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【暗黒詩】最果ての城の姫

愛は身勝手で残酷なもの

清らかな美しい愛も真ならば
歪で顔を背けたくなるほど汚らわしい愛も真

淫らな夢の中で純愛を捧げ
甘美な夢の中で淫靡な喘ぎをもらす

最果ての城に棲まう姫に捧げる幻想詩
或いは『淫らな美姫と漆黒の騎士の暗黒詩ダークポエム

叶わぬ愛の狂詩曲ラプソディ

くらき森の奥深く
世界から忘れられた場所にその城は在る

棲まうは残酷な美姫と従者たる漆黒の騎士

近づくことも叶わず
知るすべもない城に至るには
ただ夢の中で思いを巡らせればよい

恐ろしき悪夢の中で崩れかけた城壁を見上げ
おぞましき淫夢の中で女の熱い肌に溺れ
狂おしき愛に張り裂ける心を城と姫に捧げよ!

煌々と青白く輝く月が天空にかかる夜
淫らな姫と殺戮の騎士がおまえを迎えに来る

純白の悪夢

純白の婚礼衣装に身を包み
わたしはあなたを待っている
あなたが還るのを待っている

何年も
何世紀も
久遠くおんの時を此処で
この忘れられた城で
この最果ての場所で待っている

わたしのすべてはあなたのもの
あなたを掻きいだくこの細い腕も
あなたに口づけるこの紅い唇も
あなたを虜にするこの熱い身体も
すべてはあなたのものなのに

あなたは何処にいるの?
わたしは此処ここにいるわ
あなたは何刻いつ還るの?
わたしは此刻にいるわ

待ち続けたわたしはすべてを忘れた
あなたの名前も
あなたの顔も
あなたの声も
自分の名前すら忘れ果てた

わたしに在るのはあなたに抱かれた記憶だけ

逞しい腕に組み敷かれ
熱く燃え上がる欲望に焼かれ
あかく爛れた身体を情熱の槍で貫かれた

でもあなたは還ってこない
わたしはもうこれ以上待てない
だからわたしはあなたに会いに行くことにした
この城を出てあなたの元へ迎えに行くことにした

たとえすべてを忘れようとも
あなたに会えばすべてわかる

たとえ数百万の敵が行く手を阻もうとも
漆黒のしもべと共に紅い雨を降らし
必ずや相まみえる

だから今は夢の中で…

あなたを想い
あなたに恋い焦がれ
あなたを抱く

あなたは夢の中で
わたしの腕に抱かれ
甘美な口づけに息を奪われ
覚めることのない淫靡な眠りに墜ちていく

あなたが何処にいても何刻にいても
わたしはあなたを見つけ出し
忘れられた城に連れ還る

あなたとわたしはトロリと溶けてひとつになり
紅く煮え滾る欲望の中で
果てることのない愛を交わす

"漆黒の真紅"或いは夢見る男の狂愛

いつから此処にこうして在るのか覚えていない

いつからこの女に傅き この腕を この暗黒の剣を以って守り続けているのか記憶にない

我に有るのはこの女への忠誠と全き隷従

いつ如何なる刻も付き従い
いつ如何なる処にも付き従う

影のように
風のように
死のように

女に近づくあらゆる者を切り裂き 辱め 跡形もなく消滅させる

我の名は?
覚えていない
我は誰ぞ?
記憶にない

在るのはこの女を抱いた記憶

その白き肌が恥じらいの朱に染まり
柔らかな熱い身体をこの腕にかき抱き
思いのたけを込めた愛の印を女の中に注いだ

しかしそれは何時のことか?

つい昨日のようでもあり
永劫の彼方の思い出のようでもあり
いつか見た夢の中の出来事のようでもある

もしかしたら 未だ夢を見ているのかもしれない

しかし我を焦がす情欲の炎は
この身を覆う漆黒の鎧に吸い取られ
決して表に現れることはない

我が胸で燃え盛る紅蓮の焔を知る者は誰もいない

我が在るのはこの女のため
この女を守るが我の定め

緋色の想いを漆黒で隠し
暗黒の剣を振るい敵を朱に染める

今日も
明日も
幾星霜の時を超え
未来永劫 殺戮の愛を捧げ
たとえ時が果てようとも
この女が在るかぎり
我も此処に在る

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