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晴れ姿 【旅する日本語-生一本】

昔から生一本な奴だとは思っていたが、ここまでとはなぁ。
目の前に聳え立つ巨大な造形物を感慨深く見つめる。

ねぶた

二人で青森県まで行った旅の帰りの道中、やけに静かだと思っていたら、
「俺、ねぶた作る人になるわ」と奴は突然言い出した。
一度決めたら納得するまでやらないと気が済まない性格だった。野球部にいたころは奴の素振りに暗くなるまでしょっちゅう付き合わされたものだ。

青森への転居を早々に決めて引っ越していった奴から先日久方振りにメールが届いた。そこには一台のねぶたが出来上がっていく様が喜びと苦悩をもって綴られており、そして最後の一文には今年のねぶた祭りの日程が記載されていた。「来てほしい」でも「来い」でもなく、「来るだろ?」と言いたいのだろう。

当然だ、お前の素振りにいつも最後まで付き合っていたのは誰だと思ってるんだ。相変わらずの仏頂面で俺を迎える奴の顔が脳裏に浮かび、俺は思わず頬を緩めた。

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