃注意を払ってます

ちなみに僕は、友人の家やホテルの普通のベッドで寝るときは、"棒座という細長く小さい枕" や "タオルをグルグル巻きしたもの" をお尻の両サイドや足首に挟んで、圧力のかかりやすい尖った骨の部分を浮かせて寝たりしています。


3.  膀胱直腸障害


いきなりですが、
僕はおしっこを漏らす事があります。
僕はウンチを漏らす事があります。


ドン引きかもしれませんが、それは当たり前の反応だと思います。現に僕もこれが自分の話でなければきっと少し引いてます笑

ただこれはある程度コントロール出来ますし、
神経が切れてる事、筋肉が麻痺してる事で起きるものです。詳しくお話していきます。

皆さん、尿や便が溜まってきたらどうしますか?
( STEP1 ) トイレに行きたいと感じる
( STEP2 ) トイレに行くまで我慢する
この2つのステップを踏むかと思います。

ではなぜ人は、「尿意/便意を感じ」「我慢」できるのでしょうか。なぜ僕の場合、それが出来ないのでしょうか。そしてそれを防ぐために一体どうしているのでしょうか。

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3-1.  尿意/便意を感じるメカニズム ~なぜ僕は分からないのか~

①おしっこの場合、
普通の人は150~200mlほど溜まると、
神経を通して脳に「溜まってきたよ〜」と信号が送られ、トイレを意識し始めるようになります。
(ちなみにヤバイと駆け込むレベルだと350~600ml溜まってます)

②うんちの場合、
お腹をぐるっと1mちょっと一周している大腸の終わりの方、肛門間近の "直腸" という部分に便が降りてくると、そこにあるセンサーが反応し、
これまた神経経由で脳に「トイレ!」と信号を送ります
余談ですが実はおしりには、言わば内門と外門の2つの門があって、センサーが反応すると内門がなんと勝手に開きます

勘のいい皆さんはもうお分かりかもしれませんが、
そう!神経が僕の場合切れているので、残念な事に脳に「溜まってきたよ〜トイレ!」という信号が届かないのです。。

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3-2.  人はなぜトイレを我慢できるのか ~なぜ僕は漏らすのか~

①おしっこの場合、
膀胱、すなわちオシッコを溜めているダムの入り口にはその口を絞る筋肉があります。これが水門の役割をしてるのです。しかし、脊髄神経をやってるとそこの筋肉もコントロール出来ない
なので普段はゆるーく閉まっているものの、
・溜まってきて膀胱内の圧力が高まったり...
・膀胱周りの筋肉に痙性が起きたり...
・膀胱周りのお腹を強く押さえたり...
すると溜まってる分の一部や全部が漏れちゃったりするのです。

②うんちの場合、
便が直腸まで降りてくると、2つあるおしりのゲートのうち、内側のゲートが無意識に勝手に開くというのは上に書いたとおりです。
ただ外側のゲートは皆さん自分の意思でコントロール出来ます。なので、便が降りてきて内側のゲートが勝手に開いて「トイレ!」と感じても、外側のゲートを自分の意思で締めて、修羅場を免れる事が出来るのです。
しかし、僕のように筋肉が麻痺してると外側のゲートも締められない。よって「ウンチがコンニチハ」状態になってしまうのです。。
(硬い便だとそんなに出てこないのですが、下痢などの柔らかい便だと大変。遠慮なく開いたゲートから流れ出てきてしまいます泣)

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3-3. どうやって防いでるの? トイレの方法

では、僕がどうやってその荒ぶる膀胱や肛門を手なずけてるかです。
これはすなわちトイレの方法と被るところがあるのですが、その極意はズバリ「溜まる前に抜く」です!当たり前ですが、少し勝手が違うので解説していきます。

①おしっこの場合、
普通の人であれば、一杯になった膀胱が収縮しようとしてる時に、膀胱の口の筋肉を意識的に緩め、一気に放尿します。
しかし僕の場合、意識的に膀胱の口の筋肉(外尿道括約筋)を緩める事ができない。つまり自然に漏れるまでおしっこが出来ないわけです。
なので、カテーテルという30cmほどの細く柔らかいストローのようなものを先から膀胱の中まで入れてあげて数時間おきに排尿します。
(痛みも感じないから、痛そうだけど痛くないよ)

