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【こんな映画でした】488.[愛を読むひと]

2018年 4月13日 (金曜) [愛を読むひと](2008年 THE READER 124分 アメリカ/ドイツ)

 スティーヴン・ダルドリー監督作品。二回目。これもナチスドイツの、それも収容所の女性看守の「犯罪」をめぐっての映画。前提となるのは15歳のマイケルと、20歳ほど年上のハンナとの出会い。そしてその後の「一夏」のこと。この部分が性的な描写が結構あるので、この方がメインの、つまり少年と大人の女性との愛情物語なのかと思ってしまう。

 マイケルは裁判で、ハンナが文盲であることに気が付いたにもかかわらず、それを指摘することもできず見送ってしまう。よって彼女は書けもしない文書を書いたとして一人で六人分の責を負い、一人だけ無期懲役に処されてしまう。

 ハンナ自身がそれを恥としての結果だったのか、はたまたユダヤ人に対する責任感からのものかは判然としない。ただこの文盲であることを裁判官たちに知らしめれば、彼女は一人重罰になることはなかったであろう。

 マイケルはその後もこの件に関して煩悶したはずだが、映画の描き方では今一つ分からない。それと何よりハンナの釈放が決まり、その当日を目前にして自殺させてしまうというストーリーは、私には納得できない。

 どうしてもこのような「重罪人」を無事に世間に出すということは許されないとする考え方が厳しくあったからかもしれない。ともかく裁判後のマイケルの行動は、たとえ本の録音テープを送っていたとしても、それだけで免罪されるかどうか。

 そしてラストはなぜにニューヨークまで行って、ハンナの残したお金を渡そうとするのか。たとえ遺言だとしても、何かしら弁明・釈明めいたものを感じる。最後の最後はハンナの墓へ、娘を連れて行き、過去の話をするところで終わるのだが、これもどうだろうか。

 要するにナチスドイツを批判する映画には、どうしてもこのような限界があるのかもしれない。それこそ裁判の模様が描かれているが、ハンナは裁判官に「あなたならどうしたか?」と問いかけている。つまり囚人たちを死なせてしまうかどうかの選別に当たらされた彼女たち看守が、その場でどのような行動が取れたかというわけである。もちろん裁判官は答えられなかった。

 とまれケイト・ウィンスレットが34歳から66歳までを演じていたが、大変な人生を背負った女性をよく演じている。あえて言えばメイキャップはすっかり66歳の老女であったが、声が若いような気はした。

 なお原題にこだわれば、「本を読む人」でもいいだろう。

2010年 2月18日 (木曜) [愛を読むひと](THE READER 2008年 124分 アメリカ・ドイツ)

 後半は授業に使えるか、と思いつつ観た。ナチに協力した女性看守たちが法廷で裁かれていく様からは、戦争や戦争犯罪について考えさせられる。

 20年あまりの服役の後、いよいよ釈放となったときに、なぜ自殺してしまったのか。なぜ彼女が文盲でその書類を書けるはずがなかったことを、裁判で明らかにしなかったのか。そんな疑問を持ちつつ見終わった。

 それにしても、いつまで経ってもナチについのて糾弾の映画は、後を絶たないようだ。難しい。

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