男とワインはオールドヴィンテージに限る~完全ノーカット版~
※この記事は天狼院メディアグランプリ 30th 第6戦でランキング1位になった「男とワインはオールドヴィンテージに限る」を再編集してお届けします。熱量が高すぎて文字数を大幅にオーバーし、3分の1を削ってエントリーした本記事。noteにはせっかくなので完全ノーカット、なんならちょいボリュームアップして公開します。
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平成から令和になり、早くも平成生まれの若手ミュージシャンたちが
「俺たちの時代はさ……」
とか溜息まじりに言いかねない予断を許さない状況で、ぜひとも注目してほしいバンドがある。
その名は「JUNGAPOP」。
日本のロックバンドである。
バンド名だけ聞くと知らない人もたくさんいると思う。
でもちょっとだけ耳を傾けてほしい。
ジャニーズもいいし、ビシビシの筋肉を隆起させながら踊るパフォーマー集団も確かに萌える。
人気イケメン俳優がバンド活動するのもいいと思う。
私も若いイケメンはどっちかというと好き寄りの大好物である。
みんながそこにときめきまくっているのは重々承知の上で。
ちょっと昭和生まれの主張もさせてほしい。
平成を盛り上げたのは誰だ? と。
散々平成を盛り上げてくれたのは誰なんですか? と。
そのロックバンドの平均年齢は56.8歳。
年の頃なら、企業の中では部長クラス。
正真正銘の昭和生まれのオジサンである。
ただ単に昭和生まれなオジサンなら周りになんぼでもおるし、私だって匂いとか湿度とかで姿を見なくても5メートル手前から嗅ぎ分けるくらいのセンサーを持ち合わせている。
昭和生まれのオジサンばっかりの会議に3時間くらい放り込まれて生命力が落ちた経験もある。
だから私はオジ専かというと決してそうでもない。
爽やかな若いイケメンもできれば常に視界に入れておきたいしね。
でもね、男をワインに例えるならやはり味わい深いのはオールドヴィンテージだと思う。
ワインは熟成が進むほど、カドか取れて丸くなり、味わいは繊細かつ複雑に。
そして余韻がグッと長くなる。
1997年に結成されたこのバンドはまさにオールドヴィンテージそのもので、渋さの中にまろやかさと、エロさとオトナのスパイシー感。
22年物のワインさながら、熟成のバランスが抜群なのだ。
とにかくメンバーそれぞれのスペックがすごい。
平成の音楽シーンを確実に支えてきた錚々たる顔ぶれ。
紅白やレコード大賞はもちろん、シングルの累計売上289.5枚のメガヒットや、日本武道館史上最多の15日連続ライブ決行という記録を持つメンバーもいる。
彼らがプロデュース、サポートしているアーティストを挙げていくともうそれだけでこの場の文字数足りなくなるほど。
アリーナクラス、ドームクラスの会場で何万人、何十万人熱狂させてきたハイスペックなメンバーで構成されている。
<JUNGAPOP>BIOGRAPHY
1995年、米米クラブのドラマー坂口良治とギタリスト得能律郎、作曲家の尾上一平の3人でJUNGAPOP(ジャンガポッポ)を結成。
<JUGAPOP><ARIA>2枚のマキシシングルを発表するも1999年得能の脱退により活動を休止。
2002年、ギタリスト是永巧一を迎え、また以前はサポートメンバーであった高橋Jr.知治とHOUND DOGの蓑輪単志を正式メンバーに加え活動を再開。ミニアルバム<Land of the RisingSun>を発表。
2006年にはローリングストーンズのトリビュートアルバム<RESPECT THE STONES>に「GIMME SHELTER」を収録。
2013年、活動16年目にして初のフルアルバム「HONKEY ZILL」を発表。
—JUNGAPOP OFFICIAL SITE
そんな彼らが今、驚くほど観客とステージの距離が近いライブハウスでライブ活動をしている。
これってほんとうに贅沢。
カウンター6席しかない小さなお店で三ツ星シェフが自ら料理を作ってくれるようなもんでしょ?