ちなみにサボると膀胱が変形したり、尿が漏れるか、腎臓に逆流して腎不全など大変な事になります。加えて、そんなもん突っ込むものだから、細菌が尿道から膀胱、内臓を経由して感染症になるリスクは高いです。

②うんちの場合、
これも普通の人であれば、トイレに座り、
外の門の筋肉(外肛門括約筋) を緩めて、踏ん張る事で排便します。
ただ僕の場合、筋肉が麻痺してる為、全くもって踏ん張れない。なので座薬(痔にはボラギノール♪みたいなヤツ)を入れて、手袋をして奥まで指を突っ込み、手で降りてきた便を掻き出します。。
ちなみに内臓の動きも弱まってる関係で、便の量も健常者より少ない為、週に2~3回しか排便しません

このように 背骨を折ると、大きく分けて、
① 運動機能障害 
② 感覚機能障害 
③ 膀胱直腸障害
の障害が発生し、それに付随して+αで、
・痙性 ・体幹機能の低下 
・褥瘡 ・尿路感染
などのリスクや不便も発生します。

慣れてしまえば、大したことはないですが油断は大敵ですね。


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3. どういった心境なの(過去と現在)

実は日本には現在、10万人以上の脊髄損傷者がいて、毎年5000人の人が新たに脊髄損傷になっていると言われています。

ちなみに原因TOP5は
①交通事故(バイクや車、助手席等)・・・43.7%  
②高所からの落下(鳶職や水への飛び込み等)・・・28.9%
③転倒(高齢者のスリップ等)・・・12.9%
④打撲/下敷き(落下物の下敷き等)・・・5.5%
⑤スポーツ(スノボやスケボ、ロードバイク等)・・・5.4%

政治家、谷垣禎一さん(自転車事故)、滝川クリステルの従兄弟、滝川英治さん(ドラマ撮影中の事故)や、仮面女子の猪狩ともかさん(街で倒れてきた看板の下敷き)等のニュースも記憶に新しいかと思います。

そしてその半分は僕(当時22歳) のように比較的若い年齢〜60歳までの社会で暮らし働いている労働人口層なのです。

ただ、これだけの脊髄損傷者がいるにも関わらず、
街で車椅子の人を見かけた記憶がある人はそう多くないと思います。

それには、
・症状が重くあまり動けない。
・周囲にバリアフリーがあまり整っていない。
・働く環境(社会的に活躍できる場所)が少ない。
など、様々な要因がありますが、その中の一つとして、
・"障害受容" が十分でなく、自らあまり外(社会)に出たがらない。
という理由も人によってはあるかもしれません。

ではこの "障害受容" とは一体何なのでしょうか?

人はある日突然障害を負うと、

①ショック期
▷何が起きたか分からない。理解できない。混乱。
ex. 病院で目が覚め、何が起こったか分からず(気付かず)混乱。
   他人事で逆にポジティブで深刻に悩んだりしない場合が多い。

②否認期
▷障害から目を背ける。状況を認めようとしない。
ex. 「こんなこと起こるはずがない」
    「嘘だ。悪い夢だ」
  「きっとすぐに治るだろう。治してみせる」
  「何で車椅子の練習?歩く為のリハビリをさせろ」等。

③混乱期
▷怒ったり、泣いたり、
   沈み込んだりと人に当たったりする。
ex. 医師からの宣告をこのタイミングでされることが多い。「一生歩けません」の宣告に荒れたり自暴自棄になる。

④努力期
▷障害に負けず生きようと頑張ろうと思い始める。
ex. 落ち込み、嘆きながらも頑張ろうとリハビリに励み始める。

⑤受容期
▷障害を前向きにポジティブに捉えられ、状況を受け入れられる。

という5つの過程を踏むと言われています。
そして受容してこそ、障害と共存し活き活きとした日々を送れると一般には言われています。


では僕の場合、当時どうだったのか。
【ショック期 / 否認期】▶︎【受容期】とだいぶ色々なステップをぶっ飛ばしてしまいました笑

自分のケースを具体的に言うと...


