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1ヶ月筋トレを続けて筋電の変化を比べてみた

皆さん、筋トレしてますか?
いざ「筋トレを続けよう」と思ってもなかなか続かないのが現実ですよね。
私も度々決意を固めるのですが、いつも長続きせず、しばらくしてまた決意するというのを何度も繰り返しています。
何とかして継続できないかと考え、「筋トレの成果が目で見えれば続けられるのでは?」と思いました。
そこで今回は、筋トレを継続する前後での筋電を計測し、その変化を見てみました。
(文:筋トレ3日坊主のプロ 新人開発職K)

■実験方法

今回は1ヶ月(28日)間、腕立て伏せを継続して行い、その前後での大胸筋の表面筋電を計測してみました。

トレーニング
腕立て伏せは、10回×2セットを毎日朝と夜の2回行いました。たまにサボってしまうこともありましたが、朝か夜のどちらかはできていたと思います。
トレーニングだけでなく、プロテインも毎朝1杯飲むようにしました。

計測
胸筋に貼り付けた電極を筋電計に接続し、弊社製品「VitalRecorder2」を使用して波形の収録を行いました。サンプリングレートは1,000 Hzとしました。
継続前と継続後の計測で電極の位置が大きく変わらないよう、写真を撮影してできるだけ同じ位置に貼り付けました。

電極貼り付け位置

計測では次の2種類の動作を用いました。

①徒手筋力テスト
これは理学療法士の方などが行う筋力評価の検査法です。
被験者は画像のように腕を曲げ、補助者に被験者の上腕を外側に全力で引っ張ってもらい(赤色の矢印)、被験者は肘関節を90°に保ったまま内側に全力で引っ張りました(青色の矢印)。
この動作で人間が自発的に最大の力を発揮する「最大随意収縮(MVC)」を行うことができます。

徒手筋力テスト

②両手ダンベル支持
大胸筋を使用する等尺性運動の例として7 kgのダンベルを両手に持ち、画像の姿勢から肘を5 cm程度浮かせた状態を、維持できなくなるまで持続しました。

両手ダンベル支持

まず①の動作を左右それぞれで行い、15分程度休憩を挟んだあと②の動作を行いました。

■結果

波形の解析には弊社製品の「BIMUTAS-Video」を使用しました。BIMUTAS-VideoではRMS、積分、正規化、周波数解析などの波形解析のための基本機能のほか、動画との同期やイベントの登録などが可能です。

下図が今回の計測で得た原波形の一部です。これをBIMUTAS-Videoの機能で加工・解析しました。

原波形

両手ダンベル支持の持続可能時間
まずは分かり易い変化として、動作②のダンベル支持をどれだけ持続できたかを見てみました。
動作②での波形は次のようになりました。


動作②におけるトレーニング前後の筋電波形

上の青いグラフがトレーニング前、下の赤いグラフがトレーニング後の筋電生波形です。支えきれずにダンベルを降ろした時点に、BIMUTAS-Videoの機能でイベントを登録しています。
トレーニングの前後で90秒も持続時間が伸び、筋持久力が向上したことが分かります!

ただ、今回の測定では、大胸筋ではなく上腕三頭筋などの肘周りの筋肉が限界を迎えた感覚がありました。
そのためこの動作で、今回のメインターゲットである大胸筋について計測できたかというと疑問が残ります。
社内では難しいため今回は断念しましたが、器具等を用いればより大胸筋だけにフォーカスした計測ができるかもしれません。

周波数
続いて、筋電波形の周波数を見てみました。一般に筋電波形の周波数は、疲労につれ低周波数へシフトすることが知られています。
トレーニングで筋力が強化されれば、疲れにくくなり低周波数へのシフトも緩やかになるのでは?と考え解析してみました。

解析は生波形を高速フーリエ変換(FFT)にかけ平均周波数を求めました。
ただしダンベルを降ろしたときのノイズなどが入らないよう、どちらも300秒までのデータで解析を行いました。
FFTのポイント数は1024点で、サンプリングレートが1,000 Hzなので1.024秒を1エポックとしました。

FFT結果をCSV出力し、エクセルで近似直線を追加したものがこちらです。


実験前の予想に反して、トレーニング後の方が近似曲線の傾きが小さく、低周波数へのシフトが急であるという結果になりました。
しかし、点のばらつきも大きく、そもそも線形近似して良いものか?FFTの点数はどれくらいにすべきか?などの疑問も残ります。
今後、より良い解析方法を検討していきたいと思います。

筋電図積分値(IEMG)
最後に筋電図積分値に注目しました。

動作①での波形をRMS(区間幅50ミリ秒)で平滑化し、振幅が最大となった時点を求め、その前後250ミリ秒間(合計500ミリ秒間)の積分値を算出しました。
次に動作②の開始10秒後から500ミリ秒間の積分値を算出し、①で算出した積分値に対する割合(%)を求め「%IEMG」としました。10秒後から500ミリ秒間としたのは、状態が安定し、なおかつ疲れていない状態をとるためです。

この%IEMGを求めることで、最大に対して、ある動作のために何%の力を発揮しているのかを考えることができます。
これを筋トレ継続前後の左右それぞれで算出した結果がこちらです。

トレーニング前後での%IEMGの比較

表の通り、左右ともにトレーニング後の方が%IEMGが低下しました。
つまり、7 kgのダンベルを支えるために発揮しなければならない力の割合が小さくなったことが分かります。
これはトレーニングによって最大筋力が増加したため、同じ動作を行ったときの筋力の割合が低下したと考えられるでしょうか。
論文等を調べてみましたが、良い手掛かりを見つけることはできませんでした…。こちらも次回に向けて調査していきたいと思います。もし読者の皆様にお詳しい方がいらっしゃいましたら、弊社HPのお問い合わせよりご連絡いただけますと幸いです!

■まとめ

いかがだったでしょうか?
今回は1ヶ月間、腕立て伏せを継続し、その前後での筋電の変化を見てみました。
今回の計測で見られたこととして、

・ダンベルを支えられる時間は、トレーニング後の方が長くなった。
・筋電の低周波数へのシフトは、トレーニング後の方がわずかに急であった。
・最大随意収縮時に対する、特定の動作を行った際の筋電積分値の割合は、トレーニング後の方が小さかった。

が挙げられます。

1ヶ月と期間が短かったこともあり、あまり顕著な差が見られなかったというのが正直なところですね。
筋電の解析により成果が見える化されたことでモチベーションにもつながりました。次はもっと継続できるように頑張ります!
また協力者が現れれば、データ数も増やしていきたいですね!

■今回使用した製品

※ 製品・ブログ等に関するお問い合わせは、上記リンクページ下部の「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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