ハコが小さくなったって音は本物。
アリーナクラスの極上の音を間近で聴ける喜びよ。
そんな彼らが2019年10月、「DOUBLE PEACE」(※ダブルピースで「22」=22周年)とう題名の東名阪ツアーを決行した。
移動時の珍道中っぷりからリハーサル、本番前の舞台裏に打ち上げまで、インスタやYoutubeで発信しながら、ツアーが進んでいく。
いや、まずオジサンたち、マメだわ。
んでこれが、実に緩い。
あれ? ロックバンドってこんなんだっけ?
もっとさー、こうロックバンドってトゲトゲ、ツンツンしてて、
貧乏ゆすりも常にエイトビート刻んでると思ってた。
隙あらばギター投げつけたり、中指おっ立てたりするもんだと思ってた。
(↑普段ロック聴かない人の勝手なイメージ)
なのにそのイメージを根底から覆す激ゆるっぷり。
何回も同じ話するし↓↓↓
名古屋でひつまぶし食べてますっていう図なんてちょっとした慰安旅行感やし。
(いや、こんな私服がおしゃれなおじさんの慰安旅行ないけども)
何回も人の衣装と取り違えるし、俺のがない、どこ行った、あれ忘れた、のオンパレード。
さらにハッシュタグがどうの、クリーニングタグがどうの↓↓↓
3歩歩くと忘れるし、ちちくりマンボーだし。↓↓↓
なのにひとたびステージに上がるとガラッと様子が変わる。
急にオーラを出してくる。
ギャップ萌えを狙ってなのかなんなのか。
ライブ会場には「女子」とは言い難いがたしかに「乙女な心」を持つ女たちの熱気と、青春時代をロック少年として生きていたのであろう彼らと同世代と思われる男たちの熱気がうずまく。
私はその会場の最前列中央に座っていた。
友人が気合で獲得したプラチナシートである。
もう全然落ち着かない。
黒のオーダースーツに身を包んだ5人のオジサンがステージに上がるとふわりと良い香りがした。Around還暦とは思えぬ引き締まった身体にスーツが良く映える。
風を起こすようなダイナミックな動き。
シャツの首元で光る汗。
そして何より彼らが今まで多くの観客たちを魅了してきた極上の音。
それぞれのパーツが重なり合った時、色気が爆発してこちらの息が上がる。
大人のセクシーが過剰である。
そしてやっぱり、ステージと観客の距離が近い。
どれくらい近いかというと、サービス精神が行き過ぎて時にはこちらの耳に吐息がかかりそうな距離になることもある。心臓が飛び出そうになるのでちょっとやめてほしい。
いや、もっとやってほしい。
こんな至近距離でこの音の振動を直に感じられるのは贅沢の極み。
彼らが長く続けてきた音楽人生の中で、それぞれが自身のバンドからの脱退や解散、さらに大きな病気など、いろんなことを経験している。
自分たちが楽しい事だけやっていくわけにはいかない大人の事情もたくさん知っている。
それぞれが音楽業界のきらびやかな部分と不自由な部分を存分に経験したうえで、どの道を選ぶのか?
いろんな選択肢がある中で、きっとこのバンドは「自分たちのやりたいこと、やりたいペースを守ってゆっくりと歩んでいく」という選択をしたのだろう。
ライブの終盤で、一人のメンバーがライトを浴びながらこう言った。
「バンドは男の友情物語なんだよね」
この年齢だからこそ、直球で友情と言える潔さ。
昭和の香りと、人間ドラマと、大人の色気と、確かな技術。
ゆるいのかハードなのかわからない絶妙な空気感。
エロさを正々堂々プレゼンしてくる男気に、平成の時代にはない魅力を本能的に感じてしまう。
どうやらやっぱり私は進行性のオジ専症候群にかかっているようだ。
男とワインはオールドヴィンテージに限る。
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