【ショック期 / 否認期】

事故現場から運ばれた病院で一週間ぶりに意識が戻り、事故に遭ったと聞かされただけで、何が起きたか分からない

途中で胸下の感覚が無いの事に気がつくが、
足が動かないという事には当時気がついていない
(事故で全身ぐったりしてるんだろう位な感覚)

医師から何も言われてないのに、そもそも足が動かないのも、治らないのも、気づいてないのに
野生のカンみたいなものなのか、数十年後を想像し、「車椅子の会社役員みたいなのも新しいし面白いかもな」と一生車椅子の自分を自然に想像した瞬間もあれば、転院する時に「元気になったら遊びに来ますね」と看護師さんに告げた自分の頭の中には、"歩いて挨拶に戻ってきてる自分" がイメージとしてあったり。

何が起きてるか分からない
治るだろうと軽く考えてる自分
一生このままだろうと考えてる自分

その3つが交じり合い、同時に存在していた
救急病院5日間、リハビリ病院9日間の2週間でした。
(転院してからは何となく、
これは治らないパターンのやつだなぁと薄々感じてました)

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【受容期】

希望を持つにしても正しい方向に希望を持つのが大事だし、その方が苦しまないだろうと考え、医療関係者でもある父親に「確認だけど治らないんでしょ?」と聞き、
YESの返事に「なるほどね、オッケー!」とすぐ受け入れ、自分の状態について詳しく説明してもらう。

ちなみに、最初の救急病院でもリハビリ病院でも、
医師から「もう歩けません、立てません」などといった内容の宣告や説明を受けたことはこの瞬間まで実は一度もありません

恐らく父親が医者であると言う状況を考慮して、
「こちらから宣告はしない」と言う主治医の判断だったのでしょう。

正直、それ以降も合併症や痛み、
将来起こりうることへの不安はありましたが
それ以外のことや自分の状況、障害に関しては、
意外と何も今までと変わらないよなぁ。オッケー」という感じでした。

こんな事を友人に話すと、
「こんな経験して平気なわけないし、無理する必要なんてないよ」と心配もされましたが、実際「心から受容してのオッケー」でした。
(そこで自分の感覚が一般のそれとはかけ離れていて、ちょっとヘンである事を改めて自覚したわけですが笑)

何故そのようにあっさりと受容できたのかに関しては話すと長くなるので細かいことは別に記事を書くかもしれません。

何はともあれ、僕の場合色々すっ飛ばしての "2週間スピード受容" だったわけですが、これはあくまでかなり例外的なパターンである事を留意して頂けると嬉しいです。

半年〜1年悩む人などザラですし、もっと長きにわたり自分と向き合い続けてる方もいらっしゃいます。

別に、「受容=偉い」でも、「需要が早い=すごい」でも何でもないですし、自分のペースで向き合い付き合っていく事、それが最も重要な事でしょう。


日常生活に十分な力と新しい身体の使い方、そして車椅子の取り扱い技能をつけた今は当時以上に「今までとほとんど何も変わらないし、何の問題もないな」という感じです。

出来ないことと言えば、
・階段や大きい段差を越えること、
・高いところの物を取ることぐらい
で後はほぼ今まで通り。

もちろん、
・車椅子で入れるトイレを探したり、
・風呂やトイレ、ベッドへの移動などで
    普通より時間がかかったり、
・大きい段差のある店では
    人の手を借りないといけなかったり、
・時間に余裕を持って行動しないと
    いけなかったり…
そういった不便は確かにありますが、
何かあれば大抵ありがたいことに多くの優しい人が助けてくれますし、僅かな出来ないことや不便な事よりも、出来る事や変わらない事、よく考えてみれば他の人よりも優れている事などが桁違いに多くあるから、気にするほどでもないかなというのが、退院して日常生活を送り始めた今の心境です。

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かなり長くなってしまいましたが、このような感じです!

今までお付き合いのあった皆さん、こんな感じですが案外何も変わってないので引き続きよろしくお願いします。

初めましての皆さん、こんな感じで少しばかり人と
違うところはありますが、どうぞこれからよろしくお願いします!


まる。